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第一王子クリストファーの感じた違和感

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第一王子クリストファーは、小さな違和感を感じていた。何度かのやらかしによって漸く手に入れた違和感という制御装置。嘗て彼は女性に溺れ、進むべき方向を誤ったことがあった。気づけば潮の満ち引きのように、さぁっと周りから人がいなくなっていた。第二王子は、自ら進んで臣下に降ったが、クリストファーは未だ諦めた訳ではない。第三王子を手懐けて王位には就けなくとも周りから権力を手に入れることはできる筈だ。

幸いにも、弟である第三王子の婚約者ルイーズ・シェアードの弱点を見つけることができた。彼女は親友と共に愛するロザリアを虐めているという。

彼女は歴代の女達とは違って嘘をついているようには思えなかった。彼女を守るために、またルイーズ・シェアードの悪事を暴く為に、そばに居るのだが、一向にその機会は訪れない。

不審に思って、確かめてみると、「やっぱり第一王子様のおかげで彼女達は寄って来れないのですわ。ありがとうございます!」

などと、涙目で感謝されると、違和感を覚えながらも「なら、良かったよ。」と言わずにいられない。

「なぁ、シェアード公爵令嬢は、ロザリアをどんな風に詰るんだ?」

歴代のクリストファーを裏切った女達は揃いも揃って、こう言った。

『クリス様に、私が気にかけて貰っているのが気に食わないみたいです。』

経験上、もしロザリアがそう言ってきたら、多分この違和感は本物だ。きっと手痛い裏切りに遭い、今度こそ自分は再起不能に陥るだろう。

だが。

「わかりません。姉は私と反りが合わないみたいで昔から冷たいのです。シェアード公爵令嬢は、姉の親友なので、私を目の敵にしています。」

クリストファーは歓喜した。やっぱり彼女は今までの嘘つき女とは違うのだ。彼女を抱きしめて、「辛いことを言わせてごめんよ。私が君を守るからね。」そう囁けば、彼女の身体から力が抜けていく。

必死に自力で立とうとしていた彼女はしなだれかかってきた男に合わせて自分を偽るような女とは違うのだ。

あの違和感は、自分にとって、経験からくる恐怖が具現化したものだった。危なかった。あれを信じていたら、真に大切な人を手放していた。

王位継承権も子種もないクリストファーに舞い降りた女神、ロザリアをもう試すような真似はしてはならない。

抱きしめた腕に力を込めて、ロザリアの笑顔を守ろうと決意したのだった。

とはいえ、ルイーズ・シェアード公爵令嬢は、二人を反対する気はないようで。

「ロザリア嬢に苦言を呈したこともありましたが、今はお二人を応援しています。末永くお幸せに。」

なんて、面と向かって言われたりして、ロザリアと一緒に驚くことになる。


クリストファーの制御装置はポンコツだ。あの一度きりで本人が信じるのをやめてしまったから、という理由もあるが、違和感がそれ以上仕事を放棄してしまったのである。

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