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妹の邪魔をする姉
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正義感が強いだけの王子。人はそれを役立たずと呼ぶ。ハニートラップに引っかかり、信じて裏切られた女は数知れず。一方的に騙されて、一方的に人に冤罪をなすりつけ、慰謝料を払わせられる。騙されたことを、美談のように誇り、王族のプライドのカケラもない王子、人はそれを第一王子と呼ぶ。
ルイーズの婚約者である第三王子が何故次期国王なのかと言うと、そう言うことだ。第一王子と第二王子は、継承権を剥奪されている。
社交界にいる者なら常識として、野心のある者は特に彼らには近づかない。だから、当たり前のことだが、彼らには婚約者がいなければ、将来もない。
正直なところ、姉として妹の幸せを願うなら、彼女がどれだけ望んでも、絶対に許してはならない相手、なのだが、もう自分は妹の為を思うことはやめにすると決めた。妹だって、世の中そんなにうまくいかないことをいい加減知るべきだ。
かねてより、アランを側近にと願っていた第一王子は、あれだけ避けられていたアランと偶然出会えたことに驚き、喜んでいた。アランの側にはいつもの優秀な婚約者ではなく、見たこともない女性が側にいる。アランは冷たい対応をしているが、可憐な彼女はそのことにどうやら心を痛めている。彼女はシスティーナ嬢の妹だそうだ。姉に虐げられている、とはどこかで聞いた話だが、彼女は第一王子の好みのど真ん中であり、庇護欲を掻き立てる。長年の経験から、システィーナ嬢が彼女を虐げていると言うのは、彼女の被害妄想でシスティーナ嬢は悪くないのだと自分の勘が告げている。
それでも、久しぶりに可愛い女の子に会えてたくさん話を交わせたところから、第一王子は上機嫌になっていた。
アランに会いに来て、アランには冷たくされたロザリアだが、偶然現れた王子様に話を聞いてもらう。第一王子がいるなんて、聞いてない!
ロザリアは社交界の常識とやらを知らない。よって、あの忌々しいルイーズ・シェアード公爵令嬢の婚約者が第三王子なら、この第一王子の方と仲良くしていて損はないはずだと思い込んでしまった。
彼女の悪いところは、人の話を聞かないところだ。自分の目的の為なら人を利用する癖に肝心なところでは人を介さずに自分の心のままに動いてしまう。
一言、兄に聞けば良かったのだ。「第一王子ってどんな人?」と。兄はああ見えても社交界の噂話などは網羅しているから可愛い妹に聞かれたら、「会うのはやめるように」諭しただろう。
結果は、ルイーズの狙い通り。アランを落とそうと息巻いていたロザリアはターゲットを勝手に第一王子に変え、第一王子は彼女が話す内容が全て嘘だと知りつつ、妹にのめり込んでいった。
アランに纏わりついていた二人が纏まりそうな予感に、アランは胸を撫で下ろした。
「ティーナには悪いけれど、これが一番の落とし所だと思うよ。」
システィーナは複雑そうに、だけど自分でもそう思っていたからか、頷いて大きなため息を落とした。
「第一王子は、一応一代限りの公爵になれるから、末は公爵夫人。悪くない話だと思うわよ。きっと彼女、子供も好きじゃなさそうだから、子供がいなくても不都合ではないだろうし。」
ルイーズは、第一王子の王位継承権を剥奪された時に子ができなくなる処置をされたことをさらりと暴露した。
「ああ、姉としては、やはり彼とは会わせるのではなかったかしら。」
システィーナは途方に暮れるが、多分もう手遅れだ。それこそ、今彼女に第一王子と会うのはやめろと言おうものなら、彼女の邪魔をする姉になってしまう。
いや、それで良いのか。
「妹の邪魔をする、と言う意味ではそれは正解なのだわ。」
ルイーズの婚約者である第三王子が何故次期国王なのかと言うと、そう言うことだ。第一王子と第二王子は、継承権を剥奪されている。
社交界にいる者なら常識として、野心のある者は特に彼らには近づかない。だから、当たり前のことだが、彼らには婚約者がいなければ、将来もない。
正直なところ、姉として妹の幸せを願うなら、彼女がどれだけ望んでも、絶対に許してはならない相手、なのだが、もう自分は妹の為を思うことはやめにすると決めた。妹だって、世の中そんなにうまくいかないことをいい加減知るべきだ。
かねてより、アランを側近にと願っていた第一王子は、あれだけ避けられていたアランと偶然出会えたことに驚き、喜んでいた。アランの側にはいつもの優秀な婚約者ではなく、見たこともない女性が側にいる。アランは冷たい対応をしているが、可憐な彼女はそのことにどうやら心を痛めている。彼女はシスティーナ嬢の妹だそうだ。姉に虐げられている、とはどこかで聞いた話だが、彼女は第一王子の好みのど真ん中であり、庇護欲を掻き立てる。長年の経験から、システィーナ嬢が彼女を虐げていると言うのは、彼女の被害妄想でシスティーナ嬢は悪くないのだと自分の勘が告げている。
それでも、久しぶりに可愛い女の子に会えてたくさん話を交わせたところから、第一王子は上機嫌になっていた。
アランに会いに来て、アランには冷たくされたロザリアだが、偶然現れた王子様に話を聞いてもらう。第一王子がいるなんて、聞いてない!
ロザリアは社交界の常識とやらを知らない。よって、あの忌々しいルイーズ・シェアード公爵令嬢の婚約者が第三王子なら、この第一王子の方と仲良くしていて損はないはずだと思い込んでしまった。
彼女の悪いところは、人の話を聞かないところだ。自分の目的の為なら人を利用する癖に肝心なところでは人を介さずに自分の心のままに動いてしまう。
一言、兄に聞けば良かったのだ。「第一王子ってどんな人?」と。兄はああ見えても社交界の噂話などは網羅しているから可愛い妹に聞かれたら、「会うのはやめるように」諭しただろう。
結果は、ルイーズの狙い通り。アランを落とそうと息巻いていたロザリアはターゲットを勝手に第一王子に変え、第一王子は彼女が話す内容が全て嘘だと知りつつ、妹にのめり込んでいった。
アランに纏わりついていた二人が纏まりそうな予感に、アランは胸を撫で下ろした。
「ティーナには悪いけれど、これが一番の落とし所だと思うよ。」
システィーナは複雑そうに、だけど自分でもそう思っていたからか、頷いて大きなため息を落とした。
「第一王子は、一応一代限りの公爵になれるから、末は公爵夫人。悪くない話だと思うわよ。きっと彼女、子供も好きじゃなさそうだから、子供がいなくても不都合ではないだろうし。」
ルイーズは、第一王子の王位継承権を剥奪された時に子ができなくなる処置をされたことをさらりと暴露した。
「ああ、姉としては、やはり彼とは会わせるのではなかったかしら。」
システィーナは途方に暮れるが、多分もう手遅れだ。それこそ、今彼女に第一王子と会うのはやめろと言おうものなら、彼女の邪魔をする姉になってしまう。
いや、それで良いのか。
「妹の邪魔をする、と言う意味ではそれは正解なのだわ。」
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