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親友との茶会
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「ねぇ、アンジェ。私、最近少し変な噂を耳にしたの。」
公爵令嬢アンジェリカは、茶会の最中に、第一王女ヴィクトリアに声をかけられた。
「貴女にいじめられている男爵令嬢とやらがいるんですって?」
アンジェリカも、その噂は知っていたが、実害はない為、そのままにしていた。アンジェリカの名は有名で、彼女の名を用いての売名行為は良くあるものだからだ。
とはいえ、これまでは「アンジェリカ御用達」と銘打ったドレスやらお菓子やらを売り出す、と言った商業目的が普通だったのだけど。
「ええ、知ってますわ。ご本人とはお会いしておりませんが、商品ではなくて、ご自身、しかも不名誉な噂でしたので何が目的かはっきりしなくて。」
「私、彼女の目的わかりますわよ。」
アンジェリカの視線がヴィクトリアと交わる。ヴィクトリアは事の真相を教えてくれた。
「貴女の婚約者って対外的にはまだ決まってなかったわよね。」
「ええ、何度か話はあったけれど、結局どれもパッとしなくて。」
「ルーシェン侯爵家の、ジョシュア様って覚えてる?」
「……あの泣き虫乱暴男?私のレアに火傷をさせて、責めると泣いて有耶無耶にしようとしたあの卑怯な男。」
「あいつ、貴女の婚約者らしいわ。公爵家の権力で無理矢理決められたのですって?」
「どう言うこと?」
「ね?私も陛下も初耳よ。貴族同士の婚約なのに、そんな話初めて聞いたの。それでね、最近貴女にいじめられている、と主張しているのは、ジョシュア・ルーシェンの恋人なのよ。」
「互いに思い合っているのなら、すぐに婚約すれば良いじゃない。どうして私を巻き込むの?」
「可能性は二つあるわね。一つはジョシュアが本当に貴女が婚約者だと思い込んでいる場合。これはもしかしたらルーシェン侯爵夫妻にも事情を聞かなくてはならないかもしれないわ。大方、二人の婚約を認めたくないから、貴女の名前を出して、諦めさせようとしたのでしょう。
そして二つ目。ジョシュア自身が、実は恋人と結婚したくなくて、貴女が婚約者だと偽っている場合。彼女には貴女に勝てる要素なんてないから、それで諦めさせるつもりだったか。……どちらにしろ、迷惑な話よね。」
「そうね、どちらにしろ、彼らは私の敵になるのね。ならば、動きやすくなったわ。」
「いっそ、貴女も婚約してしまえば良いんじゃないかしら。どのみち、もうすぐ発表するつもりだったのでしょう?」
アンジェリカは、ヴィクトリアの言葉にお茶を吹き出しそうになった。
「貴女の婚約者が誰かわかれば、頭のおかしな連中も、勝手をしなくなるわよ。」
ヴィクトリアはそう言って、少し早いが婚約祝いだと、小さな箱を出した。
開ければ互いの瞳の色の揃いのピアスが入っている。
「可愛いでしょ?私もいつか婚約者が決まったら、やってみたいの。お揃いって特別感があるわよね。」
そのピアスの装飾はアンジェリカの好きなもので、長年の付き合いからヴィクトリアも多分好きなもの。
「その時は私がプレゼントするわ。貴女と御相手に似合う特別を。」
親友との茶会は、アンジェリカの心を温かくしてくれる。実際婚約を発表し、結婚してしまえば、ヴィクトリアとは頻繁に会えなくなってしまう為、婚約の時期を躊躇っていたのもある。
「でもそうは言っていられなくなったのね。」
残念ではあるが、いつまでも現状に甘んじてはいられない。アンジェリカは、親友の助言通りに、婚約発表の根回しに動いた。
公爵令嬢アンジェリカは、茶会の最中に、第一王女ヴィクトリアに声をかけられた。
「貴女にいじめられている男爵令嬢とやらがいるんですって?」
アンジェリカも、その噂は知っていたが、実害はない為、そのままにしていた。アンジェリカの名は有名で、彼女の名を用いての売名行為は良くあるものだからだ。
とはいえ、これまでは「アンジェリカ御用達」と銘打ったドレスやらお菓子やらを売り出す、と言った商業目的が普通だったのだけど。
「ええ、知ってますわ。ご本人とはお会いしておりませんが、商品ではなくて、ご自身、しかも不名誉な噂でしたので何が目的かはっきりしなくて。」
「私、彼女の目的わかりますわよ。」
アンジェリカの視線がヴィクトリアと交わる。ヴィクトリアは事の真相を教えてくれた。
「貴女の婚約者って対外的にはまだ決まってなかったわよね。」
「ええ、何度か話はあったけれど、結局どれもパッとしなくて。」
「ルーシェン侯爵家の、ジョシュア様って覚えてる?」
「……あの泣き虫乱暴男?私のレアに火傷をさせて、責めると泣いて有耶無耶にしようとしたあの卑怯な男。」
「あいつ、貴女の婚約者らしいわ。公爵家の権力で無理矢理決められたのですって?」
「どう言うこと?」
「ね?私も陛下も初耳よ。貴族同士の婚約なのに、そんな話初めて聞いたの。それでね、最近貴女にいじめられている、と主張しているのは、ジョシュア・ルーシェンの恋人なのよ。」
「互いに思い合っているのなら、すぐに婚約すれば良いじゃない。どうして私を巻き込むの?」
「可能性は二つあるわね。一つはジョシュアが本当に貴女が婚約者だと思い込んでいる場合。これはもしかしたらルーシェン侯爵夫妻にも事情を聞かなくてはならないかもしれないわ。大方、二人の婚約を認めたくないから、貴女の名前を出して、諦めさせようとしたのでしょう。
そして二つ目。ジョシュア自身が、実は恋人と結婚したくなくて、貴女が婚約者だと偽っている場合。彼女には貴女に勝てる要素なんてないから、それで諦めさせるつもりだったか。……どちらにしろ、迷惑な話よね。」
「そうね、どちらにしろ、彼らは私の敵になるのね。ならば、動きやすくなったわ。」
「いっそ、貴女も婚約してしまえば良いんじゃないかしら。どのみち、もうすぐ発表するつもりだったのでしょう?」
アンジェリカは、ヴィクトリアの言葉にお茶を吹き出しそうになった。
「貴女の婚約者が誰かわかれば、頭のおかしな連中も、勝手をしなくなるわよ。」
ヴィクトリアはそう言って、少し早いが婚約祝いだと、小さな箱を出した。
開ければ互いの瞳の色の揃いのピアスが入っている。
「可愛いでしょ?私もいつか婚約者が決まったら、やってみたいの。お揃いって特別感があるわよね。」
そのピアスの装飾はアンジェリカの好きなもので、長年の付き合いからヴィクトリアも多分好きなもの。
「その時は私がプレゼントするわ。貴女と御相手に似合う特別を。」
親友との茶会は、アンジェリカの心を温かくしてくれる。実際婚約を発表し、結婚してしまえば、ヴィクトリアとは頻繁に会えなくなってしまう為、婚約の時期を躊躇っていたのもある。
「でもそうは言っていられなくなったのね。」
残念ではあるが、いつまでも現状に甘んじてはいられない。アンジェリカは、親友の助言通りに、婚約発表の根回しに動いた。
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