僕はお人形を愛でる

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魔法使い

王女の死

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王女の死には、不審な点が多い。あれはたった6歳の子どもが、単独で、できることではない。

魔力量の多い第一王子だから、できると当時は思ってしまった。けれど、自分よりも大きな女の子を自分の背より高い塀からどうやって落とすのだろう。


死んだ王女は第二王女。彼女が今回の生贄に選ばれたのは、亡くなる少し前に、王子といざこざがあったからだが、もしかしてそれ以外に何かあるのだろうか。

今更疑うには訳がある。第二王女は確かに第一王子といざこざがあったが、他にもいざこざのある王女はいたからだ。

まずは、第一王女。彼女は第一王子と、何度も衝突を起こしている。どちらかと言えば、第一王女が王子に一方的に突っかかり、王子は無視を決め込んでいたのだが、王子は傍目にも興味すら無さそうで、第一王女の怒りを買っていた。

第三王女は、人の物を欲しがるタイプで、母親である側妃様によく似ていた。第一王子が、第三王女よりも見目麗しいことに不満を持っていたが、表だって何かしていることはなかった筈だ。

第四王女は、病弱で、あまり外にでないため、第一王子と接点があったかも定かではない。

第五王女と第六王女は、第一王子の妹でだが、おそらく今回も陛下が父と言うわけでもなさそうだ。それに、第一王子が取り上げられてから王弟との繋がりも薄れてしまったようで、妹達の父親のことは分からずじまいだ。

これは憶測でしかないので、私の首が飛ぶこともないが、第一王子を閉じ込め、その元となる事件なり事故の被害者となるのには条件があるのではないか。


私は様々な証言により、一つの考えに至った。何のために、それがわかれば苦労はしないのだが。

第一王子は必ず当時の王家の血を引いている一番魔力の多い者がなること。そして、その生贄には王の嫡子がなること。

こんな取り決めがあるのかはわからないが、きっと何代かの間に純粋な王家の血は、とっくの昔に、なくなってしまったのではないか。

この悪しき伝統を始めた悪趣味な人物は誰なのだろう。

よっぽど王家に恨みがあり、忍耐強い人間だ。王になるためには、第二以降の王子で、王の嫡子でなければいい、なんて。

そう考えると、今の王は、先王の息子ではないのかもしれない。

困るのは、それを、口にすることができない、ということ。

わかっていて、逃げたのだろうか。

第一王子は、どこまでわかっていて受け入れたのだろう。自分の人生を。

愚かな者を守るために、自分の人生を投げ打つなんて、尋常じゃない。

だから、この仕組みを作った人は、愚鈍側だと思う。
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