僕はお人形を愛でる

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魔法使い

弟は美しい ☆

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弟を美しいと思うなんて、自分は少し変なのかもしれない。

塔にずっと閉じ込められていたせいか、肌は白くて透き通るようだし、側妃様よりは王弟殿下によく似た少し女性らしい顔立ち。可愛いと言うよりは妖艶な印象を与える。

手を繋ぐのは、習慣になった。彼の肌に触れているだけで、気分が高揚するのを、抑えられない。

実の兄ではないが、彼の兄として生きたいと思っているのに、彼が欲しくて堪らなくなる。何てことを弟に対して考えているのだと戒める。

弟がお兄様、と呼びかけるたびに、その口を食べてしまいたくなる。

繋いだ手から、私の感情が暴れ出さないようにしなくては。

頭の中が弟でいっぱいだ。どうして、こうなった?

弟は既に私の気持ちに気づいている。気づいているからこそ、私を兄として慕うのだ。弟が望むなら兄として生きよう。弟が望むなら、と自分の心に蓋をする。自分の行為の責任を誰かに押し付けることは愚かなことだ。弟は愚かな兄をどうしたいだろうか。

自分の生い立ちに関して一つだけ、喜ぶべきことは、王の血を受け継いでいないことだった。私の理性はどこまで働いてくれるのだろう。弟と血の繋がりがあるならば、この衝動は抑えられたのでは、と思う気持ちと、だとしても止められたか疑問だと思う気持ちと、それならそもそも私はここにいない、と言う事実が、私の体の中をせめぎ合う。

「お兄様、触れてみればいいのです。」
可愛い弟の声で私の脳内に響くのは、私の願望か、呪いか。

気がつけば弟が目の前にいる。これは幻ではない。私の頬に弟の手が触れる。

「ね。お兄様、何でもないことです。」

また幻覚だ。弟の姿をして私を殺しに来たのか。恐る恐る目を開けると、もう弟はいなかった。

私達は安宿に泊まる。私の今の状態では、弟の身が危ないから部屋を分けたいが、安宿での安全性はないに等しく、美しい弟を一人にするわけにはいかない、と二人で泊まることになった。

若い兄弟の二人旅。お金は持って無さそうだが、人攫いには狙われそうだ。攫ってしまえば端金を持っていたところで、売ってしまえばいいのだから。

けれど、弟が部屋に軽く結界を張ってくれたおかげで、夜盗や、ならず者に襲われなくて済んだ。

室内では、私の理性が暴発する前に、睡魔によって弟の貞操は守られた。起きた時、弟の可愛い顔が間近にあって、心臓が飛び出そうにはなったけど。まだ人間を続けていける。

弟の名を呼ぶ。

「ルイ。」おでこにキスをする。起きないだろうと、思ったのだ。

「おはよう。バート兄さん。」
おでこにキスを返される。

クラクラする。何だか甘い匂いに包まれて、弟の潤んだ瞳と目が合った。

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