僕はお人形を愛でる

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魔法使い

身代わり ☆

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彼の身代わりとして置かれていた人形は、焼失の際に回収された。あれをいくら調べたところで、何もわからない筈だ。それは、暗に、私達の能力と素性を知る者が、あちら側にいないことを意味するが、たとえば王妃にたどり着いたとして、そこから私に向かってくることはあるだろうか。

既に死んだことになっている二人の少年。一人はただの平民で一人は元生贄の第一王子。

その死が偽りだと気づいたところで、できることがあるのだろうか。

私達はこれから先、人を殺めないとは言い切れない。そこから足がつく可能性はある。

第一王子を殺してきた奴らを罪に問えないと言うのに、私達には罪を償えと言うのか。奴らはいつまでも勝手だ。

弟はこれから行くところに既に興味が向いていた。今までいたところなど、もう忘れてしまったかのように。

「お兄様、見てきてもいいですか?」
地域のちょっとしたお祭りが催されているようだった。人だかりと出店で賑わう。

「いいよ。逸れないようにな。」

「手を繋ぎましょうか。」

一般的には兄が幼い弟の手を取るように見えているのかもしれないが、弟の手を取った瞬間、彼が私を暗くじめじめしたところから、抜け出させてくれたような、感覚に襲われる。

弟は、振り返る。
私に笑いかける。ずっと後ろばかり振り返る私を笑うように。

楽しいことはこれからの方がたくさんある。
まだまだ人生は、先が長いのだから。

人生の辛く悲しい部分はまだあるかもしれない。でも、前に進むしかできることはない。

「お兄様、あれが見たいです。」

小さなアクセサリー屋さん。

「僕、これが欲しい。お兄様と一緒につけたいです。」

恋人同士のようなデザインの対のアクセサリーを弟は選ぶ。お互いの瞳の色になっているから、やはり恋人用のアクセサリーなんだろう。

でも、それを手に入れて、身につけるだけで、二人は一蓮托生で、離れることは許せない、そんな気になった。

私が弟を守り、弟は私を守る。

私達はお互いを縛り、お互いを自由にする存在として、強く互いを意識した。

弟は、私と違い、恐れるものなどない。私は怖い物だらけなのに。弟がただの経験不足による怖いもの知らずなら良かった。それを甘いなと、余裕ぶって見ることができるから。

けれど、弟は何もかも、見た後なので、見た後なのに、怖いものがないと言う事実に一番震えた。

怖い物があれば、誰かを身代わりにすればいいのですよ。

彼の心の声が聞こえた気がする。それは、彼の声ではなく、自分の心の声かもしれない。










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