11 / 11
お飾りの妻なんて嫌 ローズ視点
しおりを挟む
陛下の後妻にはなれなかったけれど、一番気に入っていた男性の妻になれた。彼はきっと私と結婚する為に伯爵位にまで上り詰めたのだわ、と嬉しくて仕方がない。
お父様は何故かそれでも迷っていらしたけれど、私が愛する人の元に嫁ぎたいと言えば、快く送り出して下さった。お母様は私が陛下の側室になれば良いと、最後まで仰っていたけど。
側室にさえなれば、正妃なんてすぐ蹴落としてあげる、と言って。でも、私は歳の離れた陛下よりも彼が好き。
問題は、元愛妾様だけど、アレは監視する目的でしょうし、関係ないと思っていたの。なのに、陛下と別れてすぐに彼を籠絡するなんて、本当にはしたない人だわ。
結婚式は盛大にしたかったけれど、旦那様のお仕事の都合上、身内だけのひっそりとした式になって、それでも初夜を私は健気に待っていた。なのに、なのに、彼は明日の仕事に差し支えるからと、部屋にすら来なかった。それが本当なら私はまだ理解できたけれど、違ったの。
本当は、あの女のところへ行っていた。王宮内とは違って狭い伯爵家内では、彼女の嬌声は良く聞こえるのよ。もしかしたら私に聞かせる為にわざと大きな声を出しているのかもしれないけれど。
本当に嫌な女。追い出したくても王家からの命令で彼女を外には出せないし、殺すなんて以ての外。
彼女には王家の影が監視についていて、彼女を害したら、子爵家を含む伯爵家までもが罪に問われてしまう。
夜会でもあれば、旦那様にエスコートしてもらえるかと思えば、やはり仕事の都合上、私は子爵家の誰かにエスコートして貰わなくてはならないらしい。
私のできることと言えば、あの女に嫌味を言って、連れて来た侍女の溜飲を下げることぐらい。彼女達は私と同じ、伯爵家での生活を夢見て、ついて来たのだけれど、想像と違う生活に、士気が下がって来ていた。
私は全く相手にされていないのに、あの女は彼の子を授かった。悔しい悔しい悔しい。でも、子ができたなら毎日の相手は控える筈で、そうなれば今度は私の出番ではない?
私は待っていても旦那様が来ないのだから自分から行かなくてはいけないと、頑張って自分を奮い立たせる。
夫の部屋に忍び込むと、旦那様の元へ行く。彼は大きな身体で覆い被さって来たから、恥ずかしいし、怖いけれど、漸く初夜をやり直ししたのよ。なのに、恐るべきことが起きたの。旦那様の寝室にいたのは、旦那様ではなかった。旦那様は夜は必ずあの女の部屋で眠るんですって。彼は伯爵になったことで、夜に襲われることを懸念して、彼の護衛をそこに寝かせているらしい。
私は旦那様がいながら、彼の護衛を襲って関係を持ったことになる。
護衛の男は旦那様から、私を慰める指示まで受けていたみたい。
しかも旦那様に夜這いに来たのは私が初めてではないみたい。何と私が連れて来た侍女達も軒並み、チャレンジしては、護衛に美味しく頂かれていたの。
まさかだったわ。
でも、これはあくまでも戦略よ。だって私が誰かのものになれば、旦那様は私を惜しいと思うかもしれないでしょ?陛下だってそうやって私を手に入れようとしたのだし?じゃなければ、あんな家柄しか取り柄がない女を選んだりしないわ。
お母様はよく仰っていたわ。男性は素直に愛を囁くことができない生き物だって。回りくどいやり方で傷をつけられても、その人は自分のことを愛するからそんな態度を取ってしまうのですって。
でもお母様にはお父様がいらっしゃるじゃない?私にはもう誰もいない。お飾りの妻ってこんなに心細いのね。
こうなったら、騎士と子供でも作って駆け落ちしてやろうかしら。それから私への愛に気づいて、後悔してももう遅いのよ。
終わり
読んでいただきありがとうございました。 mios
お父様は何故かそれでも迷っていらしたけれど、私が愛する人の元に嫁ぎたいと言えば、快く送り出して下さった。お母様は私が陛下の側室になれば良いと、最後まで仰っていたけど。
側室にさえなれば、正妃なんてすぐ蹴落としてあげる、と言って。でも、私は歳の離れた陛下よりも彼が好き。
問題は、元愛妾様だけど、アレは監視する目的でしょうし、関係ないと思っていたの。なのに、陛下と別れてすぐに彼を籠絡するなんて、本当にはしたない人だわ。
結婚式は盛大にしたかったけれど、旦那様のお仕事の都合上、身内だけのひっそりとした式になって、それでも初夜を私は健気に待っていた。なのに、なのに、彼は明日の仕事に差し支えるからと、部屋にすら来なかった。それが本当なら私はまだ理解できたけれど、違ったの。
本当は、あの女のところへ行っていた。王宮内とは違って狭い伯爵家内では、彼女の嬌声は良く聞こえるのよ。もしかしたら私に聞かせる為にわざと大きな声を出しているのかもしれないけれど。
本当に嫌な女。追い出したくても王家からの命令で彼女を外には出せないし、殺すなんて以ての外。
彼女には王家の影が監視についていて、彼女を害したら、子爵家を含む伯爵家までもが罪に問われてしまう。
夜会でもあれば、旦那様にエスコートしてもらえるかと思えば、やはり仕事の都合上、私は子爵家の誰かにエスコートして貰わなくてはならないらしい。
私のできることと言えば、あの女に嫌味を言って、連れて来た侍女の溜飲を下げることぐらい。彼女達は私と同じ、伯爵家での生活を夢見て、ついて来たのだけれど、想像と違う生活に、士気が下がって来ていた。
私は全く相手にされていないのに、あの女は彼の子を授かった。悔しい悔しい悔しい。でも、子ができたなら毎日の相手は控える筈で、そうなれば今度は私の出番ではない?
私は待っていても旦那様が来ないのだから自分から行かなくてはいけないと、頑張って自分を奮い立たせる。
夫の部屋に忍び込むと、旦那様の元へ行く。彼は大きな身体で覆い被さって来たから、恥ずかしいし、怖いけれど、漸く初夜をやり直ししたのよ。なのに、恐るべきことが起きたの。旦那様の寝室にいたのは、旦那様ではなかった。旦那様は夜は必ずあの女の部屋で眠るんですって。彼は伯爵になったことで、夜に襲われることを懸念して、彼の護衛をそこに寝かせているらしい。
私は旦那様がいながら、彼の護衛を襲って関係を持ったことになる。
護衛の男は旦那様から、私を慰める指示まで受けていたみたい。
しかも旦那様に夜這いに来たのは私が初めてではないみたい。何と私が連れて来た侍女達も軒並み、チャレンジしては、護衛に美味しく頂かれていたの。
まさかだったわ。
でも、これはあくまでも戦略よ。だって私が誰かのものになれば、旦那様は私を惜しいと思うかもしれないでしょ?陛下だってそうやって私を手に入れようとしたのだし?じゃなければ、あんな家柄しか取り柄がない女を選んだりしないわ。
お母様はよく仰っていたわ。男性は素直に愛を囁くことができない生き物だって。回りくどいやり方で傷をつけられても、その人は自分のことを愛するからそんな態度を取ってしまうのですって。
でもお母様にはお父様がいらっしゃるじゃない?私にはもう誰もいない。お飾りの妻ってこんなに心細いのね。
こうなったら、騎士と子供でも作って駆け落ちしてやろうかしら。それから私への愛に気づいて、後悔してももう遅いのよ。
終わり
読んでいただきありがとうございました。 mios
906
お気に入りに追加
868
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。
五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」
婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。
愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー?
それって最高じゃないですか。
ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。
この作品は
「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。
どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。
なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。

そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。
木山楽斗
恋愛
アルムナ・メルスードは、レバデイン王国に暮らす公爵令嬢である。
彼女は、王国の第三王子であるスルーガと婚約していた。しかし、彼は自身に仕えているメイドに思いを寄せていた。
スルーガは、ことあるごとにメイドと比較して、アルムナを罵倒してくる。そんな日々に耐えられなくなったアルムナは、彼と婚約破棄することにした。
婚約破棄したアルムナは、義弟達の誰かと婚約することになった。新しい婚約者が見つからなかったため、身内と結ばれることになったのである。
父親の計らいで、選択権はアルムナに与えられた。こうして、アルムナは弟の内誰と婚約するか、悩むことになるのだった。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる