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きっとそれも

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ミアは伯爵夫人になった。夫人とは言っても名ばかりの、囲われているだけのペットのようなもの。

伯爵家に使用人は少なかった。ミアの立場が特殊だった為に、安易に使用人を雇う訳にも行かず、若い男性がミアに近づくのを夫が嫌がるので、必然的に若い女性か、年寄りしか見当たらない。

囲われているだけの生活はとても退屈で話し相手もいない。ふと、愛妾時代に、ミアに付いていた若い侍女達がどうなったのか気になった。

前の侍女はともかく、まだ若いあの子達には悪いことをしたと思う。もう会えないかもしれないけれど、会えるのであれば、今までありがとう、と感謝だけは述べたい、と思っていた。


だが、その彼女達の行方は意外なところでわかるようになる。

その日、夫はとても沈んだ様子で帰って来た。彼は、ミアを引き取るにあたり、彼女への罰を陛下に確かめに行って来たのだが。

「どうしたの?やっぱり極刑だとか言われた?」

「いや、……妻を娶れと……正式な妻を娶って、ではないと、君を処す、と。」

ミアはその話を聞いて、納得してしまった。陛下に認められた男爵家の男が子爵をすっ飛ばして伯爵にまで上り詰めた。見た目は悪くないし、騎士としてもまだまだ働ける。そうなると、女を一人囲っているとしても、政略結婚の相手としては優良だ。

「私はここに置いてもらえるの?出て行った方が良い?」

「君を監視することは約束されているから大丈夫。それは政略結婚の相手も知っている。」

そうだ。彼は伯爵家でミアを監視するから、と牢から出してくれたのだ。逆に、彼と結婚相手の仲を見せ付けられて、逃げたいと願っても、ミアには自由はない。

「それで、相手は?どんな人?私のことを嫌わないかしら。」

「……それは多分大丈夫。ローズという侍女を覚えている?彼女、子爵家のご令嬢で実は昔から俺のことは知っていたらしいんだ。」

ミアは、ローズとマリーという侍女の自己紹介時に、確かそんなことを話していた様な気がする、と薄らと思い出していた。

マリーは男爵令嬢、ローズは子爵令嬢。ミアは男爵令嬢なのに、ローズは何も言わず、ちゃんと侍女としての役目を果たしてくれていた。

でも……ミアはほんの少し、嫌な予感がした。

彼女達に会いたいと思っていた筈なのに、ほんの少しだけ、全身に悪寒が走ったのである。

そして、やはり嫌な予感は的中した。


政略結婚であてがわれただけの妻ローズは明らかに彼に惚れ込んでいた。彼女が侍女だった時にはあんなに尽くしてくれたのに、今はミアに嫌味しか言ってこない。

「身体しか誇れることがないなんて、恥ずかしくありませんの?」

子爵家から何人かの侍女を連れて来た彼女は日中彼が仕事に行っている間、侍女を連れてミアに嫌がらせを行うことが楽しくて仕方ないみたいだった。

「そういう貴女は、女としての魅力がなくて残念ね。私が彼を慰めるから、いつまで経っても女になれなくて、可哀想だわ。」

彼女はいつもムキになって怒って、夫に泣きつくが、彼は私にしか興味がないのだから、無駄だっての。

結婚はしても、彼は彼女を抱くことはない。彼はいつもミアを、ミアの身体を愛している。ミアは日中、嫌味を言ってくる女を悪役として、夫に愛を伝える。

「ミア、俺はミアしか愛さない。結婚してもそれは変わらないよ。」

彼の愛し方は、陛下とよく似ていた。そしてようやく気づいた。彼の首の後ろに並んだ特徴的な二つの黒子に。最初からずっとミアを愛していたのはこの男。ああ、そういうこと。

「私も、貴方しかいらない。愛してるわ。」

ほどなくして、ミアは子を授かった。夫人は反対していたが、子は庶子として伯爵家に引き取られることになった。意外なことにそれを認めたのは王妃様だったらしい。

何故あの女が、とミアは口に出しそうになったが、一旦見逃されたとはいえ、流石に命は惜しい、と思い直した。


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