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愛妾業の終わり

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いくらお腹が膨らんでいる、とはいえ、騎士の体が王妃と思わせるのは無理があった。まんまと引っかかり捕縛されたミアを見て、王妃が自身の体型を悲観するほどには。

結局、ミアは怒りに目が眩み、冷静な判断ができなくなっていただけだ。


ミアはそれでも、牢の中で騒いでいた。王妃になりすましていたのが、かつての自分の恋人だとわかっていて、言葉にしたのは、王妃に対する呪詛だけ。

「手紙、読んでなかったんだよな。」
「手紙?何の話よ。私が、陛下の恋人になるなら、昔の男のものなんて全て捨てるに決まってるじゃない?」
「そうか。」
「そうよ。」
「なら、これは?」
元恋人の手にあったのは、王妃を襲撃する為の駒として頼ろうと彼に書いた手紙。

「全てを知ったから会いたい、と言うのはそのことではなかったんだな。」

ミアは確かに手紙にそう書いた。あれがお飾りの女の癖に陛下の愛まで奪おうとする浅ましい女。どうせあの女が家の力を使って、陛下を脅して言うことを聞かせたんだろう。だから、ミアは陛下の為に、あの女を始末しようとした。

一瞬、元恋人のこの男が別人の様に感じる。ミアはそういえば陛下も度々別人に見える様なそんな感覚に陥ることがあったと思い出した。


「君の罪は明白だ。王妃と次期王位継承者の暗殺。これは極刑に値する。」
ミアは不服ではあったが、罪に対する罰としてはそうだろうな、と納得はしていた。

ならば、自分に堕胎薬を盛ったあの女も極刑にすべきだとは思うが、残念ながら命の重さが違う。あのままミアが子を産んだとしても、自分の得にもならない子を持て余すことになるだろうな、とわかってもいた。そうなれば可哀想なのは子供の方である。

愛妾でなく、側妃なら、もしかしたらもっと上手くいったのかもしれない。それでも王妃よりも先の出産となれば、同じ目に遭っていたかもしれない。たられば、を話しても意味はない。もう終わったことだ。

「私は死ぬの?」
今、この男に泣いて縋ればどうにかなったり、しないだろうか。

元恋人は何故か自分の方が泣きそうな顔で、優しい声で「どちらか選んで。」と言った。

「このまま、陛下の愛妾として極刑に処されるか、俺の妻として伯爵家で囲われるか。」

「そんなの。一個しか選択肢はないじゃない。でも、伯爵って何?貴方、男爵家だったじゃない。」

「それも、手紙に書いてたんだけど。王家に協力したことで、爵位を褒美として貰ったんだ。君を手に入れる為に。」

ミアは愛妾業を廃業にして、伯爵夫人として生きることになった。但し、淑女教育などしておらず、罪が罪なだけに、今後社交界へ出ることは叶わず、囲われるだけになるらしい。

結局、愛妾業が身に合っていたってことね、とミアは自嘲した。

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