上 下
45 / 49

頑張った

しおりを挟む
サイオンは、ローズしか見えていない。ローズの周りだけ、明るく光が当たっていて、見てしまう。

ローズはとても素直に感情を現し、表現する。貴族の上辺しか見せない化かし合いを見ている身からすると、不安になるが、その分新鮮に写る。ローズは自分と結婚すると、平民になってしまうが、その方が幸せみたいだ。

貴族社会は、疲れると言っていたから。
平民になっても、マリア様やライラ様からお誘いはあるだろうし、私が近衛騎士から外れるわけではないし、何ら変わりはない。身分だけ、変わる。

本人が気にしていないことを、思い悩むのが、馬鹿みたいに、ローズは楽しんでくれてるようで、嬉しくなる。

ローズをお店に連れて行ったあとは、自分が一度行って見たかったお店に連れていく。カフェなのだが、料理もあるお店で、来い来いとうるさかったので、一緒にローズを連れて行こうと思っていた。
そのカフェは、エドワード王子とスタン王子の妹君であるリサ王女がプロデュースした庶民向けのカフェだ。

シェフの方が、特殊な能力があり、一から王女が育てた、と胸を張っていたので、一度行って見たかった。予約した時の王女の顔を思い出し、笑いがこみ上げる。

ローズは不思議そうに、でも輝く笑顔で微笑みを返してくれて、それだけで胸がいっぱいになる。

お店にいくと、シェフのルーがいて、王女が公務すっとばして、こちらに来たがったのを止めたと言う話を聞いて、ぞっとする。
誰とくるのか異常に気にしてたからなぁ。

ルーの作るご飯は、とても美味しい。じんわりと、滋養に良い。悪いところを直してくれるような、胸がいっぱいになるような。

ローズも一口食べて、私が言いたいことがわかったみたいで、終始美味しそうに、楽しそうに食べていた。

唐突に、ああ、ずっとこうしていたい、と思った。

ご飯を食べ終えて、またエスコートして歩く。「疲れてないですか?あちらで休みますか?」
空いているベンチで休むことにする。

ローズは夜会の着飾った姿は勿論美しいが、今の変装した平民の格好もとても愛らしい。周りには余り人はいない。ローズの可愛らしさを独り占めできて、嬉しい。

「あの…お願いがあるのですが。」
「はい?」ローズの人を疑うことを知らない性格はこの先、不安はある。

利用しておいて、何を言う、と怒られそうだが。

ローズの体を抱っこさせて貰う。
恥ずかしがっていたが、やってみたかったのだ。顔を真っ赤にしているのが、可愛くてもっと見たいと思ってしまう。

そのまま座って話をしていると、蚊の鳴くような声で「そろそろおろしてください」と言ったが、聞こえなかったフリをして、抱っこし続けた。許容量を超えたみたいで、虫の息になっていたので、たまらず、口づけると、くたっと萎れてしまった。

ディアンに、叱られるな、と思った。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます

刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈 
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

ふたりは片想い 〜騎士団長と司書の恋のゆくえ〜

長岡更紗
恋愛
王立図書館の司書として働いているミシェルが好きになったのは、騎士団長のスタンリー。 幼い頃に助けてもらった時から、スタンリーはミシェルのヒーローだった。 そんなずっと憧れていた人と、18歳で再会し、恋心を募らせながらミシェルはスタンリーと仲良くなっていく。 けれどお互いにお互いの気持ちを勘違いしまくりで……?! 元気いっぱいミシェルと、大人な魅力のスタンリー。そんな二人の恋の行方は。 他サイトにも投稿しています。

引きこもりたい伯爵令嬢

朱式あめんぼ
恋愛
ルクリア・ピンセアナ伯爵令嬢。 淡い桃色の髪、大きな瞳、小柄で華奢な身体。まるで兎のような彼女、実は元対人恐怖症の引きこもりストが転生してるんです!! 極度の人見知りだと思われながらも、なんとか対人恐怖症を克服していく愛らしい兎ーーー否、少女の話。 *更新については近況ボードに記載 *オマケも載せています(´˘`*)

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

女嫌いな騎士団長が味わう、苦くて甘い恋の上書き

待鳥園子
恋愛
「では、言い出したお前が犠牲になれ」 「嫌ですぅ!」 惚れ薬の効果上書きで、女嫌いな騎士団長が一時的に好きになる対象になる事になったローラ。 薬の効果が切れるまで一ヶ月だし、すぐだろうと思っていたけれど、久しぶりに会ったルドルフ団長の様子がどうやらおかしいようで!? ※来栖もよりーぬ先生に「30ぐらいの女性苦手なヒーロー」と誕生日プレゼントリクエストされたので書きました。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...