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サイオン
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ローズは一人恥ずかしがっていた。
「言ってくだされば良いのに。」
あっけらかんと初めてお会いした方に言われた内容は、きちんと考えたらわかるような簡単な事実だ。
サイオンも今まで、言いたくて言えなかったのだろうか。裸の王様みたいではないか。私がずっとアーサーを演じていたのを、御令嬢が頑張って男装しているように見えていたなんて。
変な汗がでてくる。
それにしても、サイオンにきちんと想いを伝える、って結構難しいことじゃない?
タイミングもあるし、何故か最近一緒にいると変に緊張するのよね。
サイオンが他の御令嬢と話しているだけで、ソワソワしてしまい、気持ちが落ち着かず、失礼な態度を取っていないか気になってしまう。
それもこれも、きっとサイオンが優しくて無意識に甘え過ぎていたせいだと思う。
サイオンは歳下を甘やかせてくれる天才だと思う。だから、人気があるのだわ。マネキンとしてではなく、男性として。
胸板の厚い筋肉のしまった体躯を思い出し、やはり理想的な身体だな、と思う。ふと、ローズがちゃんと想いを口に出せば、押し倒される、と言う言葉を思い出し、実際に合ったことでもないのに、想像してしまって、余計に恥ずかしくなってしまった。
サイオン様にキスされるようなことを言わなくてはならないの?
ローズは想像力が、豊かすぎて混乱していた。
だから、サイオンが来たときに、緊張してしまうのは仕方がないことだった。
「大丈夫ですか?何かありました?」
不思議そうに、上から顔を近づけてくるのをやめてほしい。
ボーッと見てしまって恥ずかしい。
ああ、今何をしても、恥ずかしさを感じてしまうのはサイオンを意識しすぎてるせいだ。
顔を見ると恥ずかしさが高まる。
「あの、サイオン様。後ろを向いて下さいますか。」
「え?あ、はい。」
素直に後ろを向いたサイオンの背中に向かって、「最近、私サイオン様のことを考えるだけで、ドキドキしてしまって、緊張してしまうので、変な態度を取ってしまい、ごめんなさい。あの、嫌いとかではないのです。むしろ、あの…」
サイオンの背中がプルプル震えている。
怒ってしまったかしら。
「あの…頼りにしています。」
「…あの…サイオン様?もうこちら向いていただいても、大丈夫です。」
声をかけたものの、サイオン様は大きくため息をつかれたのち、小さな声で、
「ああ、僕がまだ無理です。」
と言って、顔を覆った。
マリカ達の賭けは外れだった。
しばらくの間、サイオンはこちらを振り向かなかった。
「言ってくだされば良いのに。」
あっけらかんと初めてお会いした方に言われた内容は、きちんと考えたらわかるような簡単な事実だ。
サイオンも今まで、言いたくて言えなかったのだろうか。裸の王様みたいではないか。私がずっとアーサーを演じていたのを、御令嬢が頑張って男装しているように見えていたなんて。
変な汗がでてくる。
それにしても、サイオンにきちんと想いを伝える、って結構難しいことじゃない?
タイミングもあるし、何故か最近一緒にいると変に緊張するのよね。
サイオンが他の御令嬢と話しているだけで、ソワソワしてしまい、気持ちが落ち着かず、失礼な態度を取っていないか気になってしまう。
それもこれも、きっとサイオンが優しくて無意識に甘え過ぎていたせいだと思う。
サイオンは歳下を甘やかせてくれる天才だと思う。だから、人気があるのだわ。マネキンとしてではなく、男性として。
胸板の厚い筋肉のしまった体躯を思い出し、やはり理想的な身体だな、と思う。ふと、ローズがちゃんと想いを口に出せば、押し倒される、と言う言葉を思い出し、実際に合ったことでもないのに、想像してしまって、余計に恥ずかしくなってしまった。
サイオン様にキスされるようなことを言わなくてはならないの?
ローズは想像力が、豊かすぎて混乱していた。
だから、サイオンが来たときに、緊張してしまうのは仕方がないことだった。
「大丈夫ですか?何かありました?」
不思議そうに、上から顔を近づけてくるのをやめてほしい。
ボーッと見てしまって恥ずかしい。
ああ、今何をしても、恥ずかしさを感じてしまうのはサイオンを意識しすぎてるせいだ。
顔を見ると恥ずかしさが高まる。
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「え?あ、はい。」
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サイオンの背中がプルプル震えている。
怒ってしまったかしら。
「あの…頼りにしています。」
「…あの…サイオン様?もうこちら向いていただいても、大丈夫です。」
声をかけたものの、サイオン様は大きくため息をつかれたのち、小さな声で、
「ああ、僕がまだ無理です。」
と言って、顔を覆った。
マリカ達の賭けは外れだった。
しばらくの間、サイオンはこちらを振り向かなかった。
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