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口が悪い
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*ライラの口が悪いです。
第二王子のスタンは、泣きはらしたあとのような、ライラに釘づけになっていて、この場にティアラ嬢がいないことに、遅れて気がついた。
第一王子は、マリア嬢とライラ嬢の他にローズ嬢がいるのが、嫌な予感がして、気が気ではなかった。
やっぱり、マリアは知っているのでは?
この予想は当たることになる。王子は浮気が悪いことだと、思っている。確かに王となれば側室は持てるのだが、それは王妃となる正妃その人を大切にしてなおかつ正妃の承認がなければ、認めて貰えない。恋愛結婚なら、側妃は不要だが、政略結婚の場合、王妃の仕事が多く、王の相手までしてられない時に、側妃がいれば、非常に助かる、と言う時に承認したりする。正妃が決めるのだから、軋轢などはないような人を選ぶのが常だ。いつのまにか、側妃が調子に乗ることがあり、最近は側妃を争いの種になると敬遠し今の国王陛下も側妃は持たなかった。
エドワードは、ローズを見たときに自分のものにしたくて、側妃と言う可能性を考えたものの、今はマリアを大切に思っているので、ローズを側妃にする気持ちは大分収まっていた。
「ティアラ嬢は遅いなぁ。」
エドワードが棒読みになってしまうのは仕方がない。さっきから、スタンは何も話さないし、全員が共通する話題がないのだ。
「ティアラ嬢は帰られました。」
ライラ嬢が答える。
「何か言われたのか?」
スタンがやや食い気味に聞くと、ライラ嬢は俯いた。
スタンは演技するのも忘れて、ライラの顔を覗き込む。
ライラは笑いを堪えるのに必死だ。
「スタン様、私、婚約者を降ります。」
スタンの目が大きくなる。
「だって…スタン様はあの方がお好きなんですよね。私では代わりにすらなれませんもの。」
スタンが真剣な顔になる。ティアラ嬢がライラに何を行ったのか考えているのだろう。
「まさか…スタン様が男性をお好きだなんて…」
ライラ嬢の仕込んだ作り物の涙がポロポロと頬を濡らして行く。
「は?」
「スタン様が男色だったなんて。」
心なしか、ライラの声はやたらと大きくなって、きっと今日の近衛騎士には聞こえていると思う。だって何人かはこちらを見たから。
「所詮私のような女では、太刀打ちできませんわ。」
「待ってくれ、ライラ。何の話をしている。」挙動不審にスタンが動くのを見て、やっぱり知らなかったか、とライラは冷静に思った。
「だから、ティアラ嬢は、男性でしょう?スタン様が、男性の方がお好きなら、私は…」
「ティアラが、男性?」
「ええ、ご存知ですわよね。あんな思わせぶりに、体の関係を思わせるようなことをおっしゃっていましたから。」
「いや、誤解だ。そんなことしない。」
そう、やっぱり、嘘だったのね。このクズ王子。
首を傾げて、説明を続けさせる。
「いや、たしかに君への仕返しをしたくて、嘘をついたのは認める。けれど、ティアラ嬢と体の関係はないし、君以外の他の令嬢を好きになることはない。君が他の男と良い雰囲気だったと聞いて、気が気じゃなくなっただけだ。すまない。」
「仕返しだなんて、それは勘違いですわ。」
今度はスタンが首を傾げたので、ローズに手伝ってもらうことにした。
目の端に映った第一王子の顔が強張っている。
クズ王子どもめ。
第二王子のスタンは、泣きはらしたあとのような、ライラに釘づけになっていて、この場にティアラ嬢がいないことに、遅れて気がついた。
第一王子は、マリア嬢とライラ嬢の他にローズ嬢がいるのが、嫌な予感がして、気が気ではなかった。
やっぱり、マリアは知っているのでは?
この予想は当たることになる。王子は浮気が悪いことだと、思っている。確かに王となれば側室は持てるのだが、それは王妃となる正妃その人を大切にしてなおかつ正妃の承認がなければ、認めて貰えない。恋愛結婚なら、側妃は不要だが、政略結婚の場合、王妃の仕事が多く、王の相手までしてられない時に、側妃がいれば、非常に助かる、と言う時に承認したりする。正妃が決めるのだから、軋轢などはないような人を選ぶのが常だ。いつのまにか、側妃が調子に乗ることがあり、最近は側妃を争いの種になると敬遠し今の国王陛下も側妃は持たなかった。
エドワードは、ローズを見たときに自分のものにしたくて、側妃と言う可能性を考えたものの、今はマリアを大切に思っているので、ローズを側妃にする気持ちは大分収まっていた。
「ティアラ嬢は遅いなぁ。」
エドワードが棒読みになってしまうのは仕方がない。さっきから、スタンは何も話さないし、全員が共通する話題がないのだ。
「ティアラ嬢は帰られました。」
ライラ嬢が答える。
「何か言われたのか?」
スタンがやや食い気味に聞くと、ライラ嬢は俯いた。
スタンは演技するのも忘れて、ライラの顔を覗き込む。
ライラは笑いを堪えるのに必死だ。
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スタンの目が大きくなる。
「だって…スタン様はあの方がお好きなんですよね。私では代わりにすらなれませんもの。」
スタンが真剣な顔になる。ティアラ嬢がライラに何を行ったのか考えているのだろう。
「まさか…スタン様が男性をお好きだなんて…」
ライラ嬢の仕込んだ作り物の涙がポロポロと頬を濡らして行く。
「は?」
「スタン様が男色だったなんて。」
心なしか、ライラの声はやたらと大きくなって、きっと今日の近衛騎士には聞こえていると思う。だって何人かはこちらを見たから。
「所詮私のような女では、太刀打ちできませんわ。」
「待ってくれ、ライラ。何の話をしている。」挙動不審にスタンが動くのを見て、やっぱり知らなかったか、とライラは冷静に思った。
「だから、ティアラ嬢は、男性でしょう?スタン様が、男性の方がお好きなら、私は…」
「ティアラが、男性?」
「ええ、ご存知ですわよね。あんな思わせぶりに、体の関係を思わせるようなことをおっしゃっていましたから。」
「いや、誤解だ。そんなことしない。」
そう、やっぱり、嘘だったのね。このクズ王子。
首を傾げて、説明を続けさせる。
「いや、たしかに君への仕返しをしたくて、嘘をついたのは認める。けれど、ティアラ嬢と体の関係はないし、君以外の他の令嬢を好きになることはない。君が他の男と良い雰囲気だったと聞いて、気が気じゃなくなっただけだ。すまない。」
「仕返しだなんて、それは勘違いですわ。」
今度はスタンが首を傾げたので、ローズに手伝ってもらうことにした。
目の端に映った第一王子の顔が強張っている。
クズ王子どもめ。
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