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王子の憂鬱
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ある日の昼下がり、王子は悩んでいた。
マリアにアーサーをお茶に誘うにはどうしたらよいのでしょう?と言われたので、つい私から話そうと言ったのだが、どうすれば良いのだろう。
マリアの気持ちがわからない。
婚約を続ける気であることは間違いない。私に聞くと言うことは疚しい気持ちはないのだろう。
けれど…以前会った時の様子から、好意を持っているのは間違いないだろうし、ともすれば、私はマリアすら失うことになるのでは…?
いや、いかん。
それはダメだ。
悩んでいる王子の近くに近衛騎士が立っている。先程からぶつぶつと独り言を話す王子に気にする様子もない。
その様子をさらに離れたところから、サイオンは眺めていた。王子から相談されるまで、助け船を出す必要はない。
実はマリアから、相談を初めに受けたのはこの男だった。マリアに、王子のご友人なら王子に聞けばよいのでは?と良い人を装ってみたのだ。
マリア嬢は大層喜んで、王子にお伺いを立てた、ことになっている。
サイオンがただの近衛騎士なら、マリア嬢の純粋さを可愛いと形容しただろう。
マリア嬢は未来の王妃として教育を受けている、れっきとした公爵令嬢だ。
サイオンは街歩きの際、マリアに感じた違和感を拭えないでいた。
マリア嬢は、全てご存知なのではないか、と言う底知れぬ恐怖である。
マリアは、アーサーと昔会った事がある、と言った。それは疑う余地はない。ただ、相手が令嬢なのだと気づいている上で、王子の喜ぶ演技をし、繋ぎ止めに成功したのだと、思うのは買い被りすぎだろうか。
お世辞にも仲が良いとは言えない間柄だった。嫌いあっているわけでもないが、好きあっているわけでもない。
微妙な関係。
マリア嬢の行動によって、王子の興味がローズ嬢からマリア嬢に変わったのは果たして偶然なのか、サイオンには判断が付かなかった。
さて、王子はマリア嬢の掌で、コロコロ転がされていて、王子としてどうかと思うものの、とてもわかりやすい。
だから、つけ込まれるのですよ。
マリア嬢から、今回の相談を受けなければ、疑うことすらしなかった自身のことは棚にあげ、王子を憐む。
王子はまだ頭を抱えていた。最終的にマリア嬢の思い通りになるのだから、早く主導権を渡した方が、楽ですよ、とは口が裂けても言えなかった。
マリアにアーサーをお茶に誘うにはどうしたらよいのでしょう?と言われたので、つい私から話そうと言ったのだが、どうすれば良いのだろう。
マリアの気持ちがわからない。
婚約を続ける気であることは間違いない。私に聞くと言うことは疚しい気持ちはないのだろう。
けれど…以前会った時の様子から、好意を持っているのは間違いないだろうし、ともすれば、私はマリアすら失うことになるのでは…?
いや、いかん。
それはダメだ。
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その様子をさらに離れたところから、サイオンは眺めていた。王子から相談されるまで、助け船を出す必要はない。
実はマリアから、相談を初めに受けたのはこの男だった。マリアに、王子のご友人なら王子に聞けばよいのでは?と良い人を装ってみたのだ。
マリア嬢は大層喜んで、王子にお伺いを立てた、ことになっている。
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だから、つけ込まれるのですよ。
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