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楽しみにしていた街歩きは、ほぼほぼ公爵令嬢の独壇場で終わった。帰り際、ローズ嬢はアーサーに対して、「またお会いできますか?」と聞いた。
アーサーはチラリと王子を見たものの、断りきれず、「ええ、是非。」と返事をした。
王子を迎えにきた馬車に令嬢をのせ、同僚にバトンタッチし、サイオンとアーサーが残る。
「サイオン様は乗らないのですか。」
不思議そうにサイオンを見上げるアーサーに笑いかける。
「私は今から非番ですので、お送りいたします。」
「え、いいですよ、大丈夫。すぐそこですので。」
王子とマリア嬢から離れた途端、少しローズの顔が見え隠れしたアーサーを危ないから、と宥めて家まで送る。
思った通り、日が沈みかけている道を歩いて帰るようで、さすがに男装しているとはいえ、危ないだろう。送ると申し出てよかったと思う。
危機管理がイマイチなようだ。
貴族令嬢らしい、というか何というか。
「今日はどうでしたか。」
「緊張しました~。」
フニャっとした笑顔になって、力なく笑うと、サイオンの方を見てお礼を口にした。
「何のことでしょうか?」
「あのマリア様にお会いした時に、こう…」
挨拶の時にジェスチャーで教えたことを言っているのだと気付いた。
「いえ、理解されて良かったです。普通平民はわからないから、どちらでも良かったのですが。」
「いえ、あの方に、失礼がなくて良かったです。」
フフ、と笑い合う。
あ、とローズが声を出す。
サイオンが目を向けると、
躊躇いがちにローズが話し始めた。
「あの…縁談の件なのですが…」
「はい。」
「…本気ですか?」
「はい?」
ローズが何を言いたいのかわからなくて、戸惑う。
「あの…兄が、選んだ釣書の中にサイオン様のが、ありまして。」
(あいつ、ちゃんと渡したのだな。俺のだけ避けると思ってたがいいやつじゃないか。)
「サイオン様はきっと、お前のことを揶揄っているのだと、兄が申しており。」
(前言撤回。なんちゅーことを!)
「年齢も少しあいているし、気になるなら聞いてこいと言われまして。」
サイオンはディアンに苛々しつつ、ローズにきちんと説明するために向き合った。
「ディアンが何と言おうと私は本気です。年齢は、申し訳ないが、貴方を大切にお守り致します。」
言ってから気がついた。
ん?気になるなら?
「私の事を気にして頂いてたのですか?」サイオンは淡い期待を抱いた。
アーサーの格好をしたローズは、顔を赤くして、頷く。
「あの、式典用の制服が一番お似合いなのは、サイオン様ですから!」
(ん?なんか急にどうした?)
いい雰囲気だと思ったのはサイオンだけだったようで、ローズは構わず、制服姿のサイオンの魅力について語っている。
何かローズがいいたそうな感じがしたのは、これか、とサイオンは気付かれないように小さくため息をついた。
とはいえ、チャンスだと思うことにする。
「もし良ければ、制服を見にきますか?
ご令嬢が来るようなところではありませんが、アーサーとしてなら、ね。」
「よろしいのですか?」
キラキラとローズの目が輝いた。
アーサーはチラリと王子を見たものの、断りきれず、「ええ、是非。」と返事をした。
王子を迎えにきた馬車に令嬢をのせ、同僚にバトンタッチし、サイオンとアーサーが残る。
「サイオン様は乗らないのですか。」
不思議そうにサイオンを見上げるアーサーに笑いかける。
「私は今から非番ですので、お送りいたします。」
「え、いいですよ、大丈夫。すぐそこですので。」
王子とマリア嬢から離れた途端、少しローズの顔が見え隠れしたアーサーを危ないから、と宥めて家まで送る。
思った通り、日が沈みかけている道を歩いて帰るようで、さすがに男装しているとはいえ、危ないだろう。送ると申し出てよかったと思う。
危機管理がイマイチなようだ。
貴族令嬢らしい、というか何というか。
「今日はどうでしたか。」
「緊張しました~。」
フニャっとした笑顔になって、力なく笑うと、サイオンの方を見てお礼を口にした。
「何のことでしょうか?」
「あのマリア様にお会いした時に、こう…」
挨拶の時にジェスチャーで教えたことを言っているのだと気付いた。
「いえ、理解されて良かったです。普通平民はわからないから、どちらでも良かったのですが。」
「いえ、あの方に、失礼がなくて良かったです。」
フフ、と笑い合う。
あ、とローズが声を出す。
サイオンが目を向けると、
躊躇いがちにローズが話し始めた。
「あの…縁談の件なのですが…」
「はい。」
「…本気ですか?」
「はい?」
ローズが何を言いたいのかわからなくて、戸惑う。
「あの…兄が、選んだ釣書の中にサイオン様のが、ありまして。」
(あいつ、ちゃんと渡したのだな。俺のだけ避けると思ってたがいいやつじゃないか。)
「サイオン様はきっと、お前のことを揶揄っているのだと、兄が申しており。」
(前言撤回。なんちゅーことを!)
「年齢も少しあいているし、気になるなら聞いてこいと言われまして。」
サイオンはディアンに苛々しつつ、ローズにきちんと説明するために向き合った。
「ディアンが何と言おうと私は本気です。年齢は、申し訳ないが、貴方を大切にお守り致します。」
言ってから気がついた。
ん?気になるなら?
「私の事を気にして頂いてたのですか?」サイオンは淡い期待を抱いた。
アーサーの格好をしたローズは、顔を赤くして、頷く。
「あの、式典用の制服が一番お似合いなのは、サイオン様ですから!」
(ん?なんか急にどうした?)
いい雰囲気だと思ったのはサイオンだけだったようで、ローズは構わず、制服姿のサイオンの魅力について語っている。
何かローズがいいたそうな感じがしたのは、これか、とサイオンは気付かれないように小さくため息をついた。
とはいえ、チャンスだと思うことにする。
「もし良ければ、制服を見にきますか?
ご令嬢が来るようなところではありませんが、アーサーとしてなら、ね。」
「よろしいのですか?」
キラキラとローズの目が輝いた。
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