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準備①

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さて、この度兄から念願のお許しを貰ったし、早速男装用の服の製作に取り掛かる。
とはいえ、式典用の制服については、サイオンに会えていないこともあり、まだ情報が足りない。

街にいそうな少年に変装するための服を作るのだ。一応最下層ではあるが、貴族の令嬢なので、古着を着ることは少し抵抗がある。ましてや、貴族令嬢のドレスなど綺麗なものならまだしも、平民用の服なんて。

ローズは王子は偉ぶらない良い方だとは思うものの、特に思い入れもなく、よくお忍びで街歩きをしている方と言う認識でしかないため、自分が何故選ばれたかわからないが、感謝しなきゃと思っていた。

マリカとデザインの候補を書いておいて、以前に作った型紙から、布を切って行く。
平民のフリでも、一応王子の目前となるので、あまり変な格好もできない。

選んだ布地が割と良いもので、マリカに却下されたりはしたものの、兄に隠れてコソコソ作っていた時と比べて、数段も良いものが作れたように思う。

靴は作れないので、今まで購入した中から選ぶ。王子と一緒ならそんなに歩かないかもしれない。でも緊張して、疲れやすくはなりそうだから、少しでも足に負担のかからないものを、と選んだ結果歩きやすい紐靴に落ち着いた。

髪は少し短めなので、帽子で隠せるし、日によってはウィッグを被ることもある。お気に入りのものは、栗色のもので、ローズの瞳とのバランスが良く、普段遣いに向いていた。

何度か、母に黙ってお茶会に男装で紛れ込んだ時に、どこかの令嬢とお話した時に使用したのも、その栗色のものだった。

その令嬢とは、その後お茶会で何度かお会いしたが、まさかあの時の少年が実は私です、とは言いづらく、そのまま、会えなくなってしまった。

どうやら、その方は公爵家の方だったようで、普段はお目にかかることすらできない方だと知ったのは、最近のこと。

(何か粗相していないかしら。)
粗相と言えば、今回は男装が粗相と言えば粗相なのだが、それにローズは気づいていない。



ローズはレオンが生まれた時、名前をアーサーにするか、レオンにするか、両親が悩んでいたことから、男装をしている時は勝手にアーサーと名乗っていた。
でも、家名を口にすると迷惑が掛かるため、ただのアーサーと名乗っていた。

その名を、王子との会話の時に使用することにし、アーサーと言う平民の少年を作り上げた。

ローズは顔自体は綺麗なのだが、女顔に悩んでいる平民のアーサーのフリをして、それは誰の目からみても、真実に思わせることができた。

ローズは、男装を楽しみながら、王子の友人の地位を手に入れた。
突如現れた綺麗な顔の少年の、身辺を探るものが現れた。
ローズは男装をしたあと、護衛の指示を受け、追手を撒きながら帰ることになった。

(何だかスパイみたいで、ワクワクするわね。)

アーサーの護衛には、子爵家の護衛だけでなく、王子の側からも護衛をつける打診があった。

近衛騎士ならよかったが、近衛騎士は王族専用なため、丁重にお断りした。
最悪、兄がいますから大丈夫です、と、
言って。

兄だけで、多分事は足りる。
兄はローズが大好きだから。

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