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男装趣味

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会場へ向かう間、馬車に揺られて、男装が趣味になったきっかけをローズは考える。

お兄様じゃなかったかしら、と。

具体的には乗馬の時間。
お兄様の乗馬スタイルが凄くかっこよくて、素敵だったのだ。

対するローズはいつものドレスより、もっさりしたドレスで、全く可愛くなかった。

ローズはあの頃、母を幼いレオンに取られたように感じていたから、ディアンにベッタリくっついていて、ディアンがやること全てやりたがった。

男の子の格好は動きやすく、ビラビラもついていないし、大きく足を開いても平気な上、着替えるのも楽だ。

また、足を開いたり、水たまりを飛び越えたり、よじ登ったりすると、女性は、はしたない、と叱られる。
男性は大丈夫なのに!

この世はなんて不公平なの!
幼いながらに思ったのだ。

そのことについて抗議したローズに、男性の大変さを理解してもらうために、父が一時ローズを男装させたのが決定打となった。

あの時のことは、今でも家族中から不満が出るほどで、父の肩身はこの時からどんどん狭くなっていく。

ローズは、身近な男性であるディアンを参考にした。

その時感じた自由をローズは忘れることができない。

女性はなんて、不自由で不憫なのだ、と。奇しくも、父が教えたい事実と正反対の結果になってしまった。





王宮の前にたくさんの馬車が並んでいる。子爵家は、序列が最後の方なので、大人しく待っている。一番前にまだ公爵家の馬車がある。

「これは時間かかるわよ。」
レオンも外を眺めて、ため息をついた。
「仕方ないよ、貴族が勢揃いなんだから。」

レオンは真剣な顔をして、ローズに顔を寄せる。

「お願いだから、姉さん。変なことしないでね。」
「毎回言わなくていいわよ。わかってます!」

レオンは、姉に自分の言葉が全く伝わっていないことを知っていた。

前回も前々回も、同じ忠告をしているのにも関わらず、もういろんなハイエナ達に目をつけられているのだ。

自分に向けられた笑顔でなくても、姉さんの笑顔を見ただけで、虜になってしまう男はいるんだよ。

多分言ったところで、姉は理解してくれないのだ。まるで赤ん坊を相手にしているみたいだと、レオンは思った。


今日の凱旋パレードでの様子を、姉の護衛に聞いたところ、第一王子の興味を引いたらしい。

何でよりにもよってあんなめんどくさいのを、引き寄せてしまうんだ。

護衛によると、こうも言っていた。
姉は気づいていなかった、と。

どうせ、騎士の制服でも見てたのだろう。

前回の夜会で、第二王子にも、話しかけられて、あたふたしてたし。子爵家だから、大丈夫と思ってる所に王子がくるのだから、そりゃ慌てる。

姉はいい加減気づくべきだ。自分の見た目が、男の目を引くものだって。

本人全く気付いてないし、なんならめんどくさい、とか言っちゃうからなぁ。

悶々としていると、外ではようやく馬車が片付いて行き、子爵家の番が来た。

先に降りて、エスコートする。
姉が降りた途端、周りの男たちの空気が変わった。

レオンは気を引き締めた。




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