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最後のスチルまでは幸せ
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あれ?私、どうして牢に入ってるの?いや、ほんと。さっきまで?いや、ほんとさっきまで、私ヒロインで、幸せの絶頂にいたのよ。だって、最後のスチルだって、コンプリートして、さあ、これでヒロインとして華々しく終われて、ゲームが終わって幸せに……なところで、これよ。
この世界、乙女ゲームの世界なのよね。何言ってるんだって?いや、ほんと。私もね、最初はそう思ったのよ。でも、王子の名前は私の最推しジークフリート殿下だし、その妹は、エルフリーデだし、ジークフリートの幼馴染は、リーゼロッテ、私の名前はモニカとなれば、これは前世で課金しまくった乙女ゲームの世界に転生したのねって思うじゃない。もうね、気がついたからには、それはもう、頑張ったわよ。私はよくある転生モノみたいに逆ハーなんて狙わなかったわ。だって最推しのジークフリート殿下さえ、いれば幸せなんだもの。
彼のルートは何度も繰り返して色々なスチルを手にしたわ。ここでは、写真なんてないから、魔道具ってやつに、動画として保存という形になるんだけど。ビデオはあるけれど、カメラはないの。不思議よね。
それでね、最後のスチルを撮り終えた後で、そうよ、その後で、大好きなジークフリート殿下が私に微笑みかけたの。私、幸せの絶頂に居たはずなんだけど、違ったみたい。
だって、彼はこう言ったのよ。
「これで、スチルコンプリートだね。」って。
えっ?ってなるでしょ。なんて?って。
「今日この日この瞬間が最後のスチルなのだろう?ヒロインとしての感想はいかがかな?」
私の頭は真っ白よ。ジークフリート殿下は怒っては居ないみたいだった。明らかに楽しんでいる顔で、でもその笑顔のまま、こうして私は牢に入れられている。
「ど、どうして?」
「あはははっ、どうして?何だい?どうして、スチルなんて知っているか?どうして自分が牢に入っているか?どうしてだと思う?」
本当に楽しげに、最推しが笑っている。ジークフリート殿下は一頻り笑うと、「わかるまで、そこに居れば良いよ。」と言い、いつもの様子で、じゃあね、と言って、出て行った。
ついこの間までは、ひとときも離れたくないとか言ってませんでした?
牢とは言っても、そこは貴族牢。前世の世界を知っている身としては、最高級のビジネスホテルに泊まってるぐらいの贅沢さ。牢なのに、男爵家の自室よりも広いとか、なんなの。
わかるまで、とは言われたけど、ここならまあ、悪くないかな、と考えて、いやいや、ダメでしょ、と思い直す。
だってあの様子じゃジークフリートにはもう会えない気がする。何なら彼の興味を失えば、すぐに捨てられそうな気さえする。それは私が熱狂した最推しの魅力の一つでもあるからだ。
好きな人にはとことん甘いけれど、そうでもない人にはとことん冷たい。そのギャップが堪らない。ゲームの中ではあの甘い笑顔は全てヒロインのものだったけれど、この世界では違った。
彼の笑顔は最初ヒロインではなく、別の人物に向けられていた。彼の妹で王女殿下のエルフリーデと、彼の幼馴染のリーゼロッテ。彼の特別はあの頃、ヒロインではなかった。
だから、彼女達を排除したのに。ゲームの中ではヒロインのサポート役だったエルフリーデが全く手伝ってくれなかったこともあって、ヒロインは彼女達を不要だと判断したのだ。
この世界、乙女ゲームの世界なのよね。何言ってるんだって?いや、ほんと。私もね、最初はそう思ったのよ。でも、王子の名前は私の最推しジークフリート殿下だし、その妹は、エルフリーデだし、ジークフリートの幼馴染は、リーゼロッテ、私の名前はモニカとなれば、これは前世で課金しまくった乙女ゲームの世界に転生したのねって思うじゃない。もうね、気がついたからには、それはもう、頑張ったわよ。私はよくある転生モノみたいに逆ハーなんて狙わなかったわ。だって最推しのジークフリート殿下さえ、いれば幸せなんだもの。
彼のルートは何度も繰り返して色々なスチルを手にしたわ。ここでは、写真なんてないから、魔道具ってやつに、動画として保存という形になるんだけど。ビデオはあるけれど、カメラはないの。不思議よね。
それでね、最後のスチルを撮り終えた後で、そうよ、その後で、大好きなジークフリート殿下が私に微笑みかけたの。私、幸せの絶頂に居たはずなんだけど、違ったみたい。
だって、彼はこう言ったのよ。
「これで、スチルコンプリートだね。」って。
えっ?ってなるでしょ。なんて?って。
「今日この日この瞬間が最後のスチルなのだろう?ヒロインとしての感想はいかがかな?」
私の頭は真っ白よ。ジークフリート殿下は怒っては居ないみたいだった。明らかに楽しんでいる顔で、でもその笑顔のまま、こうして私は牢に入れられている。
「ど、どうして?」
「あはははっ、どうして?何だい?どうして、スチルなんて知っているか?どうして自分が牢に入っているか?どうしてだと思う?」
本当に楽しげに、最推しが笑っている。ジークフリート殿下は一頻り笑うと、「わかるまで、そこに居れば良いよ。」と言い、いつもの様子で、じゃあね、と言って、出て行った。
ついこの間までは、ひとときも離れたくないとか言ってませんでした?
牢とは言っても、そこは貴族牢。前世の世界を知っている身としては、最高級のビジネスホテルに泊まってるぐらいの贅沢さ。牢なのに、男爵家の自室よりも広いとか、なんなの。
わかるまで、とは言われたけど、ここならまあ、悪くないかな、と考えて、いやいや、ダメでしょ、と思い直す。
だってあの様子じゃジークフリートにはもう会えない気がする。何なら彼の興味を失えば、すぐに捨てられそうな気さえする。それは私が熱狂した最推しの魅力の一つでもあるからだ。
好きな人にはとことん甘いけれど、そうでもない人にはとことん冷たい。そのギャップが堪らない。ゲームの中ではあの甘い笑顔は全てヒロインのものだったけれど、この世界では違った。
彼の笑顔は最初ヒロインではなく、別の人物に向けられていた。彼の妹で王女殿下のエルフリーデと、彼の幼馴染のリーゼロッテ。彼の特別はあの頃、ヒロインではなかった。
だから、彼女達を排除したのに。ゲームの中ではヒロインのサポート役だったエルフリーデが全く手伝ってくれなかったこともあって、ヒロインは彼女達を不要だと判断したのだ。
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