笑わない妻を娶りました

mios

文字の大きさ
上 下
9 / 10

ライバル現る ミスティア視点

しおりを挟む
結婚式も無事終わり、タイロン家での生活が始まった。とは言え最初の何日かは、ベッドから起き上がれないほどだった為、何の役にも立っていないのだけど。

温室の鳥達は籠に入らなくて良くなって嬉しいのか自由を満喫している。

前伯爵夫人のおかげで、家の雰囲気も良い。若い侍女達も、ミスティアと友好的に接してくれている。

些かそのせいで、スタンの機嫌が悪くなることがあるが、拗ねているそうだ。

温室の管理は、ミスティアに委ねられた。鳥の世話は前と同じアンと、スタンが用意してくれた鳥専門の医師が一人。

彼は国内初の鳥専門の医師だそう。鳥の研究をしているだけあって、南国の鳥に興味津々な彼は、人見知りな鳥に逆らわず、少しずつ友好関係を築いている。

「この鳥に名前などはありますか。」
「ティア、ですわ。私の分身のような気がしていたので、そう名づけたのですが。」
「うーん。さすがにその名前はよびにくいですね。伯爵に殺されちゃいますね。」
「でも、旦那様もご存知だから、大丈夫じゃないかしら。」
「なら、私が旦那様と同じようにティアと発しても大丈夫と言うことですか?」

一瞬、「ティア」と呼ぶスタンの顔が脳内再生され、ミスティアは首をぶんぶんと振る。

「それはダメね。新しい名前を考えるわ。決まったら教えます。」
「はい、よろしくお願いします。」

脳内再生されたスタンは、ここ最近のベッドの上のスタンで、一連のことを思い出してミスティアは顔を赤らめた。

ミスティアは知らなかったが、タイロン家の使用人は皆初々しい反応をするミスティアを密かに愛でている。

同時に噂は当てにならないものだと、実感していた。

彼らはミスティアが「氷の女神」と呼ばれていることも知っているが、スタンとの交流で氷が溶かされつつあってから、会っている為か、氷の部分を感じられることはなかった。

そんな良い雰囲気のタイロン家に我が物顔で居座る男がいる。結婚式から数日間、ミスティアが起き上がれなかった日もその男はわざわざ現れ、スタンに纏わりついていた。

ミスティアの目下のライバルだ。

スタンの執務室にはその男が入り浸っている。仕事の邪魔になったとしても、ミスティアには会わせたくない、と言って矢面に立って下さっている。

「あいつ、どうやら式でミスティアに惚れたらしい。」

スタンには一つ年下の妹さんがいる。平民の男性と恋に落ち、既に伯爵家から出ているがその一人息子のリチャード君(5)が、ミスティアに会いにくるようになった。

ミスティアは可愛い彼と話したいとは思っているが、彼はスタンも大好きらしく、中々執務室から出てこない。

ミスティアとしては、スタンを独り占めされているようで、少しモヤモヤするし、一緒に遊びたいし、で混乱してしまう。

リチャード君の親である妹さんは、新婚家庭にお邪魔するのを申し訳なく思っているが、同時に子供を連れてくることで具体的に子がほしいと思わせたいと思っているようで、あと単純にミスティアと話がしたいようで、結果頻繁に顔を出している。

王太子殿下は、さすがに新婚家庭には来なかった。リーゼが、失恋に泣き崩れているの、とか言っていたけれど、よくわからない。失恋って誰に?

とはいえ、確かにスタンのリチャード君に対する姿を見ていると、子供も早く欲しいなと思う。

それを素直に言うことは妹さんに止められた。兄には刺激が強すぎる、と。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日も双子が可愛いってお話

下菊みこと
恋愛
双子に癒されるだけのお話 小説家になろう様でも投稿しています。

侯爵令嬢は罠にかかって

拓海のり
恋愛
ラシェルは候爵家の一人娘だったが、大人しくて地味な少女だった。しかし、どういう訳か王太子アーネストの婚約者に内定してしまう。断罪もざまぁもない地味な令嬢のお話です。設定は適当でふんわり設定です。 他サイトに投稿していた話です。

公爵令嬢と短気な王子様

ひろたひかる
恋愛
「貴様が彼女を迫害していたことはわかっている!」婚約者である王子から糾弾されている公爵令嬢サンドラ。けれど私、彼女とは初対面ですわ?★★★断罪イベントっぽいですが、乙女ゲー、婚約破棄物ではありません。一応恋愛カテゴリですが、コメディ色強いです。「小説家になろう」にも同内容で投稿しています。

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

お願いだから独り言は一人の時に言ってくれ

mios
恋愛
さっきからずっと私への愛を垂れ流している婚約者。 恥ずかしくて、顔から火が出そう。 独り言を聞いていたのは自分だけと思いきや、実は有名な話だったらしく…。

城内別居中の国王夫妻の話

小野
恋愛
タイトル通りです。

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

地味女は、変わりたい~告白するために必死で自分磨きをしましたが、相手はありのままの自分をすでに受け入れてくれていました~

石河 翠
恋愛
好きな相手に告白するために、自分磨きを決心した地味で冴えない主人公。彼女は全財産を握りしめ、訪れる女性をすべて美女に変えてきたという噂の美容サロンに向かう。 何とか客として認めてもらった彼女だが、レッスンは修行のような厳しさ。彼女に美を授けてくれる店主はなんとも風変わりな男性で、彼女はなぜかその店主に自分の好きな男性の面影を見てしまう。 少しずつ距離を縮めるふたりだが、彼女は実家からお見合いを受けるようにと指示されていた。告白は、彼女にとって恋に区切りをつけるためのものだったのだ。 そして告白当日。玉砕覚悟で挑んだ彼女は告白の返事を聞くことなく逃走、すると相手が猛ダッシュで追いかけてきて……。 自分に自信のない地味な女性と、容姿が優れすぎているがゆえにひねくれてしまった男性の恋物語。もちろんハッピーエンドです。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

処理中です...