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ああやっぱり リーゼ視点
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生まれてからこれまでずっと、私の一番は姉だった。厄介な王子に好かれたことから、婚約者でもないのに、王妃教育紛いのものを叩きこまれ、笑い声を馬鹿にされ笑わなくなった姉を、リラックスさせて、どうにか笑わせるのは妹である自分の役目だった。
王子との婚約話がなくなってからも、縁談は来るには来るが、どの人物も何故か気に入らない。姉の美しさにばかり目がいって姉自身を見てくれる人は中々現れなかった。
表向きには伯爵家の令嬢の縁談だったことから、姉に相手にされそうもない、と見切りをつけると、せめて妹に、と手の平を返すような男達はただただ気持ちが悪かった。
あの日も特に期待などはしていなかった。強いて言えば、いつもとは違う信頼できる従兄弟からの紹介だったことが、唯一興味を持てるところだった。
第一印象は、「冴えない男」。
これは従兄弟の言っていた通り。
「あいつの魅力は初見じゃわからないが何度か会っていれば俺が薦めた理由がわかると思う。」
姉にどこか似ている、と称した従兄弟を一瞬疑ってしまったが、何度か同席するうちに従兄弟が言いたいことがわかってきた。
傍目から見ても良い感じに見えた二人だが、姉は笑い声を隠す方向で行くようだった。
「私はお嫁に付いていけないんだよ?」
結婚して一度も笑わないつもり?そんなことしたら、心労で倒れてしまう。
「大丈夫よ。鳥は連れて行けるし、アンも一緒にいる。ちゃんと隠して見せるわ。」
姉の気持ちはよくわかる。あんなに良い人はもう見つからないかもしれない。
「彼なら、もしかしたら、知っても驚かないかもしれないわよ?」
「そうね。でも、私には気を遣うかもしれない。それでオリバーにも言えなくて悩んでしまうかも。私は幸せに暮らしたいの。少しの間だけでも、幸せな時間を。」
姉は幼少期に、笑い声で散々蔑まれた経験から、この件に関しては特に臆病になっていた。
許すまじ、王子!
まあ、それはおいといて。
私は癪だけど、権力を使うことにした。姉が婚約したことをどこからか聞いてきた王子を利用することにした。
王子は明らかに動揺していた。
「姉はすっかりその気ですし、結婚も時間の問題です。笑い声も結婚してしまえば、わかったところで後の祭りですしね。だから、王子殿下はいよいよ、姉との接点は無くなりますね?」
焦った男はどうにか私の言った「笑い声」を彼に聞かせようと躍起になった。断られ続けた王子は、私の誕生パーティーで見境がなくなり、暴挙に出た。
私も姉には悪いが見てみたかった。彼が姉の笑い声を聞いて何を感じ、何を話すのかを。
そういった意味ではまさに期待通りの、いやそれ以上の反応を彼は見せてくれた。彼は似ている、と言う理由であの鳥を贈った王子を変わった人認定していたようだが、今回のことで腑に落ちたと言う。
「ミスティアはあの笑い声を含めて彼女の魅力なんだね。
本当に女神達の楽しいひとときを盗み見てしまって申し訳ない。」
姉を女神と称する人はたくさんいる。単純だけど、それだけで何となく呆れて何も言えなくなってしまった。
王子との婚約話がなくなってからも、縁談は来るには来るが、どの人物も何故か気に入らない。姉の美しさにばかり目がいって姉自身を見てくれる人は中々現れなかった。
表向きには伯爵家の令嬢の縁談だったことから、姉に相手にされそうもない、と見切りをつけると、せめて妹に、と手の平を返すような男達はただただ気持ちが悪かった。
あの日も特に期待などはしていなかった。強いて言えば、いつもとは違う信頼できる従兄弟からの紹介だったことが、唯一興味を持てるところだった。
第一印象は、「冴えない男」。
これは従兄弟の言っていた通り。
「あいつの魅力は初見じゃわからないが何度か会っていれば俺が薦めた理由がわかると思う。」
姉にどこか似ている、と称した従兄弟を一瞬疑ってしまったが、何度か同席するうちに従兄弟が言いたいことがわかってきた。
傍目から見ても良い感じに見えた二人だが、姉は笑い声を隠す方向で行くようだった。
「私はお嫁に付いていけないんだよ?」
結婚して一度も笑わないつもり?そんなことしたら、心労で倒れてしまう。
「大丈夫よ。鳥は連れて行けるし、アンも一緒にいる。ちゃんと隠して見せるわ。」
姉の気持ちはよくわかる。あんなに良い人はもう見つからないかもしれない。
「彼なら、もしかしたら、知っても驚かないかもしれないわよ?」
「そうね。でも、私には気を遣うかもしれない。それでオリバーにも言えなくて悩んでしまうかも。私は幸せに暮らしたいの。少しの間だけでも、幸せな時間を。」
姉は幼少期に、笑い声で散々蔑まれた経験から、この件に関しては特に臆病になっていた。
許すまじ、王子!
まあ、それはおいといて。
私は癪だけど、権力を使うことにした。姉が婚約したことをどこからか聞いてきた王子を利用することにした。
王子は明らかに動揺していた。
「姉はすっかりその気ですし、結婚も時間の問題です。笑い声も結婚してしまえば、わかったところで後の祭りですしね。だから、王子殿下はいよいよ、姉との接点は無くなりますね?」
焦った男はどうにか私の言った「笑い声」を彼に聞かせようと躍起になった。断られ続けた王子は、私の誕生パーティーで見境がなくなり、暴挙に出た。
私も姉には悪いが見てみたかった。彼が姉の笑い声を聞いて何を感じ、何を話すのかを。
そういった意味ではまさに期待通りの、いやそれ以上の反応を彼は見せてくれた。彼は似ている、と言う理由であの鳥を贈った王子を変わった人認定していたようだが、今回のことで腑に落ちたと言う。
「ミスティアはあの笑い声を含めて彼女の魅力なんだね。
本当に女神達の楽しいひとときを盗み見てしまって申し訳ない。」
姉を女神と称する人はたくさんいる。単純だけど、それだけで何となく呆れて何も言えなくなってしまった。
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