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誤解です
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ステインに来て初めての夜会が迫っていた。公爵は、その地位を保てなくとも良かったが、リディアでは疎ましがられていた能力を喜んでもらえたことが嬉しくてあれもこれもと協力していたら、陛下に目をつけられ公爵を賜ったのだった。
貴族を大量に粛清した分爵位には困らない。同じように侯爵、伯爵もリディアと同じ爵位に落ち着いた。
夜会では主に新しく来たご令嬢方の婚約などに注目されていた。さすがと言うべきか、既にベアトリスとアリーチェには相手がいることも、ローゼリアには陛下から王妃への打診があったことも広まっており、腹の探り合いになることが予想された。
「まあ、茶会の時みたいにならなければ良いわ。」
「新しいお友達できるかしら。」
ベアトリスも、アリーチェも相手から贈られた彼の色をその身に纏っていて、言葉を尽くせないほどに美しい。
「普段とのギャップって恐ろしいわね。」
「それはお互い様だと思うわ。」
どちらも、好きな人に愛されるのは初めての体験で、幸せなのが、見て取れる。二人とも勿論馬鹿王子の隣でも、美しくはあったが、心を伴う美しさとは比べ物にはならない。
ローゼリアは兄の視線を受け止める。兄はこう思ってる。どうして、うちのローゼリアはこんなに可愛いのに、相手がいないのだろう。最初にあんな変な相手を押し付けたから、基準がおかしくなってしまったのかもしれない。これは、俺が間に立ち、良い相手を見つけてやらないと。
兄が何かやらかす時はすぐにわかる。何故か急にソワソワして、「お兄ちゃんに任せなさい。」と言う。いや、貴方に任せてよかったことなど、ありませんから!
「ケイシー、お願い。」
実の兄より頼りになる男に、兄のお守りを頼む。やはり、ガハハと笑いながら、兄に何かを言い聞かせていた。兄は最初は反抗していたが、話しているうちに落ち着いたみたいだ。
兄は悪い人ではないのだが、少し暴走しがちだから、ちゃんと見守っていなきゃいけない。違う意味で、目の離せない人だ。
ケイシーは、いつもの護衛の時とは、装いが異なるため、不思議な感覚が訪れる。
騎士の分厚い身体に、夜会服はよく似合っている。特に合わせたわけではないのだが、こうして見ると、彼の瞳の色と、今日のドレスの色は似てるかもしれない。
案の定、そう言う目で、こちらを見て微笑ましい顔をなされている方が何人かいるようで、話したこともないと言うのに、その方全員に誤解です、と言って回りたいぐらいだった。
彼はいつもなら絶対に気がつかないくせに、こんな時だけ、勘が良く、ローゼリアのドレスに上機嫌だと思ったら、大きな声で口にする。
「ローゼリアのドレス、俺の瞳の色だな。ようやく観念したか。とても似合っている。」
「違います。今気づいたの。だけど、貴方の瞳の色だからこれを選んだんじゃないわ。偶々よ、偶々。」
「いや、これは一緒に選んだだろう。その時から俺はそのつもりだったぞ。」
「一緒に、って?誤解を招くことは言わないで。家族で買いに行って護衛をしてくれただけでしょう。」
「いや、あれはそう言うつもりで連れて行ってくれたと思っていたよ?」
私達の言い争いをベアトリスやアリーチェまでもが、生温かい目で見ていた。
そこ、そんな目で見ないで!誤解なんだから!
貴族を大量に粛清した分爵位には困らない。同じように侯爵、伯爵もリディアと同じ爵位に落ち着いた。
夜会では主に新しく来たご令嬢方の婚約などに注目されていた。さすがと言うべきか、既にベアトリスとアリーチェには相手がいることも、ローゼリアには陛下から王妃への打診があったことも広まっており、腹の探り合いになることが予想された。
「まあ、茶会の時みたいにならなければ良いわ。」
「新しいお友達できるかしら。」
ベアトリスも、アリーチェも相手から贈られた彼の色をその身に纏っていて、言葉を尽くせないほどに美しい。
「普段とのギャップって恐ろしいわね。」
「それはお互い様だと思うわ。」
どちらも、好きな人に愛されるのは初めての体験で、幸せなのが、見て取れる。二人とも勿論馬鹿王子の隣でも、美しくはあったが、心を伴う美しさとは比べ物にはならない。
ローゼリアは兄の視線を受け止める。兄はこう思ってる。どうして、うちのローゼリアはこんなに可愛いのに、相手がいないのだろう。最初にあんな変な相手を押し付けたから、基準がおかしくなってしまったのかもしれない。これは、俺が間に立ち、良い相手を見つけてやらないと。
兄が何かやらかす時はすぐにわかる。何故か急にソワソワして、「お兄ちゃんに任せなさい。」と言う。いや、貴方に任せてよかったことなど、ありませんから!
「ケイシー、お願い。」
実の兄より頼りになる男に、兄のお守りを頼む。やはり、ガハハと笑いながら、兄に何かを言い聞かせていた。兄は最初は反抗していたが、話しているうちに落ち着いたみたいだ。
兄は悪い人ではないのだが、少し暴走しがちだから、ちゃんと見守っていなきゃいけない。違う意味で、目の離せない人だ。
ケイシーは、いつもの護衛の時とは、装いが異なるため、不思議な感覚が訪れる。
騎士の分厚い身体に、夜会服はよく似合っている。特に合わせたわけではないのだが、こうして見ると、彼の瞳の色と、今日のドレスの色は似てるかもしれない。
案の定、そう言う目で、こちらを見て微笑ましい顔をなされている方が何人かいるようで、話したこともないと言うのに、その方全員に誤解です、と言って回りたいぐらいだった。
彼はいつもなら絶対に気がつかないくせに、こんな時だけ、勘が良く、ローゼリアのドレスに上機嫌だと思ったら、大きな声で口にする。
「ローゼリアのドレス、俺の瞳の色だな。ようやく観念したか。とても似合っている。」
「違います。今気づいたの。だけど、貴方の瞳の色だからこれを選んだんじゃないわ。偶々よ、偶々。」
「いや、これは一緒に選んだだろう。その時から俺はそのつもりだったぞ。」
「一緒に、って?誤解を招くことは言わないで。家族で買いに行って護衛をしてくれただけでしょう。」
「いや、あれはそう言うつもりで連れて行ってくれたと思っていたよ?」
私達の言い争いをベアトリスやアリーチェまでもが、生温かい目で見ていた。
そこ、そんな目で見ないで!誤解なんだから!
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