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残念ながら

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「キツイ……キツ過ぎる。」
小国から来たお嬢様の頼みを聞くこと、それがお前たちの罰だと言われた時に、察するべきだった。

魔術やら魔法やらとは縁のない国で、育ったお嬢様は、この国の民であれば当然知っている常識を知らない。例えば魔術を、かけた時、その範囲がどれだけか、効果はいつまで続くのか、かかるのに必要な条件など。知ることはない。知ったところで、教えてくれた人が味方かどうかも分からず効果を確かめようとするだろう。

ローゼリアは一緒に来たご令嬢の中で一番見た目と中身の乖離が激しいタイプだった。

身分により婚約者候補に選ばれてからも、ローゼリアは他二人のようにサクサクと仕事をこなすことは難しかった。できないことは少しずつ一歩ずつ、できるようになるまでただひたすら努力する。

努力することが好きではないが、しなければ置いていかれるだけだし、やるしかない、とわかっていた。ローゼリアに至っては、努力は誰でも出来、できない場合は、やる気がないだけだと言うのが、持論だ。

彼女の考えでは、罪を犯した罪人が処刑を回避する為に、必死で働くのは当然であり、出来ないのは、処刑されてもおかしくない。寧ろ、処刑されたいのだと理解した。

ローゼリアの興味はステインの影となるにはどの程度であればできるのかだった。

「何だか、口程にもない奴らですね。あれが本当に大国ステインの特殊部隊なんですか?」

ローゼリアの護衛達の足元にも及ばない彼らに期待はずれ感は否めない。

「その筈なんだけどね。」
「やはり愚かな事を企てる性根の腐った奴等ですから。大した功績もないようですし。」

「そのようね。」
ローゼリアは、用意した資料に目をやり、これからのことを考える。

「どう言う使い道があるか考えていたのだけれど。特に難しいことは出来なさそうだし、この程度なら、普通の仕事すらできるかはわからないわね。」

散々な言われように思うことはあれど、先程までのことで、彼らに何かをいうことはなかった。余計な口を挟めば、どのようなことに巻き込まれるかわからなかった。

彼らの言う普通の仕事とは?

知らなくて良い仕事なんじゃないだろうか。彼らは実際特殊部隊では、ペーペーの、新人と呼ばれるレベルの者が多く、影の一員に間違ってなってしまったことで、まい上がってしまった人達だった。

凡人に毛が生えた程度の新人に誰かが悪知恵を、植え付けた。その犯人は今はもうどこかに潜んでしまっているかもしれないし、どこかで彼らを見ているのかもしれない。

話を聞いてみると、誰かに直接唆されたわけではないらしい。彼らからの火の粉を被らないようにあたかも、彼らが自分自身でその答えに行き着いたように細工をされている。このままでは彼らは利用されただけ。

それは悔しかろうと、彼らを囮に元凶を炙り出したいのだが、ローゼリアは自信がなくなっていく。

「彼らに使い途なんて、ないわよね。」
悪いことをしないように監視して、普通の平民として生き直す以外ないだろう。罰を与えなくてはならないなら、危険な場所に兵士として派遣するぐらい。

生き残れるとは、思えないけれど。

「彼らは知らないのよね、きっと。誰が自分達を陥れたのか。」
「はい。そのようです。まあ、知らない方が良いことなんて、世の中にはたくさんありますよ。」

ローゼリアと護衛の不穏な会話を、他の誰かが聞くことはなかった。

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