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新しい扉
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何だかアリーチェに勝手に賭けの対象にされているローゼリアとベアトリスだが、ベアトリスは初めての恋に四苦八苦してるし、ローゼリアはローゼリアでやりたいことが沢山あって正直恋愛どころではない。
国を出てからも貴族で居続けられるように、手を回してくれた人がいたことも知っているが、リディアを出た頃から、自分が貴族でいる必要を感じなくなっていることも事実。
ここに来て、留まっている時間すら惜しいのに、何をしていいかわからなくなってきた。
国からずっと付いてくれている護衛が、心配そうにローゼリアを見ている。けれど、彼らに気を許してはならない。何故なら、私は知っているからだ。彼らこそがアリーチェに賭けの内容を提案したのだということを!
彼らは私を、いつもはお嬢様、と慕う姿を見せて手懐けた愚かな女を、アリーチェに売ったのだ。いや、彼らは騙されただけなのかもしれない。アリーチェは私を心配する彼らの純粋な心を利用しただけなのかも。
国王となった元第二王子は、ローゼリアに婚姻の打診をしたものの、断られるのがわかっていたようで、ちっとも残念ではなさそうに「残念だ」と言った。
彼を恋愛対象には見れないが、タイプとしてはローゼリアは悪くないと思っている。腹黒さは隠しきれないようだが、求めているものはわかりやすく、エリオスのように花畑ではない。エリオスに比べると皆彼よりマシという分類になってしまう分、あまり意味はないが。
その昔、ローゼリアは王妃様から、貴女の強みは、集中力と鼻が利くことだと言われたことがある。
胡散臭い人なんかをすぐに見つけて、エリオスの周りから排除するために、とても役に立つと。確かに、ローゼリアは野生の勘に近い直感で、数々の危機を回避したことがある。だが、王妃様にはあの頃言えなかったことは、貴女の息子が一番の危機ですよ、ということ。いつの日か、国を潰すだろうとは思っていた。だが、それは言えなかった。それを言えば、自分達がより厳しい勉強をしなければならないとわかっていた。
やらされた勉強から脱して、新しく自分がやりたい勉強ができることは、至福だ。
「ねえ、もし私が貴族をやめたら、どう思う?」
「そうねえ、スカウトするかな?一緒に働きませんか、って。ローゼリアなら見た目は可愛いし、頭もいいし、何より一緒に働いて楽しい、ってもうわかってるもの。」
アリーチェはいつも、欲しい言葉をくれる。
「一緒に働いてくれるの?」
「ええ。平民の生活をレポートして頂戴ね。マーケティングってやつね。身近な人にお願いできるなら安心だし、貴女の作成した資料なら、私の添削は必要ないでしょう。楽でいいわ。……というか、ローゼリアなら新しいビジネスも模索できるかもしれないわね。本当に来る気はない?サポートするわよ?」
アリーチェの顔がみるみる変わって、まるで決定事項のように、話が進んでいく。
「待って、待って。例えばの話よ。」
慌てて止めると、アリーチェもわかってるわ、と言うが、明らかに目が変わっていた。
ローゼリアは少し安心している自分に気が付いた。
自分の進路はこれから決めるが失敗したとしても雇い入れてくれる仲間がいる。賭けは成り立たないかもしれないがいつでも失敗できるのだから、怯えてないで飛び込んでみよう。
ローゼリアは大きく深く深呼吸をした後、扉を叩いた。
国を出てからも貴族で居続けられるように、手を回してくれた人がいたことも知っているが、リディアを出た頃から、自分が貴族でいる必要を感じなくなっていることも事実。
ここに来て、留まっている時間すら惜しいのに、何をしていいかわからなくなってきた。
国からずっと付いてくれている護衛が、心配そうにローゼリアを見ている。けれど、彼らに気を許してはならない。何故なら、私は知っているからだ。彼らこそがアリーチェに賭けの内容を提案したのだということを!
彼らは私を、いつもはお嬢様、と慕う姿を見せて手懐けた愚かな女を、アリーチェに売ったのだ。いや、彼らは騙されただけなのかもしれない。アリーチェは私を心配する彼らの純粋な心を利用しただけなのかも。
国王となった元第二王子は、ローゼリアに婚姻の打診をしたものの、断られるのがわかっていたようで、ちっとも残念ではなさそうに「残念だ」と言った。
彼を恋愛対象には見れないが、タイプとしてはローゼリアは悪くないと思っている。腹黒さは隠しきれないようだが、求めているものはわかりやすく、エリオスのように花畑ではない。エリオスに比べると皆彼よりマシという分類になってしまう分、あまり意味はないが。
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胡散臭い人なんかをすぐに見つけて、エリオスの周りから排除するために、とても役に立つと。確かに、ローゼリアは野生の勘に近い直感で、数々の危機を回避したことがある。だが、王妃様にはあの頃言えなかったことは、貴女の息子が一番の危機ですよ、ということ。いつの日か、国を潰すだろうとは思っていた。だが、それは言えなかった。それを言えば、自分達がより厳しい勉強をしなければならないとわかっていた。
やらされた勉強から脱して、新しく自分がやりたい勉強ができることは、至福だ。
「ねえ、もし私が貴族をやめたら、どう思う?」
「そうねえ、スカウトするかな?一緒に働きませんか、って。ローゼリアなら見た目は可愛いし、頭もいいし、何より一緒に働いて楽しい、ってもうわかってるもの。」
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「一緒に働いてくれるの?」
「ええ。平民の生活をレポートして頂戴ね。マーケティングってやつね。身近な人にお願いできるなら安心だし、貴女の作成した資料なら、私の添削は必要ないでしょう。楽でいいわ。……というか、ローゼリアなら新しいビジネスも模索できるかもしれないわね。本当に来る気はない?サポートするわよ?」
アリーチェの顔がみるみる変わって、まるで決定事項のように、話が進んでいく。
「待って、待って。例えばの話よ。」
慌てて止めると、アリーチェもわかってるわ、と言うが、明らかに目が変わっていた。
ローゼリアは少し安心している自分に気が付いた。
自分の進路はこれから決めるが失敗したとしても雇い入れてくれる仲間がいる。賭けは成り立たないかもしれないがいつでも失敗できるのだから、怯えてないで飛び込んでみよう。
ローゼリアは大きく深く深呼吸をした後、扉を叩いた。
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