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王妃の回復

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王妃様の容体が回復に向かったのはひとえに、クリスのおかげだ。元々はリディアと言う小国の神の加護を勝手に奪うために開発された魔道具を個人の趣味の範囲で勝手に作っていたところ、偶々アリーチェの紹介でリディアの王妃の侍医に認められ、使われたと言う筋書きだ。

ツッコミどころ満載だと、誰でも思うのだが、余計なことには目を瞑ることにしたらしい。どう言う仕組みかはわからないものの、王妃が無事なら言うことはないらしく、王はご満悦な様子で、王妃も背に腹はかえられぬ、と覚悟を決めたようだ。

ステインの名を出すと、警戒されてしまうので、専門家の伝手で、と言葉を濁すも、愚王らしく、話は通ってしまった。

王妃が目覚めたことから、早速泣き付きに向かった王子は、しっぺ返しを食らって、国に居場所がなくなってしまった。

そして、ジョセフィーヌをつれて、ステインまでいこうとした途中で捕まったと言う。ひたすらに、駄々をこねる王子を捕まえたのがクリスだと言うのだから、笑ってしまう。

リディア側の人間ならば、まだ助かったかもしれないが。

「そういえば、王子とハインツ様は面識はあったかしら。」

「幼い頃はあったと思うわ。ただ、ヘンドリック様の顔も覚えていないのなら、会ってもわからないかもしれないわね。」


「とりあえず、捕まえた二人は別々の離れた場所に閉じ込めている。女性の方は国を離れた時点で平民になっているようだから、普通に牢に入れてもいいんだけどね。君達の意見を聞きたいね。」

「そうねぇ。少し考えていることがあるから、別々で監視しておいてほしいけれど、牢に入れるかは任せるわ。客人ではないのだし、犯罪は犯したのだし、ね。」

「いずれこちら側から祖国に戻すのだから、できれば、二人の婚姻は確実に、けれど幸せにはなれない、と言う感じで行きたいのよね。」

アリーチェの発言に引っ張られるように、ローゼリアも言いたいことを言うようになってきた。ベアトリスは、ずっと一緒にいた彼女達に戦友のような感情を持っていたから、単純に嬉しくなる。

「そうね。真実の愛を貫く為に必要な別離の時間を設けましょう。……実際問題、どちらが崩れやすいと思う?」

「どちらも、どちらよ。二人とも知能が仲良く同じぐらいでしょう?きっと考えることも似たり寄ったりだし、タイミングも似通う気がするわ。でもそうね、王子様の元には私達が行って話を聞いてみるわ。それで私の護衛の一人を彼女の方につけるわ。多分面白いことが起きるんじゃないかしら。」

三人の思惑通り、元男爵令嬢については、アリーチェの護衛についていた若者を、誑かし、外に出ようとするも失敗したらしい。

「一人で逃げて、行けるところなんて限られているでしょうに。」
「私達とは違い、か弱い風を装うのだから、男性の庇護欲を掻き立てさえすれば、生きていけると踏んだのかもしれないわ。割り切った関係ね。」
「その強かさがあれば、王妃にもなれる逸材ではあったのかもね。相手があのバカでなければ。」

ただ助けを求めて何もしない王子よりも、自分の武器を磨いて、仕掛けられる女性は強いと、素直に称賛する。

迷惑をかけられているから、全く何もなし、とはならないが、忘れてはいけない。彼女には私達の代わりに王家にその身を捧げてもらうと言う大役が授けられているのだ。彼女がのぞまなくても、帰ってもらうより他ない。

王妃様宛に手紙をしたためる。国王陛下の弱みを最大限に利用させて貰おう。
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