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責任は

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女神の加護が、一人で抱えきれないものとなってから、何も対策をしてこなかったわけではない。妃を増やし、単純に数を増やすことで、一人の負担を減らすことの他に、一時的に力を貯めておける、本人の負担を抑える道具を作るための開発が行われていた。

とは言え、この国では魔法やら加護やらはすっかり廃れてしまって、いまでは伝説や民話の中にしか出てこない。

周辺諸国にも、もはや神に見放された国が多く存在するおかげで、それこそが主流であると思われたままだ。

だから、責任を問えば、回り回ってこの異常事態を放置した王様にたどり着く。未だに目覚めない王妃を前に苛立ちを隠せないのは、その国王陛下だった。彼はいつも、怒るだけで、対処してくれるのは別の人。今倒れている王妃しかり、後継者となり得る甥を易々と他国に取られ不機嫌な宰相しかり、王宮で働く薬師ながら、甥という立場を利用され王妃の面倒を見ている男しかり。

王様は、王子が、婚約者を律することができなかったことが一番の原因であると考え、王子は逃した彼女達が全て悪いと考える。

愚か者の思考はわからないが、責任をとる地位にいながら、人に責任を擦りつけるところも、この場にいない人物に責任があり、自分にはないと思い込んでいるところも、親子だなぁ、と言うしかない。

今まで、彼女達のおかげで楽をしていたのに、労ったり、感謝していないことが不思議だった。

「父上、ヘンドリックは、王位を簒奪しようとしています。自分が母上を治せない無能であることを、人のせいにするのですから。」

国王にとって大切なのは、王妃と自分でしかない。だが、二人の愛の結晶である王子のことは何の興味も持っていない。王妃が可愛がるのなら、一緒に話したりすることはあっても、いないのなら、興味が湧くわけもなく、自分の息子よりも、王妃の面倒を見てくれる甥の方が、信頼しているぐらいだった。

そして、そのことに王子は気がついていない。王妃と共に親であるのだから、自分は絶対的な権力者の父に愛されている、と思い込んでいた。だから、彼が庇うのは息子の自分であって、ヘンドリックではないと、思っていたのに。

「お前に王位を譲るのは、考え直すことにした。第二王子が成長するまで働くか、一時的に後見をヘンドリックに頼んでもいいな。

お前が、女神の加護を引き受ける娘でも連れてこればまだお前を推薦できたのだが、こうなっては仕方がない。

お前はあの女狐に騙されたのだから、被害者とも言えるが、安易に騙されるようでは王太子の座は重荷になろう。ジョセフィーヌと言ったか、あの女と一緒になりたければ好きにすれば良い。男爵家に婿入りするもよし、平民になるも良し。ただ王家に残りたいのなら、あれは愛妾しか許さぬ。

新しい王妃候補は、身持ちの堅いのを選ぶんだな。側妃も、同じだ。お前は、碌な女を選ばんな。誰に似たのか……」

この国で、開発された道具の一つに、一定期間、加護の力を溜めて、負担を軽くするものがあるのだが、それを着ける人物も、また限られてくるのは、加護の力について理解が及んでいないということかもしれない。

今のところまだ側妃候補の立場であるオーブリー嬢に道具を装着したところ、すぐに意識が混沌としてしまったため、彼女も器としてはあまり役に立たないことが判明した。念のため、愛妾と決まっていた二人の子爵令嬢に渡したところ、体は思うように動かないものの、意識を飛ばす程ではないとのことで、道具を装着できる要員としては彼女達は役に立ちそうだ。

その結果を踏まえると、完全にいらない子になったのは、王子と真実の愛の相手、オーブリー嬢の三人になった。

それなら、彼らに責任を取ってもらうのが、一番ではないか?

との思考から、満場一致で、王子達には仕事が与えられた。勿論、王妃様の仕事の一部である。

「やらなければ、廃嫡だ」と王が言えば、こちらをずっと睨みつけていた王子の目の色が変わった。

教育係から強制的に連れてこられた、ジョセフィーヌ嬢は唇を噛んで必死に何かを考えていたが、開き直ったように何か叫んだ。

「新しく王妃候補になってくださる方なんていらっしゃいません。だって本当の真実の愛は、私にエリオス様を譲って下さったご令嬢達ですもの。傷心の中、去って行ったあの方達を呼び寄せるのはどうでしょう。」

「ふむ……それは魅力的な誘いだな。」

ヘンドリックは何の茶番かと耳を疑ったが、意外にも陛下は乗り気に見える。

「そんなことできるわけないでしょう。陛下、彼女はすでにステイン公国についております。戦争になりますよ。」


ステイン公国ときいて、陛下の顔から笑みが消えた。



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