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唐突なお茶会

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ステイン公国では、女性も家の別なく、色々な仕事に就くことができる。ローゼリアが調べたところ、他国でも国によっては仕事に就くことはできるが、それはとても限られた世界だった。例えば家固有の専門職などがそれに当たる。一子相伝のため、子が女の子であっても、引き継がなくてはならない、などの制限があった。

ただし、ステインではそれがない。勿論あまりにも危険であったり、体力勝負なものなどは、成り手がなかったりするが、基本は何にでも従事することが可能だ。

新しい国のことを知りたいとは思っていたが、着いた早々、茶会の案内が届いた際は流石に慌てた。

こちらを歓迎するための集まりであることは、卿から聞いていた。表向きはこちらの歓迎及び、貴族との顔見せをする為に。裏向きは、唯一残った第二王子の婚約者を選ぶことだと。

集まった女性達の中には明らかに敵意剥き出しのご令嬢が何人かおり、その雰囲気に懐かしさを感じてしまう。

もう、今更同じ轍を踏もうとはしないため、安心してもらいたい。とは言え彼女達にはこちらの思惑など伝わらないのだから、仕方ないことだけど。

アリーチェの調べによると、彼女達は今まで虐げられていた派閥の人達で、今は主流だった人達が粛清されたことで、日の目を見たのだった。

筆頭公爵家のキルステアを中心とする第一王子派がいなくなっただけでも大きいのに、第三王女を旗頭に立ち上がろうとした残滓まで第二王子派に完膚なきまでに潰されてしまった。第二王子派の中の裏切り者達は最初の粛清で既に処分済みで、第二王子が仕組んだことと言えど、うまくいきすぎだと、本人が疑うほどにうまくいっていた。

残ったご令嬢達が狙うは、第二王子と、その側近の婚約者の座だが、新しく突如現れたローゼリア達に、危機感を覚えるのは当然のことだ。

この中で一番の高位貴族は、ハンプ公爵家のご令嬢、イザベラ様。彼女は騎士の家系にふさわしく、令嬢でありながら本人も騎士であると言う。体格が良く、背も高い。彼女は警戒しているものの、殺意などは感じないし、どちらかというと興味や、好奇心といったものが多そうに感じられる。

アリーチェも、女性であり、騎士であると言う彼女に話しかけたいらしく、吸い込まれるように彼女に纏わりついて行ってしまった。残されたベアトリスと、ローゼリアは、お互いに割り当てられた屋敷での過ごし方などを話したり、会場を見渡してみたりしてみる。敵意をむき出しにしてはいても、こちらに近づくような人はいない。遠くからずっと観察されている。

「ものすごい珍獣になったみたいな気分ね。」

「あの時みたいではありません?ほら、第一王子の婚約者候補として、一気に三人紹介された、あの夜会。」

「ああ、あの悪意の塊みたいな婚約者候補発表ね。」

「同情なされていたご令嬢の中にも悪意を隠そうともしない方がちらほらいらっしゃいましたもの。あれは、何だったのかしら。今でも不可解だわ。」

候補から外されたご令嬢達から感じる薄い嫉妬のような負の感情を、彼女らは浴び続けて来ている。それは国が変わったところで同様らしい。

アリーチェと、イザベラ嬢が楽しそうに話しているのを見て、私達の気持ちに余裕が生まれたのは確かだ。少なくとも一人は味方になる可能性を秘めている。

後は……と考えてさっきから鋭い目つきで睨んでいるご令嬢の一人がこちらに向かってくるのを確認する。狙いはどちらだろう。ベアトリス嬢を守るのは、候補になってからずっとしてきた習慣のようなもの。側妃よりも大切な存在なのは、王妃だから。

彼女が近くに来ると、怒っていたように見えた顔は何故か感動したような顔に見え、ベアトリス嬢の前に綺麗な挨拶をして見せた。

意外ではあったが、彼女も亡命組だったと言う。私は因みに彼女を知らない。ただ、ベアトリス嬢はご存知であったようで、目を丸くしていた。

亡命してから彼女は、この国の貴族の養女となり、今では侯爵令嬢である。彼女が逃げてきたタイミングを聞くと、ハインツ様と同じだと言う。彼女はハインツ様が連れてきた唯一の人だったらしい。

私はこの話を彼女が、ベアトリス嬢にすることに悪意を感じるが、ベアトリスはそれどころじゃない様子だった。

彼女は、ニヤニヤした笑みを隠せていなかったが、そんなぐらいで、勝ったとは思わせないわよ?

ローゼリアはこの国で、できることを見つけた。

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