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次期王太子
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「ジョセフィーヌ・シバリエ、ここへ呼ばれたのは何故かわかるか。」
エリオスが側にいると話がややこしくなると、王妃教育だと王子には伝えて本人にだけ来てもらった。
王妃の体調が優れぬ今、公務を陛下ができる筈もなく、何故かヘンドリックが駆り出されている。おかげで、次期王太子にヘンドリックの名があがったりしている。良い迷惑だ。
シバリエ嬢が力を受ける器がないため、側妃になれないことを伝えなきゃならないが、王子がいると、内容が内容だけに、大騒ぎになる必要があり、それを回避したいためだ。彼女に納得して貰えたらそれで良い。本来なら王族を騙そうとしたのだから、不敬であってもおかしくはない。それを罪に問わずに、済ませようというのだから、感謝してほしいぐらいだ。
シバリエ嬢は、王子の姿を探していたが、来ないことを伝えると、今度はこちらにしっかりと向き直る。
「側妃の件ですか?やっぱり無理でしたか。ベアトリス様がいらっしゃった時にねじ込んでいただいたのですが、私の身分では愛妾がいいところだと、言われましたので。」
「今回は身分が理由ではない。詳しいことは話せないが、誰でも側妃になれるわけではないんだ。資質は必要だ。」
「私にはそれがないと?」
「ああ。ただその条件とやらは、王子に教えていないから、知らないのも無理はない。そもそもまだ立太子もしてないうちから妃を探すと言うのがおかしいのだから。」
「わかりました。それではその資質があれば、今の私でも側妃になれるのですね。」
「いや、君はもうなれない。君は持っていないんじゃなくて、失ってしまったんだ。だから、これから君がどれだけ頑張っても、エリオスの愛妾にしかなれないし、もしかしたら、エリオスが立太子することも、ないかもしれない。」
シバリエ嬢は、失ってしまったの言葉を聞くころから、顔色が青白くなっていった。
「エリオス様以外でしたら、第二王子ですか?まだあんなに幼いのに。」
「彼が大人になるまでの間、誰かが後見になれば良い、という案もある。エリオスの立太子は優秀な妃候補によるところが大きかった。君が、辞退した三候補以上の優秀さだったら文句はないが、試験を受ける以前の話だからな。申し訳ないが、君を王族に受け入れることはないよ。まあ、このままだと、エリオスも同じ道を辿るだろうから、真実の愛は貫けると約束しよう。おめでとう。お幸せに。」
男爵令嬢に話をしている最中に気がついたこと。それはエリオスを見捨てる、ということ。それなら、女神の加護を持てる王妃を今から探せるし、第一王子に生じた副作用も回避できる。問題は彼が成長するまでの、後見を誰にするか。第二王子が成長したら、ちゃんと退けて、彼を傀儡に育てない、人。
良い考えだと思ったのに、当てはまる人がいないことに気がつく。
いや、いるか。ベアトリス嬢ら三候補は国を出たが、その親戚筋ならもしかすると、優秀な人物が隠れているかもしれない。
最後の希望である第二王子の後見となる人だから、少しでも危険な可能性のない人を選ばなくてはならない。
もし見つからなければ、自分の身に面倒事が降ってくるのだと、死に物狂いで探した結果、候補は三人見つかった。
第二王子との顔合わせの件と、陛下と宰相に話をつける。エリオス不在のまま、話は進んでいくが、陛下からは何の反対もない。
宰相も、腰痛から最近復帰し、仕事に追われていたが、ヘンドリックの提案には賛成の意を示し、寧ろ早く手伝ってほしい、と言った様子だ。
「ではエリオスは臣籍に降ろすということで。」
陛下から話をつけてもらうことを話してそこはお開きになった。
ベアトリス嬢らを逃した時点でこうなることは予想できた筈だ。
側妃候補として、王宮に住んでいたオーブリー嬢にも、その旨を伝えて、出て行って貰うように話す。彼女は器として適正はあったがそれだけだ。怠け癖があり、手癖も悪い。世話を頼んだ侍女達から苦情が相次いでいた。
実家の伯爵家もまだ存在するし、引き取って貰おうとしたが、既にエリオスのところに嫁に出したので、エリオス様に引き取って貰いたいとのこと。彼女のことも、エリオスに要相談と言うことになった。
愛妾候補の二人もいるが、公爵位だと、側室どころか愛妾なんて持てないのに、どうするつもりだろうか。
気に病んでいると、宰相から、気にする必要はない、と声をかけられる。
確かに私にはどうすることもできないのだけど。
王妃教育を終えたジョセフィーヌの顔色の悪さをエリオスは、不思議に思う。ベアトリスらはいつも余裕そうな顔で過ごしていたから。
はじめてのことで疲れがでたのか、と寄り添うと、ジョセフィーヌは大きな瞳いっぱいに涙を溜めて、エリオスに抱きついた。
エリオスはジョセフィーヌの積極性が好きだった。弾力のある体に、意識が向きそうになるが、ここは話を聞いてあげねばなるまい。
「エリオス様、ヘンドリック様に嫌われておりますの?」
「ヘンドリック?何故、奴の名が?」
「先程、王妃教育だと呼ばれた先にいらっしゃったのです。彼は私に側妃にはなれないことと、貴方が立太子できないかもしれない、と言い、第二王子の後見を決める、と言いました。どうして、エリオス様が立太子できないのでしょうか。」
「ヘンドリック……ただの侍医の癖して。いや、大丈夫だ。奴にそんな権限はない。謀反を起こす気だな。大丈夫。私に任せてくれ。君を絶対に妃……いや、王妃にしてみせる。」
エリオスは力の限りにジョセフィーヌを抱きしめた。
エリオスが側にいると話がややこしくなると、王妃教育だと王子には伝えて本人にだけ来てもらった。
王妃の体調が優れぬ今、公務を陛下ができる筈もなく、何故かヘンドリックが駆り出されている。おかげで、次期王太子にヘンドリックの名があがったりしている。良い迷惑だ。
シバリエ嬢が力を受ける器がないため、側妃になれないことを伝えなきゃならないが、王子がいると、内容が内容だけに、大騒ぎになる必要があり、それを回避したいためだ。彼女に納得して貰えたらそれで良い。本来なら王族を騙そうとしたのだから、不敬であってもおかしくはない。それを罪に問わずに、済ませようというのだから、感謝してほしいぐらいだ。
シバリエ嬢は、王子の姿を探していたが、来ないことを伝えると、今度はこちらにしっかりと向き直る。
「側妃の件ですか?やっぱり無理でしたか。ベアトリス様がいらっしゃった時にねじ込んでいただいたのですが、私の身分では愛妾がいいところだと、言われましたので。」
「今回は身分が理由ではない。詳しいことは話せないが、誰でも側妃になれるわけではないんだ。資質は必要だ。」
「私にはそれがないと?」
「ああ。ただその条件とやらは、王子に教えていないから、知らないのも無理はない。そもそもまだ立太子もしてないうちから妃を探すと言うのがおかしいのだから。」
「わかりました。それではその資質があれば、今の私でも側妃になれるのですね。」
「いや、君はもうなれない。君は持っていないんじゃなくて、失ってしまったんだ。だから、これから君がどれだけ頑張っても、エリオスの愛妾にしかなれないし、もしかしたら、エリオスが立太子することも、ないかもしれない。」
シバリエ嬢は、失ってしまったの言葉を聞くころから、顔色が青白くなっていった。
「エリオス様以外でしたら、第二王子ですか?まだあんなに幼いのに。」
「彼が大人になるまでの間、誰かが後見になれば良い、という案もある。エリオスの立太子は優秀な妃候補によるところが大きかった。君が、辞退した三候補以上の優秀さだったら文句はないが、試験を受ける以前の話だからな。申し訳ないが、君を王族に受け入れることはないよ。まあ、このままだと、エリオスも同じ道を辿るだろうから、真実の愛は貫けると約束しよう。おめでとう。お幸せに。」
男爵令嬢に話をしている最中に気がついたこと。それはエリオスを見捨てる、ということ。それなら、女神の加護を持てる王妃を今から探せるし、第一王子に生じた副作用も回避できる。問題は彼が成長するまでの、後見を誰にするか。第二王子が成長したら、ちゃんと退けて、彼を傀儡に育てない、人。
良い考えだと思ったのに、当てはまる人がいないことに気がつく。
いや、いるか。ベアトリス嬢ら三候補は国を出たが、その親戚筋ならもしかすると、優秀な人物が隠れているかもしれない。
最後の希望である第二王子の後見となる人だから、少しでも危険な可能性のない人を選ばなくてはならない。
もし見つからなければ、自分の身に面倒事が降ってくるのだと、死に物狂いで探した結果、候補は三人見つかった。
第二王子との顔合わせの件と、陛下と宰相に話をつける。エリオス不在のまま、話は進んでいくが、陛下からは何の反対もない。
宰相も、腰痛から最近復帰し、仕事に追われていたが、ヘンドリックの提案には賛成の意を示し、寧ろ早く手伝ってほしい、と言った様子だ。
「ではエリオスは臣籍に降ろすということで。」
陛下から話をつけてもらうことを話してそこはお開きになった。
ベアトリス嬢らを逃した時点でこうなることは予想できた筈だ。
側妃候補として、王宮に住んでいたオーブリー嬢にも、その旨を伝えて、出て行って貰うように話す。彼女は器として適正はあったがそれだけだ。怠け癖があり、手癖も悪い。世話を頼んだ侍女達から苦情が相次いでいた。
実家の伯爵家もまだ存在するし、引き取って貰おうとしたが、既にエリオスのところに嫁に出したので、エリオス様に引き取って貰いたいとのこと。彼女のことも、エリオスに要相談と言うことになった。
愛妾候補の二人もいるが、公爵位だと、側室どころか愛妾なんて持てないのに、どうするつもりだろうか。
気に病んでいると、宰相から、気にする必要はない、と声をかけられる。
確かに私にはどうすることもできないのだけど。
王妃教育を終えたジョセフィーヌの顔色の悪さをエリオスは、不思議に思う。ベアトリスらはいつも余裕そうな顔で過ごしていたから。
はじめてのことで疲れがでたのか、と寄り添うと、ジョセフィーヌは大きな瞳いっぱいに涙を溜めて、エリオスに抱きついた。
エリオスはジョセフィーヌの積極性が好きだった。弾力のある体に、意識が向きそうになるが、ここは話を聞いてあげねばなるまい。
「エリオス様、ヘンドリック様に嫌われておりますの?」
「ヘンドリック?何故、奴の名が?」
「先程、王妃教育だと呼ばれた先にいらっしゃったのです。彼は私に側妃にはなれないことと、貴方が立太子できないかもしれない、と言い、第二王子の後見を決める、と言いました。どうして、エリオス様が立太子できないのでしょうか。」
「ヘンドリック……ただの侍医の癖して。いや、大丈夫だ。奴にそんな権限はない。謀反を起こす気だな。大丈夫。私に任せてくれ。君を絶対に妃……いや、王妃にしてみせる。」
エリオスは力の限りにジョセフィーヌを抱きしめた。
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