逆ハーENDは封じられました

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本編

サイラスの憂い

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サイラスは一人座って考えていた。アーヴィンとアリシアはラブラブで、見ているこちらが照れるほどだが、本当にアリシアはこれまでの女性とは違うのだろうか。

サイラスはアーヴィンに突き返された懐中時計を見ながら、これを渡した時のアリシアの顔に浮かんだ表情を思い返してみる。

まあ、たしかに、サイラス本人に興味がある感じではない。ゲームの中に出てくるアイテムに心を奪われた様子ではあったか。

こちらがあれこれ考えたところで、ゲームの強制力がどう動くかを受け止めなければならないのは、わかっている。アリシアを含め、自分達の敵はこの世界そのものなのだから。

アリシアがアーヴィンを選んだおかげで、王子とその婚約者の顔が優しくなったり、各々の婚約者との間は良好だ。これは、婚約者のいないアーヴィンを選んだことにより起こる全員が幸せになる、ハッピーエンドだ。

逆ハーが誰も幸せにならないのだから、全くの反対を選んだら、この世界はどうなるのだろう。

それが見たい。

アリシアを疑うよりも、後押ししたいのは、誰もが、この結末に流されてみたい、と思っているからだ。

アーヴィンルートに入ると、婚約者はいないものの、アーヴィンのファンの人達から、些細な嫌がらせがあるはずだが、どれも今のところ回避できている。

ロビンが集まりにいなかったのは、平民である彼が、一番動きやすく情報を仕入れやすいからで、アリシアの周りを彷徨く者がいないか調査してもらっているのだが。

わかりやすい悪役がいないルートだからなのか、当てはまる人が多すぎて黒幕が掴めない。アリシア本人にはアーヴィンがついているから大丈夫だと思うが、何が起こるのかさっぱりわからない。

一番の心配は、こちらが策を巡らせて対処しようとしているのに、肝心の二人が平和そのものであることだ。

今だって、中庭で膝枕して、イチャイチャ している二人が見える。こちらからは見えるけれど、向こうからは建物の陰になって、こちらは見えない。

見られてる意識があれば、あんなにイチャつかないと思うから、危機感がないのはそのせいなんだろう。

毎日毎日イチャイチャ して、飽きないのかな?

長めのため息をつくと見ないフリをして、そっと離れる。

あの二人のために、自分がわざわざ動くのが不思議だ。けれど、案外気に入っているのだと思う。

図書館で、3人で話した時も、なんだかんだで楽しかったから。

思えばあの時もあいつらはイチャイチャ していたな。

手のかかる友人を持ったことに苦笑しながら、サイラスは決着をつけるために動き出した。
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