逆ハーENDは封じられました

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本編

キャベツ味のキス

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お昼休みになると、いつもアーヴィンと一緒に中庭に行ってご飯を食べている。食堂だとアーヴィン狙いのお姉様方からの視線が凄いからだ。アーヴィンが最近ずっと私を膝に乗せたがるから、アーヴィンの硬い膝に乗ってご飯を食べている。自分がまるで、とても幼くなったように感じる。

これは淑女として、どうなのかしら。父に叱られたりするのは嫌だわ。アーヴィンならいいのかしら。婚約者だしね。

うちの料理長に作ってもらったお弁当とアーヴィンの家の料理長の手作りのお弁当を食べ比べできるのは楽しい。どちらが美味しいとかはあまりなくて、どちらも美味しいのだが、さすが侯爵家と言うか、見たこともない食材が入っていることがある。その度に、これは何の食材かを聞いているので自分が凄い食通になった気がする。

一度アーヴィンに「あーん」で、ご飯をあげたら、もうそれでしかご飯を食べてくれなくなって、時間がかかるようになってしまった。ここが中庭でよかった。食堂でこれをやるには体力も精神力も足りない。

アーヴィンは私を甘やかしすぎる。私が手を繋ぎたいと思えば言わなくても手を繋いでくれる。私がキスしてほしいと思えば、キスをしてくれる。

私ってそんなにわかりやすいのかしら?それともタイミングがたまたま同じ?相思相愛ってこと?

「大丈夫か?顔赤い。」
まさか、自分が考えたワードに緊張してしまうなんて思わなかった。

「何でもない。」
「そうかー?」
体が大きいから仕方ないけれど、アーヴィンが覗き込んでくるときの顔がスチルになったこともあるからか、本当にかっこいい。何回見ても飽きないし、見惚れてしまうからゲーム会社の本気って言うか、今はアーヴィンの本気ね。

まあ、これで恥ずかしがってちゃ、ダメよね。

にやけるのだけは我慢しなくちゃいけないけど。多分顔が酷いから。

アーヴィンは私が黙ったのが合図だと思ったのか、顎を持ち上げると、キスをした。流れるようにキスをするのはさすがだけど、さっきまで食べていたキャベツ味のキスって言うのはいただけない。

何度かキスをすると、幻想なんて吹っ飛ぶけれど。キスの前には甘い物でも食べておくに限るわ。

「キャベツの味がするね。」
恥ずかしくて笑うと、アーヴィンが吹き出した。

「うん。美味しい。」
飴を私の口に放り込んでくれたと思ったら、また長めのキスをする。二人で飴舐めているみたい。苦しい、けど甘い、けど苦しい。

「甘い。」
「うん、甘すぎ。」

「美味しい。」


のんびりしている時間は貴重。アーヴィンのファンのお姉様方の視線を気にしなくていいから。

ゲームとは違うから、意地悪なことはされていない。とは言え、あまり刺激しない方が良いのだけれど。私は未だに、ゲームの強制力について否定はできていない。そう言うことはあるのかも、と思っている。はっきりとした悪役令嬢がアーヴィンにはいないだけで、いじめにはあうんだし。

アーヴィンに相談すると厄介なことになりそう。

私は考えるのを、放棄した。
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