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本編
忠犬アーヴィン
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アーヴィンが過保護になってしまった。悪役令嬢勢揃いの圧の強いお茶会のあとから、アーヴィンは文字通りぴったりと寄り添って、私から離れないでいる。
体を離そうとすると寂しそうな顔に本来はないはずの耳と尻尾が見えて、罪悪感で居た堪れなくなる。
くっっ。大好きな顔のアーヴィンを甘やかせたくて仕方ない。私の近くにいてくれるならまあ、いいか。
アーヴィンは大きな体をしているので、私の体を隠そうとすると、簡単に隠れてしまう。何から隠そうとしているのかは、何となくわかる。でも、あの人達なら、私の姿が見えなくても、そこにいるって気付いてると思うのよ。あんまり意味なくない?
それでも離れないのは私を守る為であるのを知っている。アーヴィンを選んでから、何故だか私を取り巻く環境が目に見えて変わった。具体的には薄暗い目。アーヴィン以外の攻略対象者と悪役令嬢の皆様から感じるただならぬ視線。
不穏な空気を感じるたびに、アーヴィンによって強制的に甘い空気に戻される。凄く不安定な感じ。でもアーヴィンから離れると、多分二度とアーヴィンに会えなくなりそうだから、離れない。
そんなわけないけれど、私がアーヴィンを選んだのをよく思っていなくて、変えさせようとしているような。
「アーヴィン、大好きよ。」
「アリシア、俺も愛してる。」
無理矢理にでも言葉にだすことで、周りから感じる異様な雰囲気を吹き飛ばすように、私達は愛を囁いた。愛の言葉を出すたびに、アーヴィンとの絆が強化されていくように感じたから。
アーヴィンが私にする全てが私をドキドキさせるみたいに、私とアーヴィンがする全てのイチャイチャ がこの世界に作用していく。
これがゲームの強制力ってやつ?
アーヴィンとは特に決めてはないが、毎日欠かさずやっている心臓破りの行為がある。
それはキス。キスするたびに、私はアーヴィンにドキドキして、この世界に二人きりになったみたいに、うっとりしてしまう。アーヴィンのキスのたびに、天国へ行くような心地になる。これも強制力かしら。
アーヴィンが私の全身にキスの雨を降らしたいみたい。まるで、飼い主を舐めたい犬みたいで、笑いそうになる。
「アリシア、なんか失礼なこと考えてない?」
アーヴィンも笑ってる。ゲームでは見せないふにゃふにゃの笑顔。大好き。
「アーヴィン、愛してる。」
誤魔化したようで、本音だ。
アーヴィンはまたしょうがないと笑って、キスを再開した。
この時、私達は不穏な視線を受け止めてはいたものの、そちらを見ようとはしなかった。それが正しい判断だったことを知るのはもう少し後のこと。
体を離そうとすると寂しそうな顔に本来はないはずの耳と尻尾が見えて、罪悪感で居た堪れなくなる。
くっっ。大好きな顔のアーヴィンを甘やかせたくて仕方ない。私の近くにいてくれるならまあ、いいか。
アーヴィンは大きな体をしているので、私の体を隠そうとすると、簡単に隠れてしまう。何から隠そうとしているのかは、何となくわかる。でも、あの人達なら、私の姿が見えなくても、そこにいるって気付いてると思うのよ。あんまり意味なくない?
それでも離れないのは私を守る為であるのを知っている。アーヴィンを選んでから、何故だか私を取り巻く環境が目に見えて変わった。具体的には薄暗い目。アーヴィン以外の攻略対象者と悪役令嬢の皆様から感じるただならぬ視線。
不穏な空気を感じるたびに、アーヴィンによって強制的に甘い空気に戻される。凄く不安定な感じ。でもアーヴィンから離れると、多分二度とアーヴィンに会えなくなりそうだから、離れない。
そんなわけないけれど、私がアーヴィンを選んだのをよく思っていなくて、変えさせようとしているような。
「アーヴィン、大好きよ。」
「アリシア、俺も愛してる。」
無理矢理にでも言葉にだすことで、周りから感じる異様な雰囲気を吹き飛ばすように、私達は愛を囁いた。愛の言葉を出すたびに、アーヴィンとの絆が強化されていくように感じたから。
アーヴィンが私にする全てが私をドキドキさせるみたいに、私とアーヴィンがする全てのイチャイチャ がこの世界に作用していく。
これがゲームの強制力ってやつ?
アーヴィンとは特に決めてはないが、毎日欠かさずやっている心臓破りの行為がある。
それはキス。キスするたびに、私はアーヴィンにドキドキして、この世界に二人きりになったみたいに、うっとりしてしまう。アーヴィンのキスのたびに、天国へ行くような心地になる。これも強制力かしら。
アーヴィンが私の全身にキスの雨を降らしたいみたい。まるで、飼い主を舐めたい犬みたいで、笑いそうになる。
「アリシア、なんか失礼なこと考えてない?」
アーヴィンも笑ってる。ゲームでは見せないふにゃふにゃの笑顔。大好き。
「アーヴィン、愛してる。」
誤魔化したようで、本音だ。
アーヴィンはまたしょうがないと笑って、キスを再開した。
この時、私達は不穏な視線を受け止めてはいたものの、そちらを見ようとはしなかった。それが正しい判断だったことを知るのはもう少し後のこと。
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