逆ハーENDは封じられました

mios

文字の大きさ
上 下
19 / 26
本編

忠犬アーヴィン

しおりを挟む
アーヴィンが過保護になってしまった。悪役令嬢勢揃いの圧の強いお茶会のあとから、アーヴィンは文字通りぴったりと寄り添って、私から離れないでいる。

体を離そうとすると寂しそうな顔に本来はないはずの耳と尻尾が見えて、罪悪感で居た堪れなくなる。

くっっ。大好きな顔のアーヴィンを甘やかせたくて仕方ない。私の近くにいてくれるならまあ、いいか。

アーヴィンは大きな体をしているので、私の体を隠そうとすると、簡単に隠れてしまう。何から隠そうとしているのかは、何となくわかる。でも、あの人達なら、私の姿が見えなくても、そこにいるって気付いてると思うのよ。あんまり意味なくない?

それでも離れないのは私を守る為であるのを知っている。アーヴィンを選んでから、何故だか私を取り巻く環境が目に見えて変わった。具体的には薄暗い目。アーヴィン以外の攻略対象者と悪役令嬢の皆様から感じるただならぬ視線。

不穏な空気を感じるたびに、アーヴィンによって強制的に甘い空気に戻される。凄く不安定な感じ。でもアーヴィンから離れると、多分二度とアーヴィンに会えなくなりそうだから、離れない。

そんなわけないけれど、私がアーヴィンを選んだのをよく思っていなくて、変えさせようとしているような。

「アーヴィン、大好きよ。」
「アリシア、俺も愛してる。」

無理矢理にでも言葉にだすことで、周りから感じる異様な雰囲気を吹き飛ばすように、私達は愛を囁いた。愛の言葉を出すたびに、アーヴィンとの絆が強化されていくように感じたから。

アーヴィンが私にする全てが私をドキドキさせるみたいに、私とアーヴィンがする全てのイチャイチャ がこの世界に作用していく。

これがゲームの強制力ってやつ?

アーヴィンとは特に決めてはないが、毎日欠かさずやっている心臓破りの行為がある。

それはキス。キスするたびに、私はアーヴィンにドキドキして、この世界に二人きりになったみたいに、うっとりしてしまう。アーヴィンのキスのたびに、天国へ行くような心地になる。これも強制力かしら。

アーヴィンが私の全身にキスの雨を降らしたいみたい。まるで、飼い主を舐めたい犬みたいで、笑いそうになる。

「アリシア、なんか失礼なこと考えてない?」

アーヴィンも笑ってる。ゲームでは見せないふにゃふにゃの笑顔。大好き。

「アーヴィン、愛してる。」
誤魔化したようで、本音だ。

アーヴィンはまたしょうがないと笑って、キスを再開した。

この時、私達は不穏な視線を受け止めてはいたものの、そちらを見ようとはしなかった。それが正しい判断だったことを知るのはもう少し後のこと。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

気だるげの公爵令息が変わった理由。

三月べに
恋愛
 乙女ゲーの悪役令嬢に転生したリーンティア。王子の婚約者にはまだなっていない。避けたいけれど、貴族の義務だから縁談は避けきれないと、一応見合いのお茶会に参加し続けた。乙女ゲーのシナリオでは、その見合いお茶会の中で、王子に恋をしたから父に強くお願いして、王家も承諾して成立した婚約だったはず。  王子以外に婚約者を選ぶかどうかはさておき、他の見合い相手を見極めておこう。相性次第でしょ。  そう思っていた私の本日の見合い相手は、気だるげの公爵令息。面倒くさがり屋の無気力なキャラクターは、子どもの頃からもう気だるげだったのか。 「生きる楽しみを教えてくれ」  ドンと言い放つ少年に、何があったかと尋ねたくなった。別に暗い過去なかったよね、このキャラ。 「あなたのことは知らないので、私が楽しいと思った日々のことを挙げてみますね」  つらつらと楽しみを挙げたら、ぐったりした様子の公爵令息は、目を輝かせた。  そんな彼と、婚約が確定。彼も、変わった。私の隣に立てば、生き生きした笑みを浮かべる。  学園に入って、乙女ゲーのヒロインが立ちはだかった。 「アンタも転生者でしょ! ゲームシナリオを崩壊させてサイテー!! アンタが王子の婚約者じゃないから、フラグも立たないじゃない!!」  知っちゃこっちゃない。スルーしたが、腕を掴まれた。 「無視してんじゃないわよ!」 「頭をおかしくしたように喚く知らない人を見て見ぬふりしたいのは当然では」 「なんですって!? 推しだか何だか知らないけど! なんで無気力公爵令息があんなに変わっちゃったのよ!! どうでもいいから婚約破棄して、王子の婚約者になりなさい!! 軌道修正して!!」  そんなことで今更軌道修正するわけがなかろう……頭おかしい人だな、怖い。 「婚約破棄? ふざけるな。王子の婚約者になれって言うのも不敬罪だ」  ふわっと抱き上げてくれたのは、婚約者の公爵令息イサークだった。 (なろうにも、掲載)

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

婚約破棄の、その後は

冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。 身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが… 全九話。 「小説家になろう」にも掲載しています。

誰でもよいのであれば、私でなくてもよろしいですよね?

miyumeri
恋愛
「まぁ、婚約者なんてそれなりの家格と財産があればだれでもよかったんだよ。」 2か月前に婚約した彼は、そう友人たちと談笑していた。 そうですか、誰でもいいんですね。だったら、私でなくてもよいですよね? 最初、この馬鹿子息を主人公に書いていたのですが なんだか、先にこのお嬢様のお話を書いたほうが 彼の心象を表現しやすいような気がして、急遽こちらを先に 投稿いたしました。来週お馬鹿君のストーリーを投稿させていただきます。 お読みいただければ幸いです。

侯爵令嬢の置き土産

ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。 「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

処理中です...