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本編
駄犬の躾
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「呼び出された理由はわかるか?」
問われた男は何も発しない。発言するのを許されていないからだ。
「いつから、お前の飼い主は私から、男爵令嬢になった?」
男は命令し慣れている主の顔を見つめる。屈強なその体は主を守るため、国を守るために作られたものだ。
今はそれに愛する男爵令嬢を守るため、という理由が加わる。
アーヴィンは、王子の執務室に呼び出されている。先日の茶会で、男爵令嬢を迎えに行った件を責められている。
アーヴィンはあくまでも、愛する婚約者と離れているのが辛くて会いに行った、体を崩さない。しかし、王子とて、馬鹿ではない。そうではない、と知っている。
男爵令嬢だって薄々違和感は感じている。
「邪魔をするなら、任を解くぞ?」
「アリシアは、今までの子達とは違います。」
アーヴィンの許されていない言葉を聞いて、王子は笑った。酷くおかしいものを見たようにアーヴィンに、気が触れたような笑い声を聞かせた。
「それを決めるのはお前じゃない。」
お互いに睨み合う。
「アリシアを害したら許しません。」
アーヴィンの言葉に堪らずまたもや、王子は笑い出した。
「誰が許さない?」
王子の低い声が部屋に響く。
「決めるのは誰だ?」
アーヴィンの反応を確かめて、納得したのか嬉しそうに微笑む。
「私だろ?」
アーヴィンは答えない。答えても無駄だとわかっている。アリシアが来るまで、絶望を何度も感じていたのだから無理もない。
この世界はゲームの世界だ。アリシアがヒロイン。自分達はアリシアに攻略され、逆ハーエンドを迎えた後に、悪役令嬢に殺される、ここまでがテンプレ。お約束だ。
アリシアがくるまで、数々のヒロインがアーヴィンを皮切りに逆ハーを狙って来た。そしてその度に、自分達攻略対象者は、自分だけを好きでいてくれるかも、と言う淡い期待を踏みにじられて来た。甘い言葉で無責任に囁けど、攻略対象でしかない。愛されない。愛されたい。
アリシアも最初は、同じだと思った。だから、サイラスとは距離を取ったものの、ロビンの髪飾りは渡したし、攻略していったように見せかけて、逆ハー狙いかどうか探りを入れてみたりした。
でも、アリシアがどんなつもりであれ、アーヴィンが恋に落ちてしまった。自分だけを優しく見つめてくれる瞳を自分のものにしたいと、攻略対象者として生まれて初めて感じた欲望だった。
だから、逆ハーを阻止した。あれはアリシアを止めた行為ではない。皆が逆ハーENDに向けて、アリシアを殺害しようとしているのを止めたにすぎない。
そして、それについて王子に叱責されている。皆信じていない。
アーヴィンが恋をしたなどと、自分達が成し遂げなかった逆ハー以外のENDがあるということを。
アーヴィンは成し遂げたい。アリシアと二人なら、逆ハー以外のENDが送れるはずだ。
問われた男は何も発しない。発言するのを許されていないからだ。
「いつから、お前の飼い主は私から、男爵令嬢になった?」
男は命令し慣れている主の顔を見つめる。屈強なその体は主を守るため、国を守るために作られたものだ。
今はそれに愛する男爵令嬢を守るため、という理由が加わる。
アーヴィンは、王子の執務室に呼び出されている。先日の茶会で、男爵令嬢を迎えに行った件を責められている。
アーヴィンはあくまでも、愛する婚約者と離れているのが辛くて会いに行った、体を崩さない。しかし、王子とて、馬鹿ではない。そうではない、と知っている。
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アーヴィンの許されていない言葉を聞いて、王子は笑った。酷くおかしいものを見たようにアーヴィンに、気が触れたような笑い声を聞かせた。
「それを決めるのはお前じゃない。」
お互いに睨み合う。
「アリシアを害したら許しません。」
アーヴィンの言葉に堪らずまたもや、王子は笑い出した。
「誰が許さない?」
王子の低い声が部屋に響く。
「決めるのは誰だ?」
アーヴィンの反応を確かめて、納得したのか嬉しそうに微笑む。
「私だろ?」
アーヴィンは答えない。答えても無駄だとわかっている。アリシアが来るまで、絶望を何度も感じていたのだから無理もない。
この世界はゲームの世界だ。アリシアがヒロイン。自分達はアリシアに攻略され、逆ハーエンドを迎えた後に、悪役令嬢に殺される、ここまでがテンプレ。お約束だ。
アリシアがくるまで、数々のヒロインがアーヴィンを皮切りに逆ハーを狙って来た。そしてその度に、自分達攻略対象者は、自分だけを好きでいてくれるかも、と言う淡い期待を踏みにじられて来た。甘い言葉で無責任に囁けど、攻略対象でしかない。愛されない。愛されたい。
アリシアも最初は、同じだと思った。だから、サイラスとは距離を取ったものの、ロビンの髪飾りは渡したし、攻略していったように見せかけて、逆ハー狙いかどうか探りを入れてみたりした。
でも、アリシアがどんなつもりであれ、アーヴィンが恋に落ちてしまった。自分だけを優しく見つめてくれる瞳を自分のものにしたいと、攻略対象者として生まれて初めて感じた欲望だった。
だから、逆ハーを阻止した。あれはアリシアを止めた行為ではない。皆が逆ハーENDに向けて、アリシアを殺害しようとしているのを止めたにすぎない。
そして、それについて王子に叱責されている。皆信じていない。
アーヴィンが恋をしたなどと、自分達が成し遂げなかった逆ハー以外のENDがあるということを。
アーヴィンは成し遂げたい。アリシアと二人なら、逆ハー以外のENDが送れるはずだ。
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