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本編
ロビンの目撃談
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あれで隠れてるつもりだろうか。大男が柱の陰から大きくはみ出た形で隠れている。驚いたことに、誰もがその大男に気付いているのに、肝心の彼の意中の相手には全く気付かれていないらしい。彼女は小さくて可愛らしく、珍しい薄いピンク色の髪をしている。彼女自身が良く視線に晒されるせいで、多少の視線に慣れてしまっているのだろう。
彼女達の初対面は最近よく見かけるカップルがいるなぁ、ぐらいのものだ。
その時から奇妙な感じはあって、カップルと言っていいのかわからないものの、大男とご令嬢の貴族は、どれだけ大男が奇妙な行動をしても、対するご令嬢の表情を見ると嬉しそうで、羨ましくも思ったものだ。
貴族のご令嬢を喜ばせる参考にならないかな、と見始めたのがきっかけだ。
大きな商会の息子として、平民ながら分不相応にも貴族令嬢の婚約者がいる。可憐で頑張り屋さんな彼女でも、やはり貴族であるし、気を遣う部分も大きい。
政略結婚であっても、恋愛結婚と同じだけ好きになって貰いたいと思うのだが、中々上手くいかない。彼女が素晴らしければ素晴らしい程、自分との差が浮き彫りに、自信がなくなってしまう。
さっきの大男を見る限り、もしかしたら僕の杞憂なんて意味のないものなんじゃないか、と思えた。だって、僕が彼女にしてあげた、と思うものは、貴族令息としては当たり前のことで、ご令嬢からしたら、当然のことだったんじゃないか、ってこと。
当然のことばかりして、好きになって貰いたいなんて、烏滸がましいよな。さらに何か、自分にしか出来ない、貴族の男達にはできないことをしなければ、平民の僕が彼女に好かれる筈ないのに。
平民は、平民同士の方が、楽に決まっている。政略結婚の意味を知らないわけではないけれど、荷が重いのも確かだ。
けれど僕には諦めてはいけない理由がある。政略結婚と言う意味合いをわざわざ作ってまで彼女との結婚を取り付けたのだ。
彼女は貴族令嬢として、親の命令に従うだけ。でも、僕は分不相応にも彼女に恋をしている。僕の名前を呼んでくれる彼女を見ている時、僕はあの大男のような目を向けているのかもしれない。彼の目は真剣で、彼女しか目に入っていない。あんなに綺麗な顔の貴族の男が、恥ずかしさもかなぐり捨てて、彼女に喜んでほしい、と色んなことを仕掛ける様子は微笑ましく、見ていて応援したくなる。彼の場合、少しだけ彼女の方にも同情してしまうのだが。彼女なら気がついても笑ってくれるのかもしれない。
あんなカップルに、僕らもなりたい。
彼女達の初対面は最近よく見かけるカップルがいるなぁ、ぐらいのものだ。
その時から奇妙な感じはあって、カップルと言っていいのかわからないものの、大男とご令嬢の貴族は、どれだけ大男が奇妙な行動をしても、対するご令嬢の表情を見ると嬉しそうで、羨ましくも思ったものだ。
貴族のご令嬢を喜ばせる参考にならないかな、と見始めたのがきっかけだ。
大きな商会の息子として、平民ながら分不相応にも貴族令嬢の婚約者がいる。可憐で頑張り屋さんな彼女でも、やはり貴族であるし、気を遣う部分も大きい。
政略結婚であっても、恋愛結婚と同じだけ好きになって貰いたいと思うのだが、中々上手くいかない。彼女が素晴らしければ素晴らしい程、自分との差が浮き彫りに、自信がなくなってしまう。
さっきの大男を見る限り、もしかしたら僕の杞憂なんて意味のないものなんじゃないか、と思えた。だって、僕が彼女にしてあげた、と思うものは、貴族令息としては当たり前のことで、ご令嬢からしたら、当然のことだったんじゃないか、ってこと。
当然のことばかりして、好きになって貰いたいなんて、烏滸がましいよな。さらに何か、自分にしか出来ない、貴族の男達にはできないことをしなければ、平民の僕が彼女に好かれる筈ないのに。
平民は、平民同士の方が、楽に決まっている。政略結婚の意味を知らないわけではないけれど、荷が重いのも確かだ。
けれど僕には諦めてはいけない理由がある。政略結婚と言う意味合いをわざわざ作ってまで彼女との結婚を取り付けたのだ。
彼女は貴族令嬢として、親の命令に従うだけ。でも、僕は分不相応にも彼女に恋をしている。僕の名前を呼んでくれる彼女を見ている時、僕はあの大男のような目を向けているのかもしれない。彼の目は真剣で、彼女しか目に入っていない。あんなに綺麗な顔の貴族の男が、恥ずかしさもかなぐり捨てて、彼女に喜んでほしい、と色んなことを仕掛ける様子は微笑ましく、見ていて応援したくなる。彼の場合、少しだけ彼女の方にも同情してしまうのだが。彼女なら気がついても笑ってくれるのかもしれない。
あんなカップルに、僕らもなりたい。
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