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本編
髪飾りは貰った
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「じゃあ、行くか。」
アーヴィンが迎えに来て、アリシアは叫ぶのを我慢した。今アーヴィンの身につけている服はゲーム内で課金しまくっても全く敵わなかったプレミア付きの衣装だからだ。
(うぅ、幸せ。)
獣じみた呻き声を出すところだった。危ない危ない。私は令嬢。ワタシハレイジョウ。
当たり前のように手を繋ぐ。私はまだ少し恥ずかしさがあるのに、アーヴィンは特に思うことがあるわけでもなく。きっと逸れたら危ない、ぐらいの認識なのだと思う。
ゲームの中では、人混みで侍女と離れてしまった私をロビンが助けてくれるのだが。アーヴィンは本当に護衛としては素晴らしい。私の手をガッチリと離さない。それにしても人が多い。
アーヴィンは大きな体を利用して、私の体ごと包んでくれてドンドン進んでいく。おかげで私が逸れたり誰かにぶつかったりすることはない。
普通ならお礼をいう所。
「アーヴィン、アリガトウ。」
お礼が言い辛いのは、仕方ない。だって、逸れないとロビンルートが始まらないのだもの。
もしかして、サイラスルートに引き続き、アーヴィンに邪魔されてしまうのでは?
だから、私はアーヴィンを、撒くことにした。
「アーヴィン、アノミセミテミタイ。」
繋いでいた手を振り払って、見に行く。無理があったかな。
ちょうど体の大きな人が前方から現れたので影に隠れながら、逸れることに成功する。
(よし、やった!)
私の見つけやすいピンクの髪は、今日は色を変えているので、アーヴィンもいつものようには簡単に見つけられない。
ロビンの商会が卸している店に行く。髪飾りを探すが、ない。
(あれ?)
何度確認してもない。店が違うのかと探すがない。
アーヴィンを撒いてまで、来たのに骨折り損だ。とぼとぼと帰っていると、息を切らした大男に肩を掴まれた。
汗を滴らせたアーヴィンがいた。
(ああ、美しい。)
いくらイケメンでも、汗は臭いと思うのだが、アーヴィンの汗は臭くない。私が断言する。
「良かった。心配した。」
ギューッとハグされて、本当に申し訳なくなる。
少しの間、ずっと抱きしめられる。
アーヴィンは私の顔を見ると、諦めたような笑顔を見せた。
「気が済んだか?まだ見るか?」
私は、ロビンに会えないことも、髪飾りがないことも、今日は諦めた。アーヴィンにこんな顔をさせてしまった罪悪感が凄かった。
「もう大丈夫。気が済んだ。ごめんなさい。」
私の頭を小さな子供を諭す様にポンポンして、家まで送ってくれる。
「これ、お前に。似合いそうだったから。」
帰り際、アーヴィンから渡されたものを見て、私は驚きを隠せなかった。
そこには、あれだけ欲しかった髪飾りが箱に収まっていた。
髪飾りをゲットしたことに喜んでいたが。肝心の人が違う場合はどうなるんだろう。
ロビンの髪飾りをアーヴィンから貰うのは、どうなの?
だって、私ロビンにまだ会っていない。
アーヴィンが迎えに来て、アリシアは叫ぶのを我慢した。今アーヴィンの身につけている服はゲーム内で課金しまくっても全く敵わなかったプレミア付きの衣装だからだ。
(うぅ、幸せ。)
獣じみた呻き声を出すところだった。危ない危ない。私は令嬢。ワタシハレイジョウ。
当たり前のように手を繋ぐ。私はまだ少し恥ずかしさがあるのに、アーヴィンは特に思うことがあるわけでもなく。きっと逸れたら危ない、ぐらいの認識なのだと思う。
ゲームの中では、人混みで侍女と離れてしまった私をロビンが助けてくれるのだが。アーヴィンは本当に護衛としては素晴らしい。私の手をガッチリと離さない。それにしても人が多い。
アーヴィンは大きな体を利用して、私の体ごと包んでくれてドンドン進んでいく。おかげで私が逸れたり誰かにぶつかったりすることはない。
普通ならお礼をいう所。
「アーヴィン、アリガトウ。」
お礼が言い辛いのは、仕方ない。だって、逸れないとロビンルートが始まらないのだもの。
もしかして、サイラスルートに引き続き、アーヴィンに邪魔されてしまうのでは?
だから、私はアーヴィンを、撒くことにした。
「アーヴィン、アノミセミテミタイ。」
繋いでいた手を振り払って、見に行く。無理があったかな。
ちょうど体の大きな人が前方から現れたので影に隠れながら、逸れることに成功する。
(よし、やった!)
私の見つけやすいピンクの髪は、今日は色を変えているので、アーヴィンもいつものようには簡単に見つけられない。
ロビンの商会が卸している店に行く。髪飾りを探すが、ない。
(あれ?)
何度確認してもない。店が違うのかと探すがない。
アーヴィンを撒いてまで、来たのに骨折り損だ。とぼとぼと帰っていると、息を切らした大男に肩を掴まれた。
汗を滴らせたアーヴィンがいた。
(ああ、美しい。)
いくらイケメンでも、汗は臭いと思うのだが、アーヴィンの汗は臭くない。私が断言する。
「良かった。心配した。」
ギューッとハグされて、本当に申し訳なくなる。
少しの間、ずっと抱きしめられる。
アーヴィンは私の顔を見ると、諦めたような笑顔を見せた。
「気が済んだか?まだ見るか?」
私は、ロビンに会えないことも、髪飾りがないことも、今日は諦めた。アーヴィンにこんな顔をさせてしまった罪悪感が凄かった。
「もう大丈夫。気が済んだ。ごめんなさい。」
私の頭を小さな子供を諭す様にポンポンして、家まで送ってくれる。
「これ、お前に。似合いそうだったから。」
帰り際、アーヴィンから渡されたものを見て、私は驚きを隠せなかった。
そこには、あれだけ欲しかった髪飾りが箱に収まっていた。
髪飾りをゲットしたことに喜んでいたが。肝心の人が違う場合はどうなるんだろう。
ロビンの髪飾りをアーヴィンから貰うのは、どうなの?
だって、私ロビンにまだ会っていない。
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