逆ハーENDは封じられました

mios

文字の大きさ
上 下
6 / 26
本編

髪飾りは貰った

しおりを挟む
「じゃあ、行くか。」
アーヴィンが迎えに来て、アリシアは叫ぶのを我慢した。今アーヴィンの身につけている服はゲーム内で課金しまくっても全く敵わなかったプレミア付きの衣装だからだ。

(うぅ、幸せ。)
獣じみた呻き声を出すところだった。危ない危ない。私は令嬢。ワタシハレイジョウ。


当たり前のように手を繋ぐ。私はまだ少し恥ずかしさがあるのに、アーヴィンは特に思うことがあるわけでもなく。きっと逸れたら危ない、ぐらいの認識なのだと思う。

ゲームの中では、人混みで侍女と離れてしまった私をロビンが助けてくれるのだが。アーヴィンは本当に護衛としては素晴らしい。私の手をガッチリと離さない。それにしても人が多い。

アーヴィンは大きな体を利用して、私の体ごと包んでくれてドンドン進んでいく。おかげで私が逸れたり誰かにぶつかったりすることはない。

普通ならお礼をいう所。
「アーヴィン、アリガトウ。」
お礼が言い辛いのは、仕方ない。だって、逸れないとロビンルートが始まらないのだもの。

もしかして、サイラスルートに引き続き、アーヴィンに邪魔されてしまうのでは?

だから、私はアーヴィンを、撒くことにした。

「アーヴィン、アノミセミテミタイ。」
繋いでいた手を振り払って、見に行く。無理があったかな。

ちょうど体の大きな人が前方から現れたので影に隠れながら、逸れることに成功する。

(よし、やった!)

私の見つけやすいピンクの髪は、今日は色を変えているので、アーヴィンもいつものようには簡単に見つけられない。

ロビンの商会が卸している店に行く。髪飾りを探すが、ない。

(あれ?)

何度確認してもない。店が違うのかと探すがない。

アーヴィンを撒いてまで、来たのに骨折り損だ。とぼとぼと帰っていると、息を切らした大男に肩を掴まれた。

汗を滴らせたアーヴィンがいた。

(ああ、美しい。)

いくらイケメンでも、汗は臭いと思うのだが、アーヴィンの汗は臭くない。私が断言する。

「良かった。心配した。」
ギューッとハグされて、本当に申し訳なくなる。

少しの間、ずっと抱きしめられる。

アーヴィンは私の顔を見ると、諦めたような笑顔を見せた。

「気が済んだか?まだ見るか?」

私は、ロビンに会えないことも、髪飾りがないことも、今日は諦めた。アーヴィンにこんな顔をさせてしまった罪悪感が凄かった。

「もう大丈夫。気が済んだ。ごめんなさい。」

私の頭を小さな子供を諭す様にポンポンして、家まで送ってくれる。

「これ、お前に。似合いそうだったから。」

帰り際、アーヴィンから渡されたものを見て、私は驚きを隠せなかった。

そこには、あれだけ欲しかった髪飾りが箱に収まっていた。

髪飾りをゲットしたことに喜んでいたが。肝心の人が違う場合はどうなるんだろう。

ロビンの髪飾りをアーヴィンから貰うのは、どうなの?

だって、私ロビンにまだ会っていない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

気だるげの公爵令息が変わった理由。

三月べに
恋愛
 乙女ゲーの悪役令嬢に転生したリーンティア。王子の婚約者にはまだなっていない。避けたいけれど、貴族の義務だから縁談は避けきれないと、一応見合いのお茶会に参加し続けた。乙女ゲーのシナリオでは、その見合いお茶会の中で、王子に恋をしたから父に強くお願いして、王家も承諾して成立した婚約だったはず。  王子以外に婚約者を選ぶかどうかはさておき、他の見合い相手を見極めておこう。相性次第でしょ。  そう思っていた私の本日の見合い相手は、気だるげの公爵令息。面倒くさがり屋の無気力なキャラクターは、子どもの頃からもう気だるげだったのか。 「生きる楽しみを教えてくれ」  ドンと言い放つ少年に、何があったかと尋ねたくなった。別に暗い過去なかったよね、このキャラ。 「あなたのことは知らないので、私が楽しいと思った日々のことを挙げてみますね」  つらつらと楽しみを挙げたら、ぐったりした様子の公爵令息は、目を輝かせた。  そんな彼と、婚約が確定。彼も、変わった。私の隣に立てば、生き生きした笑みを浮かべる。  学園に入って、乙女ゲーのヒロインが立ちはだかった。 「アンタも転生者でしょ! ゲームシナリオを崩壊させてサイテー!! アンタが王子の婚約者じゃないから、フラグも立たないじゃない!!」  知っちゃこっちゃない。スルーしたが、腕を掴まれた。 「無視してんじゃないわよ!」 「頭をおかしくしたように喚く知らない人を見て見ぬふりしたいのは当然では」 「なんですって!? 推しだか何だか知らないけど! なんで無気力公爵令息があんなに変わっちゃったのよ!! どうでもいいから婚約破棄して、王子の婚約者になりなさい!! 軌道修正して!!」  そんなことで今更軌道修正するわけがなかろう……頭おかしい人だな、怖い。 「婚約破棄? ふざけるな。王子の婚約者になれって言うのも不敬罪だ」  ふわっと抱き上げてくれたのは、婚約者の公爵令息イサークだった。 (なろうにも、掲載)

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

誰でもよいのであれば、私でなくてもよろしいですよね?

miyumeri
恋愛
「まぁ、婚約者なんてそれなりの家格と財産があればだれでもよかったんだよ。」 2か月前に婚約した彼は、そう友人たちと談笑していた。 そうですか、誰でもいいんですね。だったら、私でなくてもよいですよね? 最初、この馬鹿子息を主人公に書いていたのですが なんだか、先にこのお嬢様のお話を書いたほうが 彼の心象を表現しやすいような気がして、急遽こちらを先に 投稿いたしました。来週お馬鹿君のストーリーを投稿させていただきます。 お読みいただければ幸いです。

婚約破棄の、その後は

冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。 身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが… 全九話。 「小説家になろう」にも掲載しています。

侯爵令嬢の置き土産

ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。 「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

処理中です...