2 / 26
本編
一人目の攻略対象
しおりを挟む
(え?何でこんなところに。)
いきなりのアーヴィンに、驚いているアリシアを綺麗なオレンジ色の瞳は捉えて離さない。
「あ、だ、だ、大丈夫です。」
「そうか。大丈夫ならいいや。」
アリシアは周囲を確認する。アーヴィンが目の前に現れた衝撃が大きすぎて何をしていたかすっかり忘れてしまった。
アーヴィンは、何でここにいるのだろう。ゲームの初対面は確か、ここではなかったと思うのだが。
「お前、アリシアだろう?マリーナの妹の。」
「あ、はい。」
マリーナとは、アリシアの姉だ。そう言えば姉と遊びに来ていたヒロインが逸れてしまって、攻略対象者が探しにくるというのがあったかもしれない。あれは確か始めの方で共通ルートだったか。
確かゲームでは、再会するのだ。
ということは、初対面のイベントをとりこぼしている?
まさか、療養が初対面イベントがなくなる原因だなんて誰が予想しただろうか。
だからこその、今が初対面なのね。
アーヴィンは、幼馴染の兄的ポジションである。そうなるには、幼少期に一度会う必要があるのだが、その重要な部分をすっ飛ばしてしまっている。
アーヴィンルートには悪役令嬢なるライバルが登場しない。アーヴィンには、婚約者がいなかったからだ。
他の人のルートには必ずヒロインと敵対する悪役令嬢と言う存在が登場するのだが、アーヴィンにはその存在がなかった。だから、簡単に仲良くなれるし、逆に言えば、許される恋なので、盛り上がりに欠けるらしく、ハッピーエンドも軽めだし、バッドエンドも友情エンドで生温い。
どうやら、続編ではアーヴィンルートがドロドロしたものになったのがあると聞いたことはあるが、前世のアリシア自身がそれをプレイする日は来なかった。
アーヴィンは、アリシアに挨拶をする。
「俺はアーヴィン・メルトだ。よろしく。」
「マリーナ・フォーゼの妹の、アリシアと申します。」
カーテシーを披露すると、オレンジ色の瞳が細められた。スチルでお気に入りだったアーヴィンの笑顔は、実物の方が何千倍も素敵だと実感した。
ずっと茶色だと思っていた髪色は赤みが強く、夕陽に照らされると、金色にも見える。
(ああ、完璧だわ。)
スマホもカメラもないので、目に焼き付ける。
「ピンク色の髪は見つけやすいな。」
そう言って爽やかな笑顔で微笑んだ後、ゲームではエスコートしてくれて、家まで送り届けてくれる。
実際には、より気やすい感じで手を繋がれて、マリーナの所へ連れてこられる。
「気をつけてな。」
うわぁ、いい声。声優さんの声はそのままに、めっちゃイケメンじゃないの。
耳が~、耳が~。
家に着いたあとは、考えを整理する。念願のアーヴィンに会えたのなら、やることは一つ。
アリシアは家族に見つからないように、小さくガッツポーズをして、気合いを入れ直した。
アーヴィンと出会った日から、アーヴィンに会う頻度が急に上がった。気がつけば、いる。これはアーヴィンルートに入ったと言うことだろう。
アリシアは勿論だが、アーヴィンはアリシアを見つけると凄く嬉しそうな顔をする。幼馴染ではなくなってしまったが気やすく話せるお兄ちゃんキャラであることに変わりはない。
アーヴィンがアリシアにブレスレットの贈り物をする場面がある。ある程度好感度が上がらないと貰えない特別なものだ。前世では、このブレスレットには身に付けた者を守る魔法がついていると説明があった。
これを貰えたら、バッドエンドにはならない、と言う証。
ゲームの中ではアーヴィンが、渡すところで終わったのだが、実物は腕につけてくれた。アーヴィンのはにかんだ笑顔は、アリシアの脳を蕩していく。
アリシアは、前世では重課金者だった。なのに、このアーヴィンのブレスレットについて、何も知らないに等しかった。
これはただのブレスレットではなく、呪いのブレスレットであることを、アリシアは全く知らずにいた。
(アーヴィンからブレスレットは受け取ったし、一人目は攻略でいいのよね?これからは疲れたら、アーヴィンに癒してもらえるから楽だわ。)
いきなりのアーヴィンに、驚いているアリシアを綺麗なオレンジ色の瞳は捉えて離さない。
「あ、だ、だ、大丈夫です。」
「そうか。大丈夫ならいいや。」
アリシアは周囲を確認する。アーヴィンが目の前に現れた衝撃が大きすぎて何をしていたかすっかり忘れてしまった。
アーヴィンは、何でここにいるのだろう。ゲームの初対面は確か、ここではなかったと思うのだが。
「お前、アリシアだろう?マリーナの妹の。」
「あ、はい。」
マリーナとは、アリシアの姉だ。そう言えば姉と遊びに来ていたヒロインが逸れてしまって、攻略対象者が探しにくるというのがあったかもしれない。あれは確か始めの方で共通ルートだったか。
確かゲームでは、再会するのだ。
ということは、初対面のイベントをとりこぼしている?
まさか、療養が初対面イベントがなくなる原因だなんて誰が予想しただろうか。
だからこその、今が初対面なのね。
アーヴィンは、幼馴染の兄的ポジションである。そうなるには、幼少期に一度会う必要があるのだが、その重要な部分をすっ飛ばしてしまっている。
アーヴィンルートには悪役令嬢なるライバルが登場しない。アーヴィンには、婚約者がいなかったからだ。
他の人のルートには必ずヒロインと敵対する悪役令嬢と言う存在が登場するのだが、アーヴィンにはその存在がなかった。だから、簡単に仲良くなれるし、逆に言えば、許される恋なので、盛り上がりに欠けるらしく、ハッピーエンドも軽めだし、バッドエンドも友情エンドで生温い。
どうやら、続編ではアーヴィンルートがドロドロしたものになったのがあると聞いたことはあるが、前世のアリシア自身がそれをプレイする日は来なかった。
アーヴィンは、アリシアに挨拶をする。
「俺はアーヴィン・メルトだ。よろしく。」
「マリーナ・フォーゼの妹の、アリシアと申します。」
カーテシーを披露すると、オレンジ色の瞳が細められた。スチルでお気に入りだったアーヴィンの笑顔は、実物の方が何千倍も素敵だと実感した。
ずっと茶色だと思っていた髪色は赤みが強く、夕陽に照らされると、金色にも見える。
(ああ、完璧だわ。)
スマホもカメラもないので、目に焼き付ける。
「ピンク色の髪は見つけやすいな。」
そう言って爽やかな笑顔で微笑んだ後、ゲームではエスコートしてくれて、家まで送り届けてくれる。
実際には、より気やすい感じで手を繋がれて、マリーナの所へ連れてこられる。
「気をつけてな。」
うわぁ、いい声。声優さんの声はそのままに、めっちゃイケメンじゃないの。
耳が~、耳が~。
家に着いたあとは、考えを整理する。念願のアーヴィンに会えたのなら、やることは一つ。
アリシアは家族に見つからないように、小さくガッツポーズをして、気合いを入れ直した。
アーヴィンと出会った日から、アーヴィンに会う頻度が急に上がった。気がつけば、いる。これはアーヴィンルートに入ったと言うことだろう。
アリシアは勿論だが、アーヴィンはアリシアを見つけると凄く嬉しそうな顔をする。幼馴染ではなくなってしまったが気やすく話せるお兄ちゃんキャラであることに変わりはない。
アーヴィンがアリシアにブレスレットの贈り物をする場面がある。ある程度好感度が上がらないと貰えない特別なものだ。前世では、このブレスレットには身に付けた者を守る魔法がついていると説明があった。
これを貰えたら、バッドエンドにはならない、と言う証。
ゲームの中ではアーヴィンが、渡すところで終わったのだが、実物は腕につけてくれた。アーヴィンのはにかんだ笑顔は、アリシアの脳を蕩していく。
アリシアは、前世では重課金者だった。なのに、このアーヴィンのブレスレットについて、何も知らないに等しかった。
これはただのブレスレットではなく、呪いのブレスレットであることを、アリシアは全く知らずにいた。
(アーヴィンからブレスレットは受け取ったし、一人目は攻略でいいのよね?これからは疲れたら、アーヴィンに癒してもらえるから楽だわ。)
1
お気に入りに追加
188
あなたにおすすめの小説

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。

誰でもよいのであれば、私でなくてもよろしいですよね?
miyumeri
恋愛
「まぁ、婚約者なんてそれなりの家格と財産があればだれでもよかったんだよ。」
2か月前に婚約した彼は、そう友人たちと談笑していた。
そうですか、誰でもいいんですね。だったら、私でなくてもよいですよね?
最初、この馬鹿子息を主人公に書いていたのですが
なんだか、先にこのお嬢様のお話を書いたほうが
彼の心象を表現しやすいような気がして、急遽こちらを先に
投稿いたしました。来週お馬鹿君のストーリーを投稿させていただきます。
お読みいただければ幸いです。

気だるげの公爵令息が変わった理由。
三月べに
恋愛
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したリーンティア。王子の婚約者にはまだなっていない。避けたいけれど、貴族の義務だから縁談は避けきれないと、一応見合いのお茶会に参加し続けた。乙女ゲーのシナリオでは、その見合いお茶会の中で、王子に恋をしたから父に強くお願いして、王家も承諾して成立した婚約だったはず。
王子以外に婚約者を選ぶかどうかはさておき、他の見合い相手を見極めておこう。相性次第でしょ。
そう思っていた私の本日の見合い相手は、気だるげの公爵令息。面倒くさがり屋の無気力なキャラクターは、子どもの頃からもう気だるげだったのか。
「生きる楽しみを教えてくれ」
ドンと言い放つ少年に、何があったかと尋ねたくなった。別に暗い過去なかったよね、このキャラ。
「あなたのことは知らないので、私が楽しいと思った日々のことを挙げてみますね」
つらつらと楽しみを挙げたら、ぐったりした様子の公爵令息は、目を輝かせた。
そんな彼と、婚約が確定。彼も、変わった。私の隣に立てば、生き生きした笑みを浮かべる。
学園に入って、乙女ゲーのヒロインが立ちはだかった。
「アンタも転生者でしょ! ゲームシナリオを崩壊させてサイテー!! アンタが王子の婚約者じゃないから、フラグも立たないじゃない!!」
知っちゃこっちゃない。スルーしたが、腕を掴まれた。
「無視してんじゃないわよ!」
「頭をおかしくしたように喚く知らない人を見て見ぬふりしたいのは当然では」
「なんですって!? 推しだか何だか知らないけど! なんで無気力公爵令息があんなに変わっちゃったのよ!! どうでもいいから婚約破棄して、王子の婚約者になりなさい!! 軌道修正して!!」
そんなことで今更軌道修正するわけがなかろう……頭おかしい人だな、怖い。
「婚約破棄? ふざけるな。王子の婚約者になれって言うのも不敬罪だ」
ふわっと抱き上げてくれたのは、婚約者の公爵令息イサークだった。
(なろうにも、掲載)
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。

婚約破棄の、その後は
冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。
身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが…
全九話。
「小説家になろう」にも掲載しています。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる