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本編
一人目の攻略対象
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(え?何でこんなところに。)
いきなりのアーヴィンに、驚いているアリシアを綺麗なオレンジ色の瞳は捉えて離さない。
「あ、だ、だ、大丈夫です。」
「そうか。大丈夫ならいいや。」
アリシアは周囲を確認する。アーヴィンが目の前に現れた衝撃が大きすぎて何をしていたかすっかり忘れてしまった。
アーヴィンは、何でここにいるのだろう。ゲームの初対面は確か、ここではなかったと思うのだが。
「お前、アリシアだろう?マリーナの妹の。」
「あ、はい。」
マリーナとは、アリシアの姉だ。そう言えば姉と遊びに来ていたヒロインが逸れてしまって、攻略対象者が探しにくるというのがあったかもしれない。あれは確か始めの方で共通ルートだったか。
確かゲームでは、再会するのだ。
ということは、初対面のイベントをとりこぼしている?
まさか、療養が初対面イベントがなくなる原因だなんて誰が予想しただろうか。
だからこその、今が初対面なのね。
アーヴィンは、幼馴染の兄的ポジションである。そうなるには、幼少期に一度会う必要があるのだが、その重要な部分をすっ飛ばしてしまっている。
アーヴィンルートには悪役令嬢なるライバルが登場しない。アーヴィンには、婚約者がいなかったからだ。
他の人のルートには必ずヒロインと敵対する悪役令嬢と言う存在が登場するのだが、アーヴィンにはその存在がなかった。だから、簡単に仲良くなれるし、逆に言えば、許される恋なので、盛り上がりに欠けるらしく、ハッピーエンドも軽めだし、バッドエンドも友情エンドで生温い。
どうやら、続編ではアーヴィンルートがドロドロしたものになったのがあると聞いたことはあるが、前世のアリシア自身がそれをプレイする日は来なかった。
アーヴィンは、アリシアに挨拶をする。
「俺はアーヴィン・メルトだ。よろしく。」
「マリーナ・フォーゼの妹の、アリシアと申します。」
カーテシーを披露すると、オレンジ色の瞳が細められた。スチルでお気に入りだったアーヴィンの笑顔は、実物の方が何千倍も素敵だと実感した。
ずっと茶色だと思っていた髪色は赤みが強く、夕陽に照らされると、金色にも見える。
(ああ、完璧だわ。)
スマホもカメラもないので、目に焼き付ける。
「ピンク色の髪は見つけやすいな。」
そう言って爽やかな笑顔で微笑んだ後、ゲームではエスコートしてくれて、家まで送り届けてくれる。
実際には、より気やすい感じで手を繋がれて、マリーナの所へ連れてこられる。
「気をつけてな。」
うわぁ、いい声。声優さんの声はそのままに、めっちゃイケメンじゃないの。
耳が~、耳が~。
家に着いたあとは、考えを整理する。念願のアーヴィンに会えたのなら、やることは一つ。
アリシアは家族に見つからないように、小さくガッツポーズをして、気合いを入れ直した。
アーヴィンと出会った日から、アーヴィンに会う頻度が急に上がった。気がつけば、いる。これはアーヴィンルートに入ったと言うことだろう。
アリシアは勿論だが、アーヴィンはアリシアを見つけると凄く嬉しそうな顔をする。幼馴染ではなくなってしまったが気やすく話せるお兄ちゃんキャラであることに変わりはない。
アーヴィンがアリシアにブレスレットの贈り物をする場面がある。ある程度好感度が上がらないと貰えない特別なものだ。前世では、このブレスレットには身に付けた者を守る魔法がついていると説明があった。
これを貰えたら、バッドエンドにはならない、と言う証。
ゲームの中ではアーヴィンが、渡すところで終わったのだが、実物は腕につけてくれた。アーヴィンのはにかんだ笑顔は、アリシアの脳を蕩していく。
アリシアは、前世では重課金者だった。なのに、このアーヴィンのブレスレットについて、何も知らないに等しかった。
これはただのブレスレットではなく、呪いのブレスレットであることを、アリシアは全く知らずにいた。
(アーヴィンからブレスレットは受け取ったし、一人目は攻略でいいのよね?これからは疲れたら、アーヴィンに癒してもらえるから楽だわ。)
いきなりのアーヴィンに、驚いているアリシアを綺麗なオレンジ色の瞳は捉えて離さない。
「あ、だ、だ、大丈夫です。」
「そうか。大丈夫ならいいや。」
アリシアは周囲を確認する。アーヴィンが目の前に現れた衝撃が大きすぎて何をしていたかすっかり忘れてしまった。
アーヴィンは、何でここにいるのだろう。ゲームの初対面は確か、ここではなかったと思うのだが。
「お前、アリシアだろう?マリーナの妹の。」
「あ、はい。」
マリーナとは、アリシアの姉だ。そう言えば姉と遊びに来ていたヒロインが逸れてしまって、攻略対象者が探しにくるというのがあったかもしれない。あれは確か始めの方で共通ルートだったか。
確かゲームでは、再会するのだ。
ということは、初対面のイベントをとりこぼしている?
まさか、療養が初対面イベントがなくなる原因だなんて誰が予想しただろうか。
だからこその、今が初対面なのね。
アーヴィンは、幼馴染の兄的ポジションである。そうなるには、幼少期に一度会う必要があるのだが、その重要な部分をすっ飛ばしてしまっている。
アーヴィンルートには悪役令嬢なるライバルが登場しない。アーヴィンには、婚約者がいなかったからだ。
他の人のルートには必ずヒロインと敵対する悪役令嬢と言う存在が登場するのだが、アーヴィンにはその存在がなかった。だから、簡単に仲良くなれるし、逆に言えば、許される恋なので、盛り上がりに欠けるらしく、ハッピーエンドも軽めだし、バッドエンドも友情エンドで生温い。
どうやら、続編ではアーヴィンルートがドロドロしたものになったのがあると聞いたことはあるが、前世のアリシア自身がそれをプレイする日は来なかった。
アーヴィンは、アリシアに挨拶をする。
「俺はアーヴィン・メルトだ。よろしく。」
「マリーナ・フォーゼの妹の、アリシアと申します。」
カーテシーを披露すると、オレンジ色の瞳が細められた。スチルでお気に入りだったアーヴィンの笑顔は、実物の方が何千倍も素敵だと実感した。
ずっと茶色だと思っていた髪色は赤みが強く、夕陽に照らされると、金色にも見える。
(ああ、完璧だわ。)
スマホもカメラもないので、目に焼き付ける。
「ピンク色の髪は見つけやすいな。」
そう言って爽やかな笑顔で微笑んだ後、ゲームではエスコートしてくれて、家まで送り届けてくれる。
実際には、より気やすい感じで手を繋がれて、マリーナの所へ連れてこられる。
「気をつけてな。」
うわぁ、いい声。声優さんの声はそのままに、めっちゃイケメンじゃないの。
耳が~、耳が~。
家に着いたあとは、考えを整理する。念願のアーヴィンに会えたのなら、やることは一つ。
アリシアは家族に見つからないように、小さくガッツポーズをして、気合いを入れ直した。
アーヴィンと出会った日から、アーヴィンに会う頻度が急に上がった。気がつけば、いる。これはアーヴィンルートに入ったと言うことだろう。
アリシアは勿論だが、アーヴィンはアリシアを見つけると凄く嬉しそうな顔をする。幼馴染ではなくなってしまったが気やすく話せるお兄ちゃんキャラであることに変わりはない。
アーヴィンがアリシアにブレスレットの贈り物をする場面がある。ある程度好感度が上がらないと貰えない特別なものだ。前世では、このブレスレットには身に付けた者を守る魔法がついていると説明があった。
これを貰えたら、バッドエンドにはならない、と言う証。
ゲームの中ではアーヴィンが、渡すところで終わったのだが、実物は腕につけてくれた。アーヴィンのはにかんだ笑顔は、アリシアの脳を蕩していく。
アリシアは、前世では重課金者だった。なのに、このアーヴィンのブレスレットについて、何も知らないに等しかった。
これはただのブレスレットではなく、呪いのブレスレットであることを、アリシアは全く知らずにいた。
(アーヴィンからブレスレットは受け取ったし、一人目は攻略でいいのよね?これからは疲れたら、アーヴィンに癒してもらえるから楽だわ。)
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