逆ハーENDは封じられました

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本編

逆ハー狙いのヒドイン

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アリシア・フォーゼ男爵令嬢は気がついた。

自分が転生者で、前世に嗜んだ乙女ゲームのヒロインであると言うことに。自分が、まさか乙女ゲームのヒロインになれるなんて、何という幸運だろう。アリシアは、呆気に取られた家族そっちのけでガッツポーズを決めた。

フォーゼ男爵家は貴族の中では男爵と一番爵位が低いが名門で歴史は長い。アリシアは二女ではあるが、マナーや、学問など教育は受けてきた。どちらかと言うとおとなしいタイプのご令嬢だった。

そんなご令嬢がガッツポーズを決めてハイテンションで震えているのだから、男爵家は真っ青になった。

病気を疑い、領地へ引きこもり、療養と言う名目の再教育。アリシアは淑女の中の淑女と呼ばれる程に、マナーが向上した。


(これは逆ハー狙う?狙っちゃう?)なんて、一瞬でも考えた自分が馬鹿みたいだ。これではよくあるヒドインになるところだった。命拾いした、と男爵家の教育係に感謝した。

ところが、前世の業はどうやら凄まじいものだったようだ。王都で住むようになったアリシアの目に映ったものは、ゲーム画面でみたスチルの背景だった。

湧き上がる興奮を抑えられない。アリシアは、馬車を降りて駆け出したかったが、そんなことをすれば、また領地へ閉じ込められるとわかっていたので、今は諦めた。

絶対に、次こそはゆっくり歩いてやる、と胸に秘め。


前世のアリシアは、イケメンに滅法弱かった。前世では生きがいになっていたほどやり込んだ乙女ゲーム。毎日ニヤニヤしながら、やり続け、このゲームに課金するために働いていたといっても過言ではない。

アリシアの前世の一押しは脳筋の騎士団長の息子のアーヴィン・メルト。侯爵家の二男である彼は短めの茶髪の爽やか系男子。ゲームの中では、比較的攻略しやすいイケメンで、彼のバッドエンドも友情エンドのみの、初心者向け。

ドロドロの王太子ルートが前世では一番好きなストーリーだったが、王太子の顔があんまり好みではなく、声優さんもアーヴィンの方が好きだった。

アーヴィンが王太子なら完璧なのだが、王太子が脳筋だと困るので、仕方ない。

初心者向けなので、アーヴィンとは一番最初に出会う。アリシアにはアーヴィンのスチルがはっきりと頭に浮かんでいた。

「よお、ちっこいの。」
そう言って声をかけてくるので、振り返ると眩しい笑顔が降ってくる。

アリシアはゲームを思い出してうっとりしている。

ポンポンと先ほどから肩を叩いてくる人がいる。もう、邪魔しないで。何よ。しつこいわね。私とアーヴィンの邪魔をするんじゃない!

「おい、お前、大丈夫か?」

アリシアの目の前に現れたのは、あのアーヴィン・メルト本人だった。

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