親が決めた婚約者ですから

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死と救済①

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「君が悪いんだ、私達の邪魔をするから!」

リチャードの目の前には可憐な少女。貴族令嬢として笑みを崩さない彼女だが、何と無く戸惑っているような気がする。リチャードは、何故か激昂していて、その少女を責め立てていた。

彼女との対面で周りに騎士も護衛として並んでいるのにそれさえ見えなかったのか、リチャードはただ邪魔な者を排除しようと足を踏み入れ、騎士に拘束された。

牢に入っても気づかなかったのは、婚約者になすりつけようとした罪は全て冤罪だと分かり切っていたこと。リチャードの代わりに婚約者のそばにいたのは王族だったこと。

彼女を庇うための王族に対して彼はありえない行いをしようとしていた。

それは全て当時のリチャードが愛した女性に唆された後のことだった。

一度目の死の後、エミリアは、罪人として国を出るが、隣国の王子を誑かして、再度国に舞い戻り、全てをリチャードの所為にして、罪を逃れ、幸せになる。


彼女は主人公として不遇から立ち上がり幸せを手に入れる。リチャードは彼女と一緒に幸せになれる存在などではなく、あくまでも踏み台として、死ななければならない。

一度目の死を経験したのち、エミリアは満足したが、満足しない者が現れた。全ての罪をその身に着せられたリチャードを愛する、彼の父がアルマの才能を見出し、彼女にやり直しを頼んだのだ。

だからリチャードは舞い戻ることができた。リチャードは舞い戻ったものの、一度目の記憶はなかった。それはアルマ以外には無くて当たり前だったのに。

何度かやり直しをした中で、セーラ嬢にその記憶が残ってしまった。

セーラ嬢が考えた結果、自分にも同じような能力があることがわかったという。

「アルマ嬢やエミリア嬢みたいなものではないの。何か今から起きる、とかそういう小さな予知があるの。多分エミリア嬢の言う女神とやらも、何となくわかる気がするのよ。え?王女がどこに関わってくるのか?

ええと、何度かやり直しをしていくにつれ、エミリア嬢と貴方の関係性も変わって行ったの。それで煮え切らない態度の貴方を焚き付ける方法として、貴方が巻き込まれて死ぬ、と言う方法を思いついたのね。

隣国には王子の他に庶子の王女がいるの。一度目の人生ではとても我儘だったけれど、根は良い子だった彼女を使って、貴方を殺そうと画策したの。こうなるともう手段を選ばなくなってきたのね。辺境伯まで巻き込んで、貴方さえいなくなれば、と。」

「それは成功したのですね。」

「ええ。騙されたとはいえ恋人同士だった過去よりも、利用されそうになったものの恋人ではない位置の方が、本命に会った時に反応が良いことに気がついたのよ。一度それで成功すれば、何度もやりたがるのが、ああいう人間の特徴よ。彼女は味を占めてしまったの。」
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