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当事者① アルマ視点
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「アルマ、聞けた?」
コンコンコン、と扉が叩かれ、返事を返していない内に開かれた先には、オーブリーの顔があった。
「王女様、返事を待ってから扉を開けないと。」
アルマの小言を聞き逃して、王女様は早く早く、と急かす。
アルマはその姿に特訓の成果が何一つ身になっていないと苦笑した。
「もう!いいじゃない。偽装なんだから。」
大きな声で喚く王女にハラハラしながらも、一応周りを見渡し、知らない者がいないことに安堵する。
「王女様!声が大きいです!」
「……ごめんなさい。って、貴女の婚約者様は此方に来られないでしょう?バレたところであの様子じゃ、理解できないわよ。」
アルマはこの傍若無人とも取れるオーブリーの天真爛漫さにこの配役を押し付けたのだけど、早まったかな、と些か後悔していた。
オーブリーは隣国の王女となっているが、実際には平民だ。いや、本当ならもう少し早いタイミングで王女を名乗る庶子が現れる筈だった。だけど、待てども待てども王女が出てこない。
これがないと、話が始まらないと言うのに。困ったアルマは、本物が出てくるまでの間、王女様のフリをしてくれる代役を用意することにした。
王女様の名前も境遇も、名乗り出た状況もましてや今後彼女が辿る人生もアルマは知っている。役者の卵に声をかけて、見つかったのがミリーという、若い役者だった。
王女様のフリをしても、あまりにも顔が違えば違和感が勝ってしまう。だから、本来のオーブリーに似た顔立ちの彼女を選んだ。
ミリーは日に日にオーブリーになっていった。簡単な礼儀作法はアルマが教えて、覚えの早い彼女はあっという間に元平民の王女様になっていた。
誤算というと、本来の話ではオーブリーは一方的に好きになり乗り込んだ辺境伯家で、アーサーという子息に嫌われてしまうのだが、ミリーの持ち前の明るさと、人懐こさに、嫌われるどころか好かれてしまったところぐらいか。
しかも、アーサーは、アルマが知る限り、考えるよりもまず動いてしまうタイプの脳筋タイプだったのに、現実には真逆の、厄介な男であった。
ニコニコしながら、アルマとオーブリーがやろうとしていることを見破り、脅迫までするのだから、タチが悪い。
「君たちに巻き込まれたからには、私だって危ない橋を渡ることになるんだ。当事者は守られているのにおかしいね。」
アルマの婚約者が当事者になるかもしれないことをどこかからの情報で知ると、リチャードを呼び寄せる。
リチャードは呼び寄せられたことすら、気づかずにノコノコと現れ、アルマはアーサーの恐ろしさに気づいた。
アルマの知識には元があるが、アーサーの知識には元がない。ただ今の状況を的確に理解する能力に優れている。本来なら辺境伯の次男に収まっているような男ではないのだが、本人がこのままで満足しているようなので、アルマはどうすることもできないでいた。
コンコンコン、と扉が叩かれ、返事を返していない内に開かれた先には、オーブリーの顔があった。
「王女様、返事を待ってから扉を開けないと。」
アルマの小言を聞き逃して、王女様は早く早く、と急かす。
アルマはその姿に特訓の成果が何一つ身になっていないと苦笑した。
「もう!いいじゃない。偽装なんだから。」
大きな声で喚く王女にハラハラしながらも、一応周りを見渡し、知らない者がいないことに安堵する。
「王女様!声が大きいです!」
「……ごめんなさい。って、貴女の婚約者様は此方に来られないでしょう?バレたところであの様子じゃ、理解できないわよ。」
アルマはこの傍若無人とも取れるオーブリーの天真爛漫さにこの配役を押し付けたのだけど、早まったかな、と些か後悔していた。
オーブリーは隣国の王女となっているが、実際には平民だ。いや、本当ならもう少し早いタイミングで王女を名乗る庶子が現れる筈だった。だけど、待てども待てども王女が出てこない。
これがないと、話が始まらないと言うのに。困ったアルマは、本物が出てくるまでの間、王女様のフリをしてくれる代役を用意することにした。
王女様の名前も境遇も、名乗り出た状況もましてや今後彼女が辿る人生もアルマは知っている。役者の卵に声をかけて、見つかったのがミリーという、若い役者だった。
王女様のフリをしても、あまりにも顔が違えば違和感が勝ってしまう。だから、本来のオーブリーに似た顔立ちの彼女を選んだ。
ミリーは日に日にオーブリーになっていった。簡単な礼儀作法はアルマが教えて、覚えの早い彼女はあっという間に元平民の王女様になっていた。
誤算というと、本来の話ではオーブリーは一方的に好きになり乗り込んだ辺境伯家で、アーサーという子息に嫌われてしまうのだが、ミリーの持ち前の明るさと、人懐こさに、嫌われるどころか好かれてしまったところぐらいか。
しかも、アーサーは、アルマが知る限り、考えるよりもまず動いてしまうタイプの脳筋タイプだったのに、現実には真逆の、厄介な男であった。
ニコニコしながら、アルマとオーブリーがやろうとしていることを見破り、脅迫までするのだから、タチが悪い。
「君たちに巻き込まれたからには、私だって危ない橋を渡ることになるんだ。当事者は守られているのにおかしいね。」
アルマの婚約者が当事者になるかもしれないことをどこかからの情報で知ると、リチャードを呼び寄せる。
リチャードは呼び寄せられたことすら、気づかずにノコノコと現れ、アルマはアーサーの恐ろしさに気づいた。
アルマの知識には元があるが、アーサーの知識には元がない。ただ今の状況を的確に理解する能力に優れている。本来なら辺境伯の次男に収まっているような男ではないのだが、本人がこのままで満足しているようなので、アルマはどうすることもできないでいた。
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