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不正解
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宰相閣下に聞けば良い。その言葉は、常日頃リチャードが周りに言っていたことだ。異論など言えるはずもない、そう言う意味で吹聴していた言葉をまさか返されると思っていなかった。
リチャードは自身で調べるしか方法はない。こんな簡単なことも調べられない愚か者だと、自分で言いふらすようなものだ。
父に泣きつくのは最終手段。そんな風にリチャードは考えていた。同時に自分が調べるのだから答えなんてすぐにわかるに決まっていると。ただし、その目論見は外れることになる。
何度か調べると、きな臭い王女の話は手に入る。だが、それと婚約者の話がどうしても結びつかない。何が原因か、判断がつかないのだ。
話は単純なことだった。
新しく見つかった王女が自分の婚約者に辺境伯の次男を願っただけのこと。彼は「愛する人がおりますので。」と、縁談を断りつづけているが、その相手は誰だかわからない。リチャードはもしかして、その相手がアルマ嬢なのかと邪推したがどうやらそうではないらしい。
そもそも、デニス伯爵家と、辺境伯家の接点が存在しないのだ。ならば、アルマ嬢と次男の接点を探しても同じ。
隣国王家とアルマ嬢の関係も勿論ない。
どう言う訳か、たいしたことはわからない。焦っていた矢先、リチャードは父から思わぬ言葉を貰う。
「お前が今探っていることに首を突っ込むな。ややこしくなる。」
リチャードが今調べていること、とはまさに自身の婚約者のこと。
「父上、どうして私の婚約者に彼女を選んだのですか?」
リチャードを見て、頭を振ると父である宰相は、「不正解だな。」と呟いた。
「一つ言えることは、お前に能力がないからだ。」
リチャードは思わぬ答えに唖然とした。自分に能力がない、と言われたこともそうだが、「不正解」と言われたことが、衝撃だ。
何が「不正解」で、何がどうなれば「正解」なのか。
リチャードは手探りでも経験則から荒唐無稽と言われようといくつか仮説を立てて見た。どれもしっくりこないのは当然。何の証拠もありはしない。
だが、裏付けは必要だ。荒唐無稽な話を信じられるのは、そこに根拠があるからだ。
ただし、邪魔だと一度牽制されたのだから、また表立って動くと今度こそ切り捨てられるかもしれない。
リチャードは自分の能力の無さをこんな風に思い知らされるとは思っていなかった。
一つはっきりしていることは、隣国の王女の問題は、父とアルマ嬢に関連していることで、そこにリチャードが入るとややこしくなるということだ。
父からの思いがけない課題に、リチャードは天を仰いだ。
「確認してみるしかないか。」避けていた婚約者との交流をする以外には有効な手段がない。
先触れを出して、デニス伯爵家へ向かうが、生憎アルマ嬢は留守だった。
リチャードは自身で調べるしか方法はない。こんな簡単なことも調べられない愚か者だと、自分で言いふらすようなものだ。
父に泣きつくのは最終手段。そんな風にリチャードは考えていた。同時に自分が調べるのだから答えなんてすぐにわかるに決まっていると。ただし、その目論見は外れることになる。
何度か調べると、きな臭い王女の話は手に入る。だが、それと婚約者の話がどうしても結びつかない。何が原因か、判断がつかないのだ。
話は単純なことだった。
新しく見つかった王女が自分の婚約者に辺境伯の次男を願っただけのこと。彼は「愛する人がおりますので。」と、縁談を断りつづけているが、その相手は誰だかわからない。リチャードはもしかして、その相手がアルマ嬢なのかと邪推したがどうやらそうではないらしい。
そもそも、デニス伯爵家と、辺境伯家の接点が存在しないのだ。ならば、アルマ嬢と次男の接点を探しても同じ。
隣国王家とアルマ嬢の関係も勿論ない。
どう言う訳か、たいしたことはわからない。焦っていた矢先、リチャードは父から思わぬ言葉を貰う。
「お前が今探っていることに首を突っ込むな。ややこしくなる。」
リチャードが今調べていること、とはまさに自身の婚約者のこと。
「父上、どうして私の婚約者に彼女を選んだのですか?」
リチャードを見て、頭を振ると父である宰相は、「不正解だな。」と呟いた。
「一つ言えることは、お前に能力がないからだ。」
リチャードは思わぬ答えに唖然とした。自分に能力がない、と言われたこともそうだが、「不正解」と言われたことが、衝撃だ。
何が「不正解」で、何がどうなれば「正解」なのか。
リチャードは手探りでも経験則から荒唐無稽と言われようといくつか仮説を立てて見た。どれもしっくりこないのは当然。何の証拠もありはしない。
だが、裏付けは必要だ。荒唐無稽な話を信じられるのは、そこに根拠があるからだ。
ただし、邪魔だと一度牽制されたのだから、また表立って動くと今度こそ切り捨てられるかもしれない。
リチャードは自分の能力の無さをこんな風に思い知らされるとは思っていなかった。
一つはっきりしていることは、隣国の王女の問題は、父とアルマ嬢に関連していることで、そこにリチャードが入るとややこしくなるということだ。
父からの思いがけない課題に、リチャードは天を仰いだ。
「確認してみるしかないか。」避けていた婚約者との交流をする以外には有効な手段がない。
先触れを出して、デニス伯爵家へ向かうが、生憎アルマ嬢は留守だった。
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