友人は自力で選びますので

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自白剤の効果

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「今日の濃度は高かったようだな。どれだけ入れたんだ。味が変わったのか難しい顔をしていたぞ。」

「いやあ、そんな。いつもと同じくらいですよ。累積した分が効果を発揮したんですかね。」

「それにしても本当に虫唾が走るな。あれが最有力候補?第二王子を何だと思っているんだ。」

アンジェリカのいない部屋で男達は思いの丈をぶつける。メンバーは第二王子ディランと側近の男と護衛。

第二王子ディランに気に入られる為だけに何の罪もない男爵令嬢を悪に仕立て上げる。そのやり方は、わかるとはいえ、相手側からすると、とてつもなく幼稚で

アンジェリカとの会話に、自白剤を少しだけ混ぜ始めたのはいつの頃からか。ディランは遠い目をして過去に思いを馳せる。

ディランがアンジェリカとの縁談に難色を示したのは、彼女が侯爵家の次男を罠に嵌めた時からだ。

半分とはいえ血の繋がる兄を、何の躊躇いもなく陥れるその性根が気に入らない。それに友人であり後に家族になる伯爵令嬢に汚れ役を押し付けているところも。ディランはアンジェリカを前にすると怒りでどうにも赤面してしまうのだが、彼女がそのことに気づいている様子はない。

自白剤の効果でいつもより多めにペラペラと、普段は隠している本音を話してしまっているが、そのことにすら気づいた様子もない。

「ダリルは婚約者の救済に失敗した、と思っているが、今回のことで、彼女達が槍玉にあがることはないだろう。上位の令嬢から命令されたなら、どうにもならないことではあるし、多分あの女はダリルの婚約者の名前すら知らないだろう。」

アンジェリカ・ルッツはそういう人間だ。自分達より低い立場の者達は生きている意味すらない、と本気で思っている。

「下手をすればダリルのことすら知らないかもしれない。彼女にとっては取るに足らない人間に大小もないだろうし。」

「ああ。あとどれだけあの女に付き合えば、ちゃんとした婚約者を迎えることができるのだろう。」

男三人は、嘆きの程度はあれど、皆アンジェリカに辟易し、できれば早く帰ってほしい、と考えていた。

侯爵家に次男がいた頃は、ディランの方も何ならアンジェリカにだって優しくできたかもしれない。

次期当主に不満は何もなかったし、兄が王太子になった暁には侯爵家と共に臣下にくだるつもりだった。第二王子と言う第一王子のスペアとしているならば、厄介な相手をどうにか惹きつけてしまいたいとの観点から彼女を婚約者として迎えてもいいと思っていた。だけど、それは浅はかな考えだった。



自分の価値を上げる為だけに他人を貶すと言うことは、自分では自らを上げられる力がないと言うことだ。

努力をしない問題しかない侯爵令嬢をディランは娶る気にはなれずに、のらりくらりと明言を避けて来たのである。

侯爵令嬢に盛った自白剤は軽いもので人体に影響はない。とはいえ、昔は少しは生じていた罪悪感も今では跡形もなくなっている。

彼女は自身が侯爵令嬢であることに誇りはあれど、その質には興味がないらしい。

側近の男は今アンジェリカから聞いた証言の裏を取る為に部屋を出て行った。




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