王妃様は悪役令嬢の味方です

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第四部

見えない手

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「アレに余計なことを吹き込んだ者がいるわね。」

元がただの噂話であっても、彼の手紙を脱落者の元へ届けた者がいる。彼には王妃の許可がないものは何もできないと言う制約がある。

まさか、デズモンド公爵家に背いていることになる、とは思ってもいないのでしょうが。

「シャーロット、お前が私に跪いて愛を乞うなら、妾にしてやっても良いぞ。」

あの時傷がついたのは私ではない。婚約を解消したら女性が傷物なんて、愚かな考えは変わらなかったようだ。しかも息子の元婚約者を妾に望むなんて、色ボケが進行しすぎている。

「早々にお引き取り願うわ。適当な女性を見繕うよりはアレを処分した方が早いわ。」

「あの方に再度愚かな男の役をあたえることもできますが、いかがなさいます?」

「ええー、時代錯誤が甚だしいわ。あまりにも愚かでアレをまた世に出すことは考えていないわ。アレは注目を受けることが大好きなのよ。人知れずひっそりと処分すればそれが一番彼には堪えるはずよ。」

彼の手紙をサイラス・リンドの元へ運んだのは、入ったばかりの男だった。彼は何の含みもなくただの善意で手を貸している。見窄らしい老人が哀れに映ったと言うが、まさかそれが陛下であるとは思わなかったらしい。

アレにつけていた侍女については、その男の目撃した侍女とは別の侍女がついていて、男の目撃した侍女の素性を探っている。

王妃は自室に戻り、あるノートを取り出すと、パラパラと目を通す。

「侍女は見つからないでしょうね。」
そういえばあの時も見えない手が働いていたのだから。ノートには前王妃の姉が書いた事実が書き留められている。人間が与えられた試験に対し、悪あがきをしてあるべきところから回避するにつれて、どこからか見えない手が現れて、盤面をひっくり返そうとする。

その侍女が見えない手の仕組んだことならば、彼女の素性はわからないに違いない。

でも、見えない手は何をしたいの?サンドラを守る為に私達が動くことは絶対だ。ならば、前の愚かな王子を再度出すことの意味は何だろう。

デズモンド公爵家の力によってねじ伏せた以前のやり方に不満があると言うことなんだろうか。

それか……もしかして、今回の愚かな男役を彼が担うことによって、ウィリアムが助かるなら、見えない手の采配に頼るべき?

誰よりも悪役に相応しいアレに派手に散ってもらうのもアリかもしれないわ。

サンドラには気味の悪い不快な立場に立ってもらうことになるけれど。

王太子が誰であれ、邪魔になる陛下を退場させるには今が良い時期になるだろう。




ノートを仕舞い込んで鍵をかけると、エドワードに約束を取り付ける。

デズモンド公爵家には最初から最後まで見てもらわなくちゃならない。王妃が下した結論と、愚かだった男の末路を。

ウィリアムはあんな風に育たなくて本当に良かった。もし息子が父のようになっていたなら、このタイミングで見えない手が悪さをすることはなかった。

王妃はほんの少しだけ、自分の努力が報われた気がした。



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