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妹に何があったのか①
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セリーヌの妹クレアには夢があった。夢というよりは自分がそうしたいと思っていたもはや決まり事。素敵な王子様と結婚し、伯爵家を継ぐ。自分は可愛いから両親だけではなく、男性に好かれるタイプだから、結婚は可能。だけど、姉が邪魔。何せ、姉は自分が伯爵家を継ぐ気でいる。当主である父は姉に全てを任せて遊んでいるから、クレアもそうしようと思っていた。結婚するのも妊娠するのも後継者を産むのも家を継ぐのも私。姉は仕事をするしか脳がないから、仕事をするならば仕方がないから家に置いてあげる。
婿入りだけど働かなくていいのだから、私の婚約者になりたい男はたくさんいると思ったのに、やれ学歴がないだの、話が続かないだの、挙げ句の果てに、もう少し考えて話をしなよ、と上から目線で話す男ばかりで、うんざりしてしまう。
折角この可憐な私が可愛くにこにこしてあげているのに、女学校にも入らなかったことをわざわざ理由を聞いてきては、ため息をつく。
私が理解できない難しい話をしたがるのは自分の賢さをアピールしたいみたいで可愛らしいけれど、「君が後継者なら伯爵家は潰れるから考え直した方が良い。」なんて失礼よ。
その割に、あんなに地味な姉を使ってまで私に嫉妬させたいみたいな態度を取るのよ。
「君はある意味、学園に入らなくてよかったかもな。チヤホヤされて、その気になって、すぐに男に騙されそうだ。」
両親は私を大切にしなさそうな彼に良い印象はなかったみたいで、婚約とはならなかった。
一度、私ではなく姉の名前で釣書が届いたことがある。調べて見たら何と公爵家でしかも相手は六十代。後妻で介護要員に欲しいということらしくて、結構いいかも、とは思ったのだけど、それなら肩書だけでも公爵夫人になって、私より上の立場になってしまう。それは私のプライドが許さない。だから、勿体無いけれど丁重に断った。
私が幸せになるのに、姉の犠牲は必要なこと。それが我が家におけるルール。父だって母だってそう言っていたし。それは今後も変わらない筈だった。
おかしくなったのは、そう、あの男が来てからだわ。姉の執務室にいつのまにか入り込んだ見知らぬ男。私が知らないのに、両親は彼を昔からいた男だという。だけど誰も彼の名前を知らない。アレの見た目が良ければ、私のものにしたかったけれど、アレは姉によく似合った冴えない男だった。
良い男なら私に取られるから、とあの程度の男しか捕まえられなかったなんて、可哀想。クレアは自分のことは棚に上げて、モテないセリーヌを気の毒に思っていた。
ああ、なら、あの侍従をその気にさせて姉と結婚させればいいんじゃない?相手が使用人なら伯爵家から離れたら平民になるんだもの。何とか家にしがみつきたいと思うんじゃない?
貴族令嬢に生まれたのだもの。平民のしかも使用人と結婚するなんて、屈辱よね。
妹は侍従の後を追う。彼は父付きのメイドと関係を持っているみたい。うわ、最高の逸材ね。女癖が悪く、平民の使用人で不細工。こんなにいい条件の婚約者はいないわ。私は彼、リゼルに話を持ちかけようとした。姉を貰う覚悟があるかどうか。彼は案の定、姉より私の方がタイプだと白状した。そんなことはわかってるわ。だけど、私はこんな不細工な男は嫌。
話を聞いていると、彼は姉の下で働いているうちに姉を絶望させたいと思ったらしい。あんなに可愛がっていた彼からそんなふうに思われていたなんて、聞いたら絶望なんてすぐ見られそうだ。
「可哀想なお姉様。」
クレアは男の働きを期待する。姉を絶望させたいのは自分も一緒。
男と笑いあった瞬間に目の前が真っ暗になった。
婿入りだけど働かなくていいのだから、私の婚約者になりたい男はたくさんいると思ったのに、やれ学歴がないだの、話が続かないだの、挙げ句の果てに、もう少し考えて話をしなよ、と上から目線で話す男ばかりで、うんざりしてしまう。
折角この可憐な私が可愛くにこにこしてあげているのに、女学校にも入らなかったことをわざわざ理由を聞いてきては、ため息をつく。
私が理解できない難しい話をしたがるのは自分の賢さをアピールしたいみたいで可愛らしいけれど、「君が後継者なら伯爵家は潰れるから考え直した方が良い。」なんて失礼よ。
その割に、あんなに地味な姉を使ってまで私に嫉妬させたいみたいな態度を取るのよ。
「君はある意味、学園に入らなくてよかったかもな。チヤホヤされて、その気になって、すぐに男に騙されそうだ。」
両親は私を大切にしなさそうな彼に良い印象はなかったみたいで、婚約とはならなかった。
一度、私ではなく姉の名前で釣書が届いたことがある。調べて見たら何と公爵家でしかも相手は六十代。後妻で介護要員に欲しいということらしくて、結構いいかも、とは思ったのだけど、それなら肩書だけでも公爵夫人になって、私より上の立場になってしまう。それは私のプライドが許さない。だから、勿体無いけれど丁重に断った。
私が幸せになるのに、姉の犠牲は必要なこと。それが我が家におけるルール。父だって母だってそう言っていたし。それは今後も変わらない筈だった。
おかしくなったのは、そう、あの男が来てからだわ。姉の執務室にいつのまにか入り込んだ見知らぬ男。私が知らないのに、両親は彼を昔からいた男だという。だけど誰も彼の名前を知らない。アレの見た目が良ければ、私のものにしたかったけれど、アレは姉によく似合った冴えない男だった。
良い男なら私に取られるから、とあの程度の男しか捕まえられなかったなんて、可哀想。クレアは自分のことは棚に上げて、モテないセリーヌを気の毒に思っていた。
ああ、なら、あの侍従をその気にさせて姉と結婚させればいいんじゃない?相手が使用人なら伯爵家から離れたら平民になるんだもの。何とか家にしがみつきたいと思うんじゃない?
貴族令嬢に生まれたのだもの。平民のしかも使用人と結婚するなんて、屈辱よね。
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話を聞いていると、彼は姉の下で働いているうちに姉を絶望させたいと思ったらしい。あんなに可愛がっていた彼からそんなふうに思われていたなんて、聞いたら絶望なんてすぐ見られそうだ。
「可哀想なお姉様。」
クレアは男の働きを期待する。姉を絶望させたいのは自分も一緒。
男と笑いあった瞬間に目の前が真っ暗になった。
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