睡魔さんには抗えない

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睡魔さんと専門家

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「思い当たる節はある、って顔だね。」
ライアスは苦笑しつつも、セリーヌの為にどうするのが一番良いかを考えてくれると言う。その上で伯爵家の家族についてセリーヌは自分がどうしたいかを問われることになった。

彼らを対価にすることは、多分睡魔だけでなく、王女殿下もその可能性を知っていたに違いない。

「私が王女殿下に助けを求めたから動いてくださった結果であって、それについて文句を言うつもりはありません。途中でその可能性に思い当たり、それでも使役を辞めなかった身としては、殿下を責める立場にありませんし。」

「多分王女殿下は、対価となった人間が死ぬことはないから大丈夫だと思ったのだろう。それは私もそう確信しているが、まあ影響を受けないことはないわけで。ほぼ死んだような生活になるのだがそれは貴女を苦しめた罰だとでも思っていたのだろう。」

その辺りは、セリーヌ自身にも身に覚えはあった。これまで搾取され続けてきた身としては少しぐらい自分の為に犠牲にしてもいいだろう、という風に。

「王女殿下にも言えることだが、その思考こそが奴らの影響下にある、と言えるのかもしれない。一度その指輪を見せて貰えないだろうか。彼らは自分達の力を過小に見せて、過ごしやすい環境にいることを企んでいる可能性がある。だから、指輪という容れ物から力を漏れさせて、人間を操ることができているのだろう。」

ライアスは自分なら魔の企みを阻止できるかもしれない、と言う。

セリーヌはここまで話して彼の為人をみていたが、正直彼にもそこまで全てを信じていいのか判断がつかなかった為に、すぐに返事をすることはできなかった。

何というか研究者であるから、なのかはわからないけれど、どことなくリゼルに似た雰囲気をライアスに感じたからだ。

睡魔に都合のよい考えを植え付けられたように、ここまでの話は、彼に誘導されたものではないか、判断がつかなかったからだ。

「あの、王女殿下はあの指輪を私に渡して下さいましたが、あれは本来王家で保管しなければならないものではないのでしょうか。私はその時頭が回っていなかったので結局受け取ってしまいました。」

「うーん、アレは実のところ曰く付きの代物でして……ただ、王女殿下に渡ったのであれば決して安全性に異常がある、と言うものでは無かったのだが……」

「それも仕組まれた、とそう言う話ですね。」

セリーヌとライアスは目を見合わせて互いに苦笑を浮かべた。

「睡魔の企みを確認するならこのまま様子を見るのも手ではありますが。それだと何かあったら怖いですので。貴女にはこれをお渡ししておきます。これは魔の影響を受けにくくするもので、相手からはいつもと同じように見える、これもまた曰く付きと言われたものです。これについてはご心配なく。もう人体への影響はない、と判断されたものですから。

コレがうまく作動すれば、私自身を信じて見て貰えると思います。」

セリーヌは自分が勝手に抱いた思いを悟られていたことに驚きと、恥ずかしさを感じた。

「申し訳ありません。親身に相談に乗っていただいたのに。」

「いえいえ。よく言われるのです。研究者はやはり奴らに似てしまうのです。私も貴女を利用できると考えてしまったことも確かです。なので、コレで手打ちにしましょう。」

次に会う日にちを決め、セリーヌは伯爵家に戻る。リゼルは何があったのかいつもより肌の艶が良く見えた。



「何か不思議な匂いがするね。」
セリーヌの周りを犬のようにクンクンと匂いを嗅いで回る。

だけどそれが何かはわからないみたいだ。セリーヌは緊張がバレないように平静を装っていたが、睡魔は何が理由かわからないからか、すぐに興味をなくしたようだった。念の為、隠しておいて良かったとホッとしたのも束の間、セリーヌは久しぶりに妹を見ることになるのだった。

妹はセリーヌを見るといつも意味ありげな笑みを浮かべる。

だけど今はじっとリゼルを眺めているばかり。

「ねえ、その男。私に頂戴。」

セリーヌはリゼルにどういうことかと問いかける。妹は確かリゼルが魅力的なようには見えないのではなかったか。

リゼルははっきりと、妹に「お断りします。」と伝えて、頭を下げた。

妹は急にまた倒れ、その後目を覚ますことはなかった。

セリーヌはリゼルを見遣るも、リゼルからの説明は何もなく。ライアスに、聞かなくてはならないことが増えた瞬間だった。

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