お花畑聖女は願う

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嫉妬

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聖女は女神の愛し子である。それは建国からずっと伝えられている常識。聖女という職業は今ではただの呼び名であり、特に凄い力を持つことはなかったが、一種のステータスみたいなもので、自身のアクセサリーのように、聖女と言う肩書を身につけたい者もいた。

曰く聖女になれば、王子と婚約できるだとか、社交界を牛耳れる、だとか。思い思いにある種の特権があるのではないか、と想像は膨らむが事実はそんなことはなく。

聖女の中でも当たり前だが、王子と婚約しない者もいたし、平民だった場合もあった。

だが、いくら否定されても欲に支配されて話を聞いていない人間はいる。だが女神だって、可愛くない子を愛し子だとはいえない。祈りを全くしない俗物達を可愛いと思うわけもない。結果、女神は愛し子を限定した。愛し子と呼ぶに相応しい条件を付けたのだ。女神は人の心が移ろいやすく、脆いものだと知っている。つい、さっきまで愛し子と呼ぶに相応しい人物が一瞬で堕ちることだってある。

だからこそ、聖女の認定は然るべきタイミングでなければならない。

女神は最初に決めた取り決めから、聖女が聖女らしくない思考に囚われたり、行動が変わってしまった場合には、聖女の称号を剥奪することもある。

聖女オーロラを認めないご令嬢は、判断を女神に委ね、そう見えるように仕掛けていたが、そんな工作に女神が引っかかる訳もない。

聖女を軽んじる彼らは、女神すらも敬うことはなかった。だから、自らは選ばれないのだとは気づきもせず。

ハーベイ元伯爵夫人は、自分の娘のアメリアが聖女に選ばれると信じていた。女神の愛し子の資格も十分だと感じていたからだ。実際この頃のアメリアはまだ純粋だったから選ばれてもおかしくはなかった。

だが、選ばれたのはハーベイ元伯爵夫人の若い頃に一度も勝てなかった忌々しい女の娘オーロラだった。ライバル関係を意識していたのは一方的なものだったが、本人がいないことをいいことに、オーロラのありそうな良くない噂を少しずつ流して彼女を孤立させようと画策した。

ハーベイ伯爵が夫人のおかしな行動に気がついた時には、公爵家からの抗議が届き、味方が減った後だった。アメリアは元々公爵令息のクリスを狙っていた。だが、クリスとオーロラが婚約したと報告を受けてからずっとオーロラを敵として認識していたのである。

アメリアがロジーナに手紙を送ったのは、憎きオーロラを一緒に倒そうと思ったからだ。

待てども待てども来ない返事に、アメリアは見当違いの方向に怒りをぶつけた。

そう、オーロラである。
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