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傲慢
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聖女オーロラに対してはモヤモヤした気持ちを抱いているご令嬢達でも、オーロラの兄や王太子にはそんな気持ちを持つ人間は少なかった。何故かというと、彼女達は聖女マユとのことで婚約解消になった為に、今は婚約者のいないご令嬢だからだ。聖女オーロラの夫である王太子に関しても側妃を持てる身分ではあるので側妃を狙うご令嬢も勿論いたりした。
中でもオーロラの兄であるレオンは結婚もしていなければ未だ婚約者すらいない優良物件である。グレイズ・アドナーの元婚約者であるクロエは、どうにかしてレオンに取り入ろうと、躍起になった。
レオンを狙うのはクロエの他にもやはり元婚約者をマユに奪われたご令嬢達。高位貴族の中で歳の近い、婚約者のいない人物は限られている。
クロエは第二王子イーサンの元婚約者アメリアが婚約の仲介をロジーナを頼ったと聞いて、少しホッとしていた。アメリアでも爵位は此方が上だから、どうにでもなるが、アメリアの性格を考えるに分が悪い。厄介なのは、マユの後に聖女の仕事をしているエレナぐらいだが、女性としての価値なら自分の方が上だと自信のあるクロエは何も恐れてはいなかった。
レオンは決して女嫌いではないのだが、妹を嫌っている女達はどうも信用できなかった。同じ愛し子なのに、ロジーナには丁寧な対応のご令嬢が妹オーロラには横柄な態度を取るのが、不思議でならない。そうして、オーロラを大切にするご令嬢を探している内に婚約者を作るのが遅くなってしまった。
クロエ・コリンズはあんなに蔑んでいた妹を今は褒めている。性格は顔に出る。どれだけ言葉でうまく取り繕っていても彼女は気づいていないのか。その醜悪な顔を。
「私は妹を大切にしない者は、信用しないんだ。」
「ええ、存じてますわ。いつまでも仲良しでいらっしゃいますもの。」
「ならば、貴女との婚約は無理だとわかっていただけますか?」
「私も女神の愛し子であるオーロラ様に苦言を呈したことは勿論ありますが、あれはただの親切のつもりでしたのよ。殿方をすぐに虜になさるから。魅力的すぎるのも困ったものですわね。」
「どうして、貴女が?」
「はい?」
「貴女がオーロラに苦言を呈す立場なのか、と聞いたんだ。何を持って妹より貴女が上になったつもりかと聞いた。」
「嫌ですわ。だって彼の方、レオン様と全く似ていらっしゃらないでしょう?義妹であることはわかっておりますわ。」
「ああ、そこからか。オーロラは私の実妹だ。父も勿論母も同一のれっきとした生まれながらの公爵令嬢だ。確かに私達が似ていないことであらぬ噂が立てられたことはあったが、すぐにその噂は消えた筈だ。母方の祖母の若い頃にオーロラはそっくりだ。隔世遺伝というやつだ。それで?言い訳は思いついたかい?」
クロエはずっと信じていた噂が嘘であり、レオンの怒りを目の当たりにしてようやく自分が間違えたことを知った。
「オーロラの出自を疑い噂を撒いたのはハーベイ元伯爵夫人だよ。だから、もう彼女はいない。聖女の恩恵を受けておきながら、コレとは。だから、この国はこうなったんだ。わかるね?」
クロエは此方に笑いかけながら、静かに怒るレオンに、震えることしかできなかった。
中でもオーロラの兄であるレオンは結婚もしていなければ未だ婚約者すらいない優良物件である。グレイズ・アドナーの元婚約者であるクロエは、どうにかしてレオンに取り入ろうと、躍起になった。
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「どうして、貴女が?」
「はい?」
「貴女がオーロラに苦言を呈す立場なのか、と聞いたんだ。何を持って妹より貴女が上になったつもりかと聞いた。」
「嫌ですわ。だって彼の方、レオン様と全く似ていらっしゃらないでしょう?義妹であることはわかっておりますわ。」
「ああ、そこからか。オーロラは私の実妹だ。父も勿論母も同一のれっきとした生まれながらの公爵令嬢だ。確かに私達が似ていないことであらぬ噂が立てられたことはあったが、すぐにその噂は消えた筈だ。母方の祖母の若い頃にオーロラはそっくりだ。隔世遺伝というやつだ。それで?言い訳は思いついたかい?」
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「オーロラの出自を疑い噂を撒いたのはハーベイ元伯爵夫人だよ。だから、もう彼女はいない。聖女の恩恵を受けておきながら、コレとは。だから、この国はこうなったんだ。わかるね?」
クロエは此方に笑いかけながら、静かに怒るレオンに、震えることしかできなかった。
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