お花畑聖女は願う

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逃げられた男達

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グレイズとアレンは、マユがいなくなった後もイーサンとは違い、マユを探し続けた。エレナが言ったように元の世界に帰れたなら良いのだが、最悪な事態を想定してのことだ。

とかく流されやすい様子のマユは、年齢は彼らに近いという話だったが、あれは彼女が強がっていただけで、本当はもう少し幼かったのでは?と彼らは疑っていた。

彼らはまず、自分達の婚約者の周辺を探した。

アレンの婚約者はマユとの距離が近すぎることをいつも怒ってはいたが、曲がったことが嫌いな性格なので悪事には加担しないだろうと考えられていた。

問題は、グレイズの婚約者だ。侯爵家の力でグレイズの婚約者になり、マユを嫉妬で散々いじめて来た、クロエ・コリンズ。コリンズ侯爵家の伝手でどこかに隠されていたとしたら、早くに助け出さないと手遅れになる。

そうなれば何より女神様の怒りをうけてしまう。敬虔な女神の僕を自負しているグレイズはそんな信念の元、婚約者の周辺に目を光らせるのだが、当然そんな証拠はでてこない。挙げ句の果てに、グレイズは直接出向いた侯爵家で、門前払いを食らった直後に他の令息らしき男と仲良さげなクロエを見てしまった。

馬鹿ではないグレイズは悟った。少なくとも彼女はこの件には関わっていない。グレイズと、クロエの婚約はとうに解消されていた。

クロエの相手をしていた令息はある意味有名だ。聖女オーロラの兄であるレオン。彼がここにいるということは、クロエはオーロラ側だと言うことだ。

それは即ち、グレイズの敵側ということ。正直、意外だと思った。聖女オーロラとクロエは傍目から見ても仲が良さそうには見えなかったから。

オーロラを溺愛するレオンにあんなに微笑まれているクロエは楽しそうだった。グレイズの前では決して見せない表情はレオンに恋していることを隠していない。

ただレオンはレオンで一筋縄ではいかない人間である。あまりに一方的で盲目な愛情は妹オーロラに向けられ、そのせいか一部の人間は、オーロラに洗脳されているのではないか、と噂した。

本来聖女はそういう悪いことに力を使うことはない。だが、王太子妃になった聖女オーロラなら、「やりかねない」と思われている。

何せ、第一王子も公爵令嬢も、彼女にその地位を奪われたのだ。警戒しないわけもない。アレンは未だにマユを守りきれなかったことを後悔している。探しても探してもどこにもいないマユ。

「やっぱり秘密裏に殺されているんじゃないか。」

物騒な考えになるのも無理はない。高位貴族であればあるほど、それが容易で一番効果的に此方の力を削げる方法だとわかっているから。

グレイズもアレンも聖女マユの為に、オーロラとクリスを失脚させなくてはならないと、再度誓った。
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