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贅沢な悩み
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「それで、聖女様はどなたをお選びになるんですか?」
「えー、私なんかのどこを好きになってくれたのかわからないけれど、皆かっこよすぎて、選べないよね?皆とずっと一緒にいる、じゃ駄目なのかな。」
つい最近とある事情で召喚された聖女マユは、控え室で、お付きの者と共に話に興じていた。これから女神との対話が始まり、聖女がこの世界に協力する褒美として願いを一つ女神に叶えて貰うことができる。
マユは異世界から勝手に呼ばれたからには絶対に家に帰ると最初ならそう思っていた。だけど、見目麗しい高貴な男達に囲われてすっかりその意思も揺れに揺れてしまった。
先のお花畑発言も冗談では無く、今から女神に「皆とずっと一緒にいたい。」といえば、叶えて貰える実現可能なものだ。
マユは確かに本当にそう願うつもりでいた。
「でも、気になりませんか?マユ様のことを一番考えてくれている方が一体誰なのか。
マユ様の周りにはマユ様のことしか考えてない方が少なくとも四人はいらっしゃいますよね。他にもマユ様が知らないだけで何人か高貴なお方がマユ様を狙っていらっしゃるそうです。
どなたが一番マユ様への愛が強いのか。女神様にお聞きするのはどうでしょう。」
彼女はマユが召喚されてからずっとマユに付いているお世話係で、マユの周りにいる男達の婚約者がマユを虐めてきた時も一人だけ味方になってくれた、姉のような人。
彼女にそう言われたら、マユも確かに気になって来た。彼らは婚約者そっちのけでマユを囲い、大切に扱ってくれるけれど、互いに牽制するだけで、抜け駆けなどしてこない。無邪気を装って触れた時も顔を真っ赤にするだけで、無理矢理剥がされたし、随分と初心な反応だなと驚いた。
マユは異世界に来るまで、波瀾万丈な生活を送っていた。マユを愛するあまりに盲目になってしまった従兄からの束縛。自由がないのも、あれはあれで愛されていると思っていたからいいのだけれど。従兄以外とは話しちゃいけない、とか見てはいけない、とか破れば怖い顔するし、実際あれは犯罪スレスレの行為だったよね。お仕置きとか言われて監禁されたことだってあるもの。
その点、異世界に来てからは、優しさって、こういうのを言うんだってはっきりわかったし。私と従兄の愛なんて、狭い世界のままごとだってわかったし。
マユは異世界に来てから、すっかり元の世界のことなんて忘れていた。
マユは自分のことを一番考えてくれているだろう男達の顔を思い浮かべる。騎士団長の息子であるアレン・ハーデスは、彫の深い顔なのに、爽やかな笑顔で身体が大きい分、マユの華奢さを引き立ててくれる。彼は騎士だからか、少しワイルドが過ぎることがあるけれど、絶対に熱烈に愛を捧げてくれるに違いない。
そして、宰相の息子、グレイズ・アドナーは、インテリ男子で眼鏡が似合う。マユは自分が頭が悪いからか眼鏡男子という属性に死ぬほど弱い。神経質そうな彼が恥ずかしそうに笑う姿がマユには深く突き刺さってしまって、彼の婚約者とかいう女にはちょっとだけドヤ顔になってしまった。
彼の婚約者は確か侯爵令嬢だったかで、まあ綺麗ではあるけれど、聖女のマユを見下している感じだったから、あまり好きではない。
マユは昔からそうなのだが見目のよい男に好かれすぎて女受けが悪い。従兄も綺麗な顔だったからか周りの女にたくさん嫌な思いをさせられた。
でもそういう立ち向かってくる女って男受け、悪いんだよね。
だからか、いつも涙目になって俯くだけで、皆男達はマユの味方になってくれた。
この世界でもそう。第二王子のイーサンも、伯爵令嬢とかいうアメリアだっけ?その子よりマユを信じてくれた。私が来る前までは相思相愛だったらしいのに。
司教の息子、リアンも外せない。彼は可愛い顔をしてマユを虐めた女性達にイタズラしたりする腹黒あざとい感じ。司教様は普通の顔だから母親似だろうか。彼はマユのことが大好き!とわかりやすく接してくれる。可愛いんだけどやることがえげつないとか、いいよね。
マユは昔夢中になって読んだ漫画のキャラクターに似た彼に親近感と謎の親目線があって、彼を可愛がっていた。彼にはまだ婚約者が……いたけど、解消になったとかじゃなかったっけ。マユは彼らの婚約者に嫌われている自覚があるから、どうせ彼女もマユに嫌がらせをしていたに違いないと決めつけた。
「ねえ、私が誰を選んでも、ここを出ることになるでしょう?その時、貴女も一緒に来てくれない?」
マユは彼女に声をかけた。彼女はニッコリと微笑み、「女神様がお許しになられるならきっとそうなりますわ。」と告げた。
「えー、私なんかのどこを好きになってくれたのかわからないけれど、皆かっこよすぎて、選べないよね?皆とずっと一緒にいる、じゃ駄目なのかな。」
つい最近とある事情で召喚された聖女マユは、控え室で、お付きの者と共に話に興じていた。これから女神との対話が始まり、聖女がこの世界に協力する褒美として願いを一つ女神に叶えて貰うことができる。
マユは異世界から勝手に呼ばれたからには絶対に家に帰ると最初ならそう思っていた。だけど、見目麗しい高貴な男達に囲われてすっかりその意思も揺れに揺れてしまった。
先のお花畑発言も冗談では無く、今から女神に「皆とずっと一緒にいたい。」といえば、叶えて貰える実現可能なものだ。
マユは確かに本当にそう願うつもりでいた。
「でも、気になりませんか?マユ様のことを一番考えてくれている方が一体誰なのか。
マユ様の周りにはマユ様のことしか考えてない方が少なくとも四人はいらっしゃいますよね。他にもマユ様が知らないだけで何人か高貴なお方がマユ様を狙っていらっしゃるそうです。
どなたが一番マユ様への愛が強いのか。女神様にお聞きするのはどうでしょう。」
彼女はマユが召喚されてからずっとマユに付いているお世話係で、マユの周りにいる男達の婚約者がマユを虐めてきた時も一人だけ味方になってくれた、姉のような人。
彼女にそう言われたら、マユも確かに気になって来た。彼らは婚約者そっちのけでマユを囲い、大切に扱ってくれるけれど、互いに牽制するだけで、抜け駆けなどしてこない。無邪気を装って触れた時も顔を真っ赤にするだけで、無理矢理剥がされたし、随分と初心な反応だなと驚いた。
マユは異世界に来るまで、波瀾万丈な生活を送っていた。マユを愛するあまりに盲目になってしまった従兄からの束縛。自由がないのも、あれはあれで愛されていると思っていたからいいのだけれど。従兄以外とは話しちゃいけない、とか見てはいけない、とか破れば怖い顔するし、実際あれは犯罪スレスレの行為だったよね。お仕置きとか言われて監禁されたことだってあるもの。
その点、異世界に来てからは、優しさって、こういうのを言うんだってはっきりわかったし。私と従兄の愛なんて、狭い世界のままごとだってわかったし。
マユは異世界に来てから、すっかり元の世界のことなんて忘れていた。
マユは自分のことを一番考えてくれているだろう男達の顔を思い浮かべる。騎士団長の息子であるアレン・ハーデスは、彫の深い顔なのに、爽やかな笑顔で身体が大きい分、マユの華奢さを引き立ててくれる。彼は騎士だからか、少しワイルドが過ぎることがあるけれど、絶対に熱烈に愛を捧げてくれるに違いない。
そして、宰相の息子、グレイズ・アドナーは、インテリ男子で眼鏡が似合う。マユは自分が頭が悪いからか眼鏡男子という属性に死ぬほど弱い。神経質そうな彼が恥ずかしそうに笑う姿がマユには深く突き刺さってしまって、彼の婚約者とかいう女にはちょっとだけドヤ顔になってしまった。
彼の婚約者は確か侯爵令嬢だったかで、まあ綺麗ではあるけれど、聖女のマユを見下している感じだったから、あまり好きではない。
マユは昔からそうなのだが見目のよい男に好かれすぎて女受けが悪い。従兄も綺麗な顔だったからか周りの女にたくさん嫌な思いをさせられた。
でもそういう立ち向かってくる女って男受け、悪いんだよね。
だからか、いつも涙目になって俯くだけで、皆男達はマユの味方になってくれた。
この世界でもそう。第二王子のイーサンも、伯爵令嬢とかいうアメリアだっけ?その子よりマユを信じてくれた。私が来る前までは相思相愛だったらしいのに。
司教の息子、リアンも外せない。彼は可愛い顔をしてマユを虐めた女性達にイタズラしたりする腹黒あざとい感じ。司教様は普通の顔だから母親似だろうか。彼はマユのことが大好き!とわかりやすく接してくれる。可愛いんだけどやることがえげつないとか、いいよね。
マユは昔夢中になって読んだ漫画のキャラクターに似た彼に親近感と謎の親目線があって、彼を可愛がっていた。彼にはまだ婚約者が……いたけど、解消になったとかじゃなかったっけ。マユは彼らの婚約者に嫌われている自覚があるから、どうせ彼女もマユに嫌がらせをしていたに違いないと決めつけた。
「ねえ、私が誰を選んでも、ここを出ることになるでしょう?その時、貴女も一緒に来てくれない?」
マユは彼女に声をかけた。彼女はニッコリと微笑み、「女神様がお許しになられるならきっとそうなりますわ。」と告げた。
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