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隼人さんが僕に言わないこと(光)
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何となく、だけど、隼人さんはまだ僕に隠していることがある気がする。僕は大して勘が良いこともないけれど、隼人さんに関しては少しだけ勘が働くから、隼人さんが内緒にしたいと思ったことは少し身に覚えがある。
バイト先の薄幸そうなお姉さんは、暫くして姿を消した。何となく、彼女はどの場所にも長居をしないような、ひたすら何かに怯えて何かから逃げ続けているような雰囲気があったのだが、それは杞憂だった。
彼女の家族に関する憂いがなくなって、ひっそりと生きなくて良くなったらしい。僕はまだこどもだから、詳細については教えてもらえなかった。
僕自身、彼女に思うところはないのだけど、雰囲気とかが、以前の僕ににていたことから、隼人さんは彼女を気にしていて、僕はそれが嫌だった。
なんとなく、隼人さんを奪われてしまう気がして。
最近になって、隼人さんは、髪を切った。長い髪を束ねているのも、逆に男臭くて良かったけれど、短く刈りそろえられた髪先も、隼人さんの爽やかな雰囲気に合っている。僕は僕で、隼人さんと一緒に前髪を少し切り、目が見えるようにした。
「やっぱりお前は目が綺麗だから見せるべきだよ。」
大きな手で、僕の髪をくしゃくしゃにして、隼人さんは見慣れない爽やかな笑顔を見せる。僕はその笑顔を見て、やっぱり隼人さんが好きだなあ、としみじみ思った。
「隼人さん、長いのも良いけど、短いのよく似合ってる。」
襟足のジョリジョリをどうしても触りたくなって、触っていると、隼人さんの目が悪戯っ子のように光った。
隼人さんにキスをされている間、ずっとジョリジョリを堪能していると、苦笑いに近い笑みを浮かべる。
「触りすぎだ。お前に触られると、ゾクゾクする。」
「じゃあ、やめる。」
「やめなくても良いけど。もう少しキスしたい。」
「うん。僕もしたい。」
キスされてる間、隼人さんの体重が僕にかかる。体が大きいだけあって、少し重いのだけど、それすら嬉しいとか、思うんだよね。僕、重症だろうか。
「何を考えてる?」
黙ってしまった僕を覗き込む隼人さんの瞳を見ているだけで愛しさが込み上げてくる。
「隼人さんに……」
「ん?俺に?」
「もっと……」
「もっと?」
「好きって伝えるにはどうしたらいいかって……考えてた。」
隼人さんは無言で、姿勢を変える。少し乱暴に、体を動かされ焦ると、有無を言わさず抱きしめられる。
「全然学習しないのな?」
隼人さんの声から呆れの感情を感じ取り、不思議な気持ちになる。
「それで……今日は抱き潰していいんだろ?」
返事をする前に口を塞がれる。
あ、これ、返事は必要ないやつだわ。
僕は何故か元気一杯の、隼人さんに自由を奪われてしまうのだった。
バイト先の薄幸そうなお姉さんは、暫くして姿を消した。何となく、彼女はどの場所にも長居をしないような、ひたすら何かに怯えて何かから逃げ続けているような雰囲気があったのだが、それは杞憂だった。
彼女の家族に関する憂いがなくなって、ひっそりと生きなくて良くなったらしい。僕はまだこどもだから、詳細については教えてもらえなかった。
僕自身、彼女に思うところはないのだけど、雰囲気とかが、以前の僕ににていたことから、隼人さんは彼女を気にしていて、僕はそれが嫌だった。
なんとなく、隼人さんを奪われてしまう気がして。
最近になって、隼人さんは、髪を切った。長い髪を束ねているのも、逆に男臭くて良かったけれど、短く刈りそろえられた髪先も、隼人さんの爽やかな雰囲気に合っている。僕は僕で、隼人さんと一緒に前髪を少し切り、目が見えるようにした。
「やっぱりお前は目が綺麗だから見せるべきだよ。」
大きな手で、僕の髪をくしゃくしゃにして、隼人さんは見慣れない爽やかな笑顔を見せる。僕はその笑顔を見て、やっぱり隼人さんが好きだなあ、としみじみ思った。
「隼人さん、長いのも良いけど、短いのよく似合ってる。」
襟足のジョリジョリをどうしても触りたくなって、触っていると、隼人さんの目が悪戯っ子のように光った。
隼人さんにキスをされている間、ずっとジョリジョリを堪能していると、苦笑いに近い笑みを浮かべる。
「触りすぎだ。お前に触られると、ゾクゾクする。」
「じゃあ、やめる。」
「やめなくても良いけど。もう少しキスしたい。」
「うん。僕もしたい。」
キスされてる間、隼人さんの体重が僕にかかる。体が大きいだけあって、少し重いのだけど、それすら嬉しいとか、思うんだよね。僕、重症だろうか。
「何を考えてる?」
黙ってしまった僕を覗き込む隼人さんの瞳を見ているだけで愛しさが込み上げてくる。
「隼人さんに……」
「ん?俺に?」
「もっと……」
「もっと?」
「好きって伝えるにはどうしたらいいかって……考えてた。」
隼人さんは無言で、姿勢を変える。少し乱暴に、体を動かされ焦ると、有無を言わさず抱きしめられる。
「全然学習しないのな?」
隼人さんの声から呆れの感情を感じ取り、不思議な気持ちになる。
「それで……今日は抱き潰していいんだろ?」
返事をする前に口を塞がれる。
あ、これ、返事は必要ないやつだわ。
僕は何故か元気一杯の、隼人さんに自由を奪われてしまうのだった。
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