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新人バイト(隼人)
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バイトの帰りに支配人に声を掛けられる。「来週から新人さん二人入るけど、ビビらせんなよ、お前顔怖いんだから。」聞くと、二人とも仲居で、皿洗いとはそもそもあまり会うことはない。それでも全く会わないこともないので、愛想良くしろよ、ってことなんだろうけど。
「あと、お前、あんまり光に無理させるなよ。」支配人にまで、トドメをさされて、恥ずかしさでいっぱいになる。やっぱり気付いてたか。支配人ならワンチャン気付いてない可能性も……って思ったんだけど。儚い願いだった。
光にもあとで新人さんのことを言った。どんな人か聞くのを忘れたけど、仲良くできる人なら良いなあ。まあ、皿洗いだから、あんま関係ないけど。
……なんて、思ってたら、意外と早く、彼女達に遭遇することになった。
バイトが休みの日に、女将さんに男手が足りないと、呼ばれて来てみると、新しい仲居さんの一人と会うことができた。
綺麗な人だった。女将さんが、驚いて言葉をなくしてる俺に耳打ちしてくる。「何か似てるやろ。訳ありみたいやけど、懐かしくなってしもてな。忙しいやろうけど、気にかけてあげて。」
女将さんの言う通り、すごく似てる。うちの母に。
母が初めてこの料亭で働き始めた頃にそっくりだと思った。あの頃の母は、ある意味世間知らずで、儚げだった。俺は小さい頃から母の唯一の支えになりたかった。まあ、ガキ一人じゃ、たいした支えにならず、すぐに母は他に支えを求めて行ってしまったけれど。
綺麗な人はさゆりさんと言った。俺の顔を見ても、怖がったりせずに挨拶を返してくれる。それだけで、単純な俺は嬉しくなった。
さゆりさんが訳ありと言うのは、帰りに駅まで送った時の様子で思い知ることになる。変装?レベルで人の目を徹底的に避け、まるで誰かから追われているかのようで、ほっとけない。
DV被害者か、何かだろうか。帰りに「守ってくださりありがとうございます。」とお礼をいわれた。ただ一緒に歩いただけだが、一人で帰るのがよっぽど心細かったようで、切なくなった。
「気をつけて。」優しい笑顔を見たら、光に会いたくなった。別れて、すぐにプリンを買って、家に帰る。
プリンを一緒に食べて、今日あったことを話すと、家族になったような気がして、幸せに涙が出そうになる。
光を抱きしめながら、さゆりさんも早く幸せになってほしいな、と思った。光の首筋に貼られた絆創膏を見ると、憎たらしい支配人の顔が思い出されて、笑ってしまう。
顔を上げた光に齧り付くようにキスをする。さっきまで無理をさせないように、とか思ったのは何だったんだ。光の目を見ると、理性が吹き飛ぶんだから仕方ない。
「あと、お前、あんまり光に無理させるなよ。」支配人にまで、トドメをさされて、恥ずかしさでいっぱいになる。やっぱり気付いてたか。支配人ならワンチャン気付いてない可能性も……って思ったんだけど。儚い願いだった。
光にもあとで新人さんのことを言った。どんな人か聞くのを忘れたけど、仲良くできる人なら良いなあ。まあ、皿洗いだから、あんま関係ないけど。
……なんて、思ってたら、意外と早く、彼女達に遭遇することになった。
バイトが休みの日に、女将さんに男手が足りないと、呼ばれて来てみると、新しい仲居さんの一人と会うことができた。
綺麗な人だった。女将さんが、驚いて言葉をなくしてる俺に耳打ちしてくる。「何か似てるやろ。訳ありみたいやけど、懐かしくなってしもてな。忙しいやろうけど、気にかけてあげて。」
女将さんの言う通り、すごく似てる。うちの母に。
母が初めてこの料亭で働き始めた頃にそっくりだと思った。あの頃の母は、ある意味世間知らずで、儚げだった。俺は小さい頃から母の唯一の支えになりたかった。まあ、ガキ一人じゃ、たいした支えにならず、すぐに母は他に支えを求めて行ってしまったけれど。
綺麗な人はさゆりさんと言った。俺の顔を見ても、怖がったりせずに挨拶を返してくれる。それだけで、単純な俺は嬉しくなった。
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DV被害者か、何かだろうか。帰りに「守ってくださりありがとうございます。」とお礼をいわれた。ただ一緒に歩いただけだが、一人で帰るのがよっぽど心細かったようで、切なくなった。
「気をつけて。」優しい笑顔を見たら、光に会いたくなった。別れて、すぐにプリンを買って、家に帰る。
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光を抱きしめながら、さゆりさんも早く幸せになってほしいな、と思った。光の首筋に貼られた絆創膏を見ると、憎たらしい支配人の顔が思い出されて、笑ってしまう。
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