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旧図書室(隼人)
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何回めかの欠伸を噛み殺す。
二人暮らしの家で、母親は何度めかの恋に夢中になっていて、昨日は帰って来なかった。
まあ、こちらももう高校生だし、母親も中年の時期に差し掛かるので、特に心配もないのだが。
暴力を振るわない、女を作らない、酒を飲まない男を探せば良いのに、とは思う。金はないから、借金がある男には近づかないだけまだマシだ。
とはいえ、毎回捨てられてボロボロになって子供みたいに泣く姿を見ていると、どっちが母親かわからない、と思う。
昨日は心配というよりは、眠れなかっただけだけれど。朝方、ようやく眠くなり寝ていたら、2時間目が終わっていた。
授業に出る気はあまりなく、昨日会った大澤君が不憫だな、とか母親のこととか考えつつも眠気でボーッとしながら、旧図書室に向かっていた。
この旧図書室は最近のお気に入りで、あんまり人がこない。本気で睡眠不足の時なんかは保健室より集中して寝れる。
ベッド、ここに運び込めたら最高なんだけど。
ふと、また昨日の大澤君が思い出されて、ここにベッドがあれば、彼は絶対ここに連れて来られるだろうな、と思ったら、やっぱベッドいらねえか、と思う。
本当に不憫だよな。
隣の部屋に人の気配がして、はっとする。ボーっとしてたら、あ、もう放課後なのね。隣って何だっけ?
話し声が聞こえてきて、反省文の所が聞き取れた。
しかも、この声…げっ!
生徒指導の竹原かよ。
うわー、最悪。
ここにいるのばれたらまーたチクチク…
…今日の生贄は誰だ…
目を凝らすもここからじゃよく見えない。俺、目が悪くなったかな。ゲームのしすぎか。
うーん、今のうちに離れるべき?
いや、でもな。今出ていくのも危険か…
隣の部屋がよく見える位置に移動する。
あれ?話し声聞こえたのにな…
見えない…
何か竹原しかいなくね?
一人しか影が見えない…
不思議に思ってよく見るとたしかに二人いる。竹原の膝の上に誰か座らされている。
ゾワゾワと、体に悪寒が走る。
気持ち悪っ!
…いや、まさかな…
ふと、思い当たる人物がいることに気づく。
聞き耳をたてる。
…泣いてる。多分彼が。
自分ができることを考える。
スマホに充電があまりない。
いちかばちか。
竹原にわかるわけがないか。
隼人は一旦旧図書室をでる。
彼を助けるために準備をする。
案の定、彼が自分を見た瞬間泣き崩れたのを見た。笑い事ではないが、笑ってしまう。
「お前、襲われすぎだよ」
泣きながら、彼もすこし笑った気がした。
「立てるか?」
うん、と頷く彼の腕を掴んだまま、
竹原に釘を刺す。
「こいつ、連れて行きますね。あの…動画あるんで、わかってますよね。」
竹原は忌々しそうな顔をしたが、頷いた。
「俺、間に合ったか?」
「…ありがとうございます。」
二度目のお礼を言われた。
「顔洗ってから行くので…」
「あー、うん。」
わかった、と言って彼が顔を洗う間待っていると、
「もう大丈夫ですので。」とやんわりと拒否された。
「俺は大丈夫だからな?俺は女が好きだから。お前には欲情しない。約束する。」
だから、頼ってほしい、そう思った。
彼は戸惑いながら微笑んで
「ありがとうございます。」と言った。
「あの…今から吐くので、帰ってもらっていいですか?先生に首を舐められて、気持ち悪くて、もう無理なんです…」
バタン、とドアがしまると、盛大に吐く音が聞こえた。
うん、よく頑張った。
お疲れ様。
二人暮らしの家で、母親は何度めかの恋に夢中になっていて、昨日は帰って来なかった。
まあ、こちらももう高校生だし、母親も中年の時期に差し掛かるので、特に心配もないのだが。
暴力を振るわない、女を作らない、酒を飲まない男を探せば良いのに、とは思う。金はないから、借金がある男には近づかないだけまだマシだ。
とはいえ、毎回捨てられてボロボロになって子供みたいに泣く姿を見ていると、どっちが母親かわからない、と思う。
昨日は心配というよりは、眠れなかっただけだけれど。朝方、ようやく眠くなり寝ていたら、2時間目が終わっていた。
授業に出る気はあまりなく、昨日会った大澤君が不憫だな、とか母親のこととか考えつつも眠気でボーッとしながら、旧図書室に向かっていた。
この旧図書室は最近のお気に入りで、あんまり人がこない。本気で睡眠不足の時なんかは保健室より集中して寝れる。
ベッド、ここに運び込めたら最高なんだけど。
ふと、また昨日の大澤君が思い出されて、ここにベッドがあれば、彼は絶対ここに連れて来られるだろうな、と思ったら、やっぱベッドいらねえか、と思う。
本当に不憫だよな。
隣の部屋に人の気配がして、はっとする。ボーっとしてたら、あ、もう放課後なのね。隣って何だっけ?
話し声が聞こえてきて、反省文の所が聞き取れた。
しかも、この声…げっ!
生徒指導の竹原かよ。
うわー、最悪。
ここにいるのばれたらまーたチクチク…
…今日の生贄は誰だ…
目を凝らすもここからじゃよく見えない。俺、目が悪くなったかな。ゲームのしすぎか。
うーん、今のうちに離れるべき?
いや、でもな。今出ていくのも危険か…
隣の部屋がよく見える位置に移動する。
あれ?話し声聞こえたのにな…
見えない…
何か竹原しかいなくね?
一人しか影が見えない…
不思議に思ってよく見るとたしかに二人いる。竹原の膝の上に誰か座らされている。
ゾワゾワと、体に悪寒が走る。
気持ち悪っ!
…いや、まさかな…
ふと、思い当たる人物がいることに気づく。
聞き耳をたてる。
…泣いてる。多分彼が。
自分ができることを考える。
スマホに充電があまりない。
いちかばちか。
竹原にわかるわけがないか。
隼人は一旦旧図書室をでる。
彼を助けるために準備をする。
案の定、彼が自分を見た瞬間泣き崩れたのを見た。笑い事ではないが、笑ってしまう。
「お前、襲われすぎだよ」
泣きながら、彼もすこし笑った気がした。
「立てるか?」
うん、と頷く彼の腕を掴んだまま、
竹原に釘を刺す。
「こいつ、連れて行きますね。あの…動画あるんで、わかってますよね。」
竹原は忌々しそうな顔をしたが、頷いた。
「俺、間に合ったか?」
「…ありがとうございます。」
二度目のお礼を言われた。
「顔洗ってから行くので…」
「あー、うん。」
わかった、と言って彼が顔を洗う間待っていると、
「もう大丈夫ですので。」とやんわりと拒否された。
「俺は大丈夫だからな?俺は女が好きだから。お前には欲情しない。約束する。」
だから、頼ってほしい、そう思った。
彼は戸惑いながら微笑んで
「ありがとうございます。」と言った。
「あの…今から吐くので、帰ってもらっていいですか?先生に首を舐められて、気持ち悪くて、もう無理なんです…」
バタン、とドアがしまると、盛大に吐く音が聞こえた。
うん、よく頑張った。
お疲れ様。
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