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妖精の王は、花が一面に咲き誇る丘の上に寝転んでいた。思っていたよりその姿は小さく、頼りない。

王はリゼを見ると、少し不機嫌そうな顔をしていたが、リゼを前にすると何故かわからないが、深く頭を下げた。

「すまない。貴女には迷惑をかけたようで。」
何の事情も話していなかったのだが、彼には全てわかっていたようで、気まずそうにこちらを見ている。

「いえ。それは良いのですが、私は帰ることができるのでしょうか。先程の話では、私をここに連れてきた妖精達が戻らないと帰ることができない、と言うことでしたが。」

「いや、いつもなら私が送り届ける立場にあるのだが、今は力が一時的に分けられてしまっているため、回復が間に合わない。いや、すまない。かと言って、律儀に回復を待っていたら人の世は、すぐおわってしまうから、戻ったら既に何もなかったということになりかねない。申し訳ないが、貴女に少しばかり手伝っていただきたいのだが、可能だろうか。」

妖精の王が言うには、リゼの体に纏わりついている精霊の力の残滓を、王に分け与えてほしいそうだ。

「どうすれば良いですか。」
やり方がわからなくて、尋ねると王は、リゼの周りをぐるっと回って、少し旋回したと思ったら、みるみるうちに、その姿は少しずつ大きくなっていった。

多分本来ならリゼの背丈など、簡単に抜いてしまう程大きいのだろうが、ちょうどリゼと同じくらいの大きさになった彼は、驚きつつも、リゼに感謝を口にした。

「ここまで回復できたら、大丈夫だ。貴女をすぐにでも、返してあげないといけないのだけれど、ついでだから、もう一つお願いを聞いてもらえるかい?」

王に連れられて、訪れたのは小さな部屋。

「ここには、以前の私が、力を半分以上失うことになった、元凶がいる。一度は愛した相手だから、力を分けたことに後悔はないのだが。彼女を慕う妖精達の暴走によって、傷つけられた者達も多い。できたら、あの子には、あたらしい世界で新しい人生を送ってほしいんだ。貴女にしてほしいことはただ一つ。彼女の為に、祈ってほしい。彼女に触れることは、私がするから、その精霊の力をさっきみたいにあの子に流し込んで欲しいんだ。」

曰く、妖精の愛し子を守る為、王は自身の力を与え延命していたが、力が強すぎて暴走してしまい、肉体が滅んだ後も霊体として彷徨うことになってしまったと言う。

彼女の魂と選んだ体の持ち主の相性が悪く、このままでは体の持ち主が消滅しかねなかった。だから、馴染ませる為に王は、自分を犠牲にまた力を使って、彼女を生きながらえさせていた。

リゼの精霊の力によって、彼女を今の身体から引き剥がし、魂を消滅させ新しい人生に生まれ変わらせることができる。

「彼女が今の体から離れた場合、体の持ち主はどうなるのですか。」

「心配ない。彼女は正真正銘妖精の愛し子だ。姫が居なくなったとしても、それはかわらない。彼女に何かあれば、彼女に加護を与えた妖精達が黙ってはいないさ。

いくら、他の愛し子が相手でもね。妖精達には通用しないよ。自分の可愛い子をいじめた奴等に慈悲を与えたりはしない。」

何となく怖い言葉が続くものの、妖精姫の本体には影響がないようで安心する。

リゼは、納得したと同時に王に向けて、頷くと、その空間に足を踏み入れた。

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