12 / 17
お願い
しおりを挟む
妖精の王は、花が一面に咲き誇る丘の上に寝転んでいた。思っていたよりその姿は小さく、頼りない。
王はリゼを見ると、少し不機嫌そうな顔をしていたが、リゼを前にすると何故かわからないが、深く頭を下げた。
「すまない。貴女には迷惑をかけたようで。」
何の事情も話していなかったのだが、彼には全てわかっていたようで、気まずそうにこちらを見ている。
「いえ。それは良いのですが、私は帰ることができるのでしょうか。先程の話では、私をここに連れてきた妖精達が戻らないと帰ることができない、と言うことでしたが。」
「いや、いつもなら私が送り届ける立場にあるのだが、今は力が一時的に分けられてしまっているため、回復が間に合わない。いや、すまない。かと言って、律儀に回復を待っていたら人の世は、すぐおわってしまうから、戻ったら既に何もなかったということになりかねない。申し訳ないが、貴女に少しばかり手伝っていただきたいのだが、可能だろうか。」
妖精の王が言うには、リゼの体に纏わりついている精霊の力の残滓を、王に分け与えてほしいそうだ。
「どうすれば良いですか。」
やり方がわからなくて、尋ねると王は、リゼの周りをぐるっと回って、少し旋回したと思ったら、みるみるうちに、その姿は少しずつ大きくなっていった。
多分本来ならリゼの背丈など、簡単に抜いてしまう程大きいのだろうが、ちょうどリゼと同じくらいの大きさになった彼は、驚きつつも、リゼに感謝を口にした。
「ここまで回復できたら、大丈夫だ。貴女をすぐにでも、返してあげないといけないのだけれど、ついでだから、もう一つお願いを聞いてもらえるかい?」
王に連れられて、訪れたのは小さな部屋。
「ここには、以前の私が、力を半分以上失うことになった、元凶がいる。一度は愛した相手だから、力を分けたことに後悔はないのだが。彼女を慕う妖精達の暴走によって、傷つけられた者達も多い。できたら、あの子には、あたらしい世界で新しい人生を送ってほしいんだ。貴女にしてほしいことはただ一つ。彼女の為に、祈ってほしい。彼女に触れることは、私がするから、その精霊の力をさっきみたいにあの子に流し込んで欲しいんだ。」
曰く、妖精の愛し子を守る為、王は自身の力を与え延命していたが、力が強すぎて暴走してしまい、肉体が滅んだ後も霊体として彷徨うことになってしまったと言う。
彼女の魂と選んだ体の持ち主の相性が悪く、このままでは体の持ち主が消滅しかねなかった。だから、馴染ませる為に王は、自分を犠牲にまた力を使って、彼女を生きながらえさせていた。
リゼの精霊の力によって、彼女を今の身体から引き剥がし、魂を消滅させ新しい人生に生まれ変わらせることができる。
「彼女が今の体から離れた場合、体の持ち主はどうなるのですか。」
「心配ない。彼女は正真正銘妖精の愛し子だ。姫が居なくなったとしても、それはかわらない。彼女に何かあれば、彼女に加護を与えた妖精達が黙ってはいないさ。
いくら、他の愛し子が相手でもね。妖精達には通用しないよ。自分の可愛い子をいじめた奴等に慈悲を与えたりはしない。」
何となく怖い言葉が続くものの、妖精姫の本体には影響がないようで安心する。
リゼは、納得したと同時に王に向けて、頷くと、その空間に足を踏み入れた。
王はリゼを見ると、少し不機嫌そうな顔をしていたが、リゼを前にすると何故かわからないが、深く頭を下げた。
「すまない。貴女には迷惑をかけたようで。」
何の事情も話していなかったのだが、彼には全てわかっていたようで、気まずそうにこちらを見ている。
「いえ。それは良いのですが、私は帰ることができるのでしょうか。先程の話では、私をここに連れてきた妖精達が戻らないと帰ることができない、と言うことでしたが。」
「いや、いつもなら私が送り届ける立場にあるのだが、今は力が一時的に分けられてしまっているため、回復が間に合わない。いや、すまない。かと言って、律儀に回復を待っていたら人の世は、すぐおわってしまうから、戻ったら既に何もなかったということになりかねない。申し訳ないが、貴女に少しばかり手伝っていただきたいのだが、可能だろうか。」
妖精の王が言うには、リゼの体に纏わりついている精霊の力の残滓を、王に分け与えてほしいそうだ。
「どうすれば良いですか。」
やり方がわからなくて、尋ねると王は、リゼの周りをぐるっと回って、少し旋回したと思ったら、みるみるうちに、その姿は少しずつ大きくなっていった。
多分本来ならリゼの背丈など、簡単に抜いてしまう程大きいのだろうが、ちょうどリゼと同じくらいの大きさになった彼は、驚きつつも、リゼに感謝を口にした。
「ここまで回復できたら、大丈夫だ。貴女をすぐにでも、返してあげないといけないのだけれど、ついでだから、もう一つお願いを聞いてもらえるかい?」
王に連れられて、訪れたのは小さな部屋。
「ここには、以前の私が、力を半分以上失うことになった、元凶がいる。一度は愛した相手だから、力を分けたことに後悔はないのだが。彼女を慕う妖精達の暴走によって、傷つけられた者達も多い。できたら、あの子には、あたらしい世界で新しい人生を送ってほしいんだ。貴女にしてほしいことはただ一つ。彼女の為に、祈ってほしい。彼女に触れることは、私がするから、その精霊の力をさっきみたいにあの子に流し込んで欲しいんだ。」
曰く、妖精の愛し子を守る為、王は自身の力を与え延命していたが、力が強すぎて暴走してしまい、肉体が滅んだ後も霊体として彷徨うことになってしまったと言う。
彼女の魂と選んだ体の持ち主の相性が悪く、このままでは体の持ち主が消滅しかねなかった。だから、馴染ませる為に王は、自分を犠牲にまた力を使って、彼女を生きながらえさせていた。
リゼの精霊の力によって、彼女を今の身体から引き剥がし、魂を消滅させ新しい人生に生まれ変わらせることができる。
「彼女が今の体から離れた場合、体の持ち主はどうなるのですか。」
「心配ない。彼女は正真正銘妖精の愛し子だ。姫が居なくなったとしても、それはかわらない。彼女に何かあれば、彼女に加護を与えた妖精達が黙ってはいないさ。
いくら、他の愛し子が相手でもね。妖精達には通用しないよ。自分の可愛い子をいじめた奴等に慈悲を与えたりはしない。」
何となく怖い言葉が続くものの、妖精姫の本体には影響がないようで安心する。
リゼは、納得したと同時に王に向けて、頷くと、その空間に足を踏み入れた。
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
女性が少ない世界へ異世界転生してしまった件
りん
恋愛
水野理沙15歳は鬱だった。何で生きているのかわからないし、将来なりたいものもない。親は馬鹿で話が通じない。生きても意味がないと思い自殺してしまった。でも、死んだと思ったら異世界に転生していてなんとそこは男女500:1の200年後の未来に転生してしまった。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
男女比が偏っている異世界に転移して逆ハーレムを築いた、その後の話
やなぎ怜
恋愛
花嫁探しのために異世界から集団で拉致されてきた少女たちのひとりであるユーリ。それがハルの妻である。色々あって学生結婚し、ハルより年上のユーリはすでに学園を卒業している。この世界は著しく男女比が偏っているから、ユーリには他にも夫がいる。ならば負けないようにストレートに好意を示すべきだが、スラム育ちで口が悪いハルは素直な感情表現を苦手としており、そのことをもどかしく思っていた。そんな中でも、妊娠適正年齢の始まりとして定められている二〇歳の誕生日――有り体に言ってしまえば「子作り解禁日」をユーリが迎える日は近づく。それとは別に、ユーリたち拉致被害者が元の世界に帰れるかもしれないという噂も立ち……。
順風満帆に見えた一家に、ささやかな波風が立つ二日間のお話。
※作品の性質上、露骨に性的な話題が出てきます。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた
愛丸 リナ
恋愛
少女は綺麗過ぎた。
整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。
最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?
でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。
クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……
たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた
それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない
______________________________
ATTENTION
自己満小説満載
一話ずつ、出来上がり次第投稿
急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする
文章が変な時があります
恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定
以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる