16 / 16
元妻 ミシェル
しおりを挟む
お久しぶりです、元旦那様。
時が経つのは早いもので、私達の息子ウィリアムが伯爵になりました。貴方を失ってから慣れないながらも試行錯誤を経て代理をしてきましたが、貴方から受け継いだ場所を正式に息子に渡すことが出来てホッとしています。
貴方は驚くかもしれないけれど、実はダニエルとは籍をいれていないの。私が彼の妻になってしまうと、伯爵家にはもう居られないから。ウィリアムに会えないこともだけど、それ以前に貴方の居た屋敷を離れる決意が出来なくて。
もういい歳なのに、若い子みたいなことを言うなと思われそうで恥ずかしいわ。
そうそう。前に伝え忘れていた隠されていた大金の犯人は貴方のお父上よ。意外でしょう?
と言うより埋めたのは、お母様の方ね。愛人に貢ぐためのお金、所謂へそくりね。それを偶々見つけたお母様が、隠し場所を勝手に変えた、と言う話ね。
結局、お金はもう二度と、出ては来なかったけれど、もう愛人の方とは手を切ったようだし、今では仲睦まじくお二人で過ごされているわ。
二人を見ていると、旦那様が亡くなっていなければ、と思うことがあるわ。今更言っても仕方ないのだけれど。
貴方が私達家族を巻き込まないように考えてくれたことに不満などはないのよ?だけど、もう少し貴方と一緒に年を取って行きたかったと思うの。
貴方はいつも、ダニエルやら他の男性が私の側にいるのを気にしていたけれど、人助けとはいえ、私だってライラ嬢の姿を見るたびに複雑な思いを抱いていたのよ。
貴方の愛人と言われた人達と貴方はそんな関係ではなかったけれど、それでも貴方の側に居られる彼女達に嫉妬したことも一度や二度じゃないわ。
旦那様、覚えている?私達が初めて出会った日のこと。婚約が決まったのは随分と先のことになったけれど、私はあの時から何故か予感があったのよ。
貴方の子を産むんじゃないか、って。
私は自分の人生を後悔していないわ。願わくはもう少しだけ貴方に長生きしてもらいたかったってことだけ。
ウィリアムは片親ということを鑑みても良くぞまあこんなにまともに成長したものだと、感心すらしています。
ねぇ、旦那様。あの子は物心がついた頃にはすでに貴方がいなかったというのに、考え事をしている時の仕草や寝転んだ時の背中や、ウキウキしている時の目の表情がとても貴方に似ているの。
一目だけでもせめてあの子と会って欲しかった。貴方への恨みつらみがあるならばこれぐらいかしら。旦那様、あちらの世界で罪を精算できたら、次こそは家族水入らずで過ごしましょうね。
終わり
読んでいただきありがとうございました!えーと、ちょっと伝わりにくかったかな、と思ったので補足です。
最初のエルナからの使用人の話には少しずつ旦那様相手なら簡単にわかる嘘が散りばめられていて、最終的に全てを鵜呑みにした相手が旦那様の偽物であることがわかる、という仕掛けでした。
使用人の中にも奥様、旦那様の敵と味方に分かれていたので、それでなんとなくこうなのかな、と思っていただけると、ありがたいです。 mios
時が経つのは早いもので、私達の息子ウィリアムが伯爵になりました。貴方を失ってから慣れないながらも試行錯誤を経て代理をしてきましたが、貴方から受け継いだ場所を正式に息子に渡すことが出来てホッとしています。
貴方は驚くかもしれないけれど、実はダニエルとは籍をいれていないの。私が彼の妻になってしまうと、伯爵家にはもう居られないから。ウィリアムに会えないこともだけど、それ以前に貴方の居た屋敷を離れる決意が出来なくて。
もういい歳なのに、若い子みたいなことを言うなと思われそうで恥ずかしいわ。
そうそう。前に伝え忘れていた隠されていた大金の犯人は貴方のお父上よ。意外でしょう?
と言うより埋めたのは、お母様の方ね。愛人に貢ぐためのお金、所謂へそくりね。それを偶々見つけたお母様が、隠し場所を勝手に変えた、と言う話ね。
結局、お金はもう二度と、出ては来なかったけれど、もう愛人の方とは手を切ったようだし、今では仲睦まじくお二人で過ごされているわ。
二人を見ていると、旦那様が亡くなっていなければ、と思うことがあるわ。今更言っても仕方ないのだけれど。
貴方が私達家族を巻き込まないように考えてくれたことに不満などはないのよ?だけど、もう少し貴方と一緒に年を取って行きたかったと思うの。
貴方はいつも、ダニエルやら他の男性が私の側にいるのを気にしていたけれど、人助けとはいえ、私だってライラ嬢の姿を見るたびに複雑な思いを抱いていたのよ。
貴方の愛人と言われた人達と貴方はそんな関係ではなかったけれど、それでも貴方の側に居られる彼女達に嫉妬したことも一度や二度じゃないわ。
旦那様、覚えている?私達が初めて出会った日のこと。婚約が決まったのは随分と先のことになったけれど、私はあの時から何故か予感があったのよ。
貴方の子を産むんじゃないか、って。
私は自分の人生を後悔していないわ。願わくはもう少しだけ貴方に長生きしてもらいたかったってことだけ。
ウィリアムは片親ということを鑑みても良くぞまあこんなにまともに成長したものだと、感心すらしています。
ねぇ、旦那様。あの子は物心がついた頃にはすでに貴方がいなかったというのに、考え事をしている時の仕草や寝転んだ時の背中や、ウキウキしている時の目の表情がとても貴方に似ているの。
一目だけでもせめてあの子と会って欲しかった。貴方への恨みつらみがあるならばこれぐらいかしら。旦那様、あちらの世界で罪を精算できたら、次こそは家族水入らずで過ごしましょうね。
終わり
読んでいただきありがとうございました!えーと、ちょっと伝わりにくかったかな、と思ったので補足です。
最初のエルナからの使用人の話には少しずつ旦那様相手なら簡単にわかる嘘が散りばめられていて、最終的に全てを鵜呑みにした相手が旦那様の偽物であることがわかる、という仕掛けでした。
使用人の中にも奥様、旦那様の敵と味方に分かれていたので、それでなんとなくこうなのかな、と思っていただけると、ありがたいです。 mios
564
お気に入りに追加
568
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説

【完結】元妃は多くを望まない
つくも茄子
恋愛
シャーロット・カールストン侯爵令嬢は、元上級妃。
このたび、めでたく(?)国王陛下の信頼厚い側近に下賜された。
花嫁は下賜された翌日に一人の侍女を伴って郵便局に赴いたのだ。理由はお世話になった人達にある書類を郵送するために。
その足で実家に出戻ったシャーロット。
実はこの下賜、王命でのものだった。
それもシャーロットを公の場で断罪したうえでの下賜。
断罪理由は「寵妃の悪質な嫌がらせ」だった。
シャーロットには全く覚えのないモノ。当然、これは冤罪。
私は、あなたたちに「誠意」を求めます。
誠意ある対応。
彼女が求めるのは微々たるもの。
果たしてその結果は如何に!?

みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。

婚約破棄から~2年後~からのおめでとう
夏千冬
恋愛
第一王子アルバートに婚約破棄をされてから二年経ったある日、自分には前世があったのだと思い出したマルフィルは、己のわがままボディに絶句する。
それも王命により屋敷に軟禁状態。肉塊のニート令嬢だなんて絶対にいかん!
改心を決めたマルフィルは、手始めにダイエットをして今年行われるアルバートの生誕祝賀パーティーに出席することを目標にする。

おさななじみの次期公爵に「あなたを愛するつもりはない」と言われるままにしたら挙動不審です
あなはにす
恋愛
伯爵令嬢セリアは、侯爵に嫁いだ姉にマウントをとられる日々。会えなくなった幼馴染とのあたたかい日々を心に過ごしていた。ある日、婚活のための夜会に参加し、得意のピアノを披露すると、幼馴染と再会し、次の日には公爵の幼馴染に求婚されることに。しかし、幼馴染には「あなたを愛するつもりはない」と言われ、相手の提示するルーティーンをただただこなす日々が始まり……?

大好きな婚約者に「距離を置こう」と言われました
ミズメ
恋愛
感情表現が乏しいせいで""氷鉄令嬢""と呼ばれている侯爵令嬢のフェリシアは、婚約者のアーサー殿下に唐突に距離を置くことを告げられる。
これは婚約破棄の危機――そう思ったフェリシアは色々と自分磨きに励むけれど、なぜだか上手くいかない。
とある夜会で、アーサーの隣に見知らぬ金髪の令嬢がいたという話を聞いてしまって……!?
重すぎる愛が故に婚約者に接近することができないアーサーと、なんとしても距離を縮めたいフェリシアの接近禁止の婚約騒動。
○カクヨム、小説家になろうさまにも掲載/全部書き終えてます

駆け落ちした愚兄の来訪~厚顔無恥のクズを叩き潰します~
haru.
恋愛
五年前、結婚式当日に侍女と駆け落ちしたお兄様のせいで我が家は醜聞付きの貧乏伯爵家へと落ちぶれた。
他家へ嫁入り予定だった妹のジュリエッタは突然、跡継ぎに任命され婿候補とのお見合いや厳しい領主教育を受ける日々を送る事になった。
そしてお父様の死という悲しい出来事を乗り越えて、ジュリエッタは伯爵家を立て直した。
全ては此処からという時に、とうの昔に縁を切った筈の愚兄が何事もなかったかのように突然帰って来た。それも三歳になる甥を引き連れて……
本編23話 + 番外編2話完結済み。
毎日1話ずつ更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる